国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
小鶴津の興津メランジュ及びシュードタキライト
ふりがな
:
こつるつのおきつめらんじゅおよびしゅーどたきらいと
シュードタキライト
写真一覧▶
地図表示▶
解説表示▶
種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
78963.0 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
13
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2011.02.07(平成23.02.07)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
(一)岩石、鉱物及び化石の産出状態,(二)地層の整合及び不整合,(三)地層の摺曲及び衝上,(五)地震断層など地塊運動に関する現象,(七)岩石の組織
所在都道府県
:
高知県
所在地(市区町村)
:
高知県高岡郡四万十町
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
シュードタキライト
解説文:
詳細解説
四万十町小鶴津の海岸には、四万十帯と呼ばれる地層が広く分布する。四万十帯の地層は、海洋プレートとともに日本列島にやってきた岩石が、沈み込む際に混じり合ったメランジュと呼ばれる部分と、陸側から運ばれて堆積した砂岩泥岩の地層とからできている。二つの地層の間には、断層があるが、この断層は、過去の南海地震などの海溝型の巨大地震の震源断層と言われており、地震防災上も重要。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
シュードタキライト
興津メランジュ
写真一覧
シュードタキライト
写真一覧
興津メランジュ
Loading
Zeom Level
Zoom Mode
解説文
四万十町小鶴津の海岸には、四万十帯と呼ばれる地層が広く分布する。四万十帯の地層は、海洋プレートとともに日本列島にやってきた岩石が、沈み込む際に混じり合ったメランジュと呼ばれる部分と、陸側から運ばれて堆積した砂岩泥岩の地層とからできている。二つの地層の間には、断層があるが、この断層は、過去の南海地震などの海溝型の巨大地震の震源断層と言われており、地震防災上も重要。
詳細解説▶
詳細解説
現在の日本列島の骨格は、3億年ほど前からの海洋プレートの沈み込みに伴う地層の付加作用により形成されてきたことが明らかになってきた。高知県四万十町小鶴津の海岸には、こうして付加された四万十帯と呼ばれる地層が典型的にみられる。 海嶺で形成された海洋プレートは、やがて日本列島付近に到達し、沈み込みを開始する。この間、海洋プレート上には、プレートの移動に伴い玄武岩・石灰岩・チャート・多色頁岩などの地層が順番に堆積してゆく。さらに、陸地に近づいた海洋プレートの地層の上には、陸側から供給された砂や泥の地層が堆積する。こうした地層の順番は、海洋底層序と呼ばれている。海洋底層序を示す地層群の一部は、プレートが沈み込む際にこそげ取られて、日本列島に付け加わってゆく。こうして付け加わった地層が、付加体である。付加体は、海洋プレートの上に堆積した地層と、陸側から供給された砂岩や泥岩の地層が、複雑に混じり合い著しく変形したメランジュと呼ばれる地層と比較的変形の程度の少ない砂岩泥岩の互層の部分とがあり、ボリューム的には、砂岩泥岩の互層(整然層)が多い。 小鶴津の海岸では、上述のプロセスで付加された興津メランジュと、それと断層で接する北側の野々川層の整然層からなる典型的な付加体の地層が分布する。 興津メランジュは,それぞれ北側は野々川層と南側は中村層の整然層と断層を介して接する。分布の幅は約1キロメートルで、黒色頁岩を基質とし、チャートに乏しく、枕状溶岩などの玄武岩が多量に産する。黒色頁岩には若干の凝灰岩層や砂岩層がレンズ状に含まれ、露頭スケールでは分断されて連続性が良くない。しかしながら地質図スケールでは、玄武岩層等は側方に連続的に追跡可能であり、厚さ数十~数百メートルを単位とした海洋底層序が少なくとも5回覆瓦状に繰り返されるものとされている(坂口他2006)。 興津メランジュと北側の野々川層とを境する興津断層からは、高速での断層運動により岩石が溶けた証拠とされるシュードタキライトが発見されている(Ikesawa et al.,2003)。 小鶴津の海岸に露出する興津断層は、平均方位N55。Eでほぼ垂直に近い。断層帯は最大幅十数メートルになるが、中核部の幅は5~6メートルで、変質して赤茶けた色を呈する玄武岩が含まれており、変形集中帯が繰り返す。変形集中帯は、岩片とアンケライト、石英の鉱物脈と,幅数㎜程度の黒色の火山岩であるシュードタキライトから構成される。 シュードタキライトは、過去の地震を起こすような断層運動の証拠となるもので、プレートの沈み込み帯からの発見は世界で初めてである。鉱物脈とシュードタキライトの脈は互いに切り合う関係がみられることから、こうした断層運動が繰り返し生じたことを示している。現在の四国沖の南海トラフでは、海洋プレート(フィリピン海プレート)が沈み込みを続け、付加体が形成されつつあり、また南海地震などの海溝型の巨大地震を発生させている。 興津メランジュの中には、プレートの沈み込み帯としては世界で始めて発見されたシュードタキライトがあり、南海トラフで繰り返されている巨大地震の発生メカニズムを知る上での手掛かりになるものでもあり、地震防災上も重要である。海洋プレートの沈み込みに伴う付加体から形成されてきた日本列島の形成メカニズムを示す興津メランジュと、興津メランジュに表れているシュードタキライトを併せて天然記念物に指定し、保護を図ろうとするものである。