国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
津屋川水系清水池ハリヨ生息地
ふりがな
:
つやがわすいけいしみずいけはりよせいそくち
ハリヨ
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
148
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2012.09.19(平成24.09.19)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
(一)日本特有の動物で著名なもの及びその棲息地
所在都道府県
:
岐阜県
所在地(市区町村)
:
岐阜県海津市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
ハリヨ
解説文:
詳細解説
学術上貴重な淡水魚ハリヨの世界的な分布南限の一つで、地域における保護意識も高く、豊富な湧水によりハリヨが安定的に生息する池として貴重である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
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ハリヨ
ハリヨ池
ハリヨ池
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ハリヨ
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ハリヨ池
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ハリヨ池
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解説文
学術上貴重な淡水魚ハリヨの世界的な分布南限の一つで、地域における保護意識も高く、豊富な湧水によりハリヨが安定的に生息する池として貴重である。
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詳細解説
ハリヨはトゲウオ科イトヨ属に属する淡水魚である。体長約5センチメートルで成魚となり、背部に3本、腹部に左右一対2本、臀鰭の直前に1本の計6本の棘を持つ。鱗はなく、胸鰭付近の体前部に5~7枚1列の鱗板が並ぶ。繁殖期のオスは婚姻色を呈し、頭部下部から鰓蓋にかけては鮮やかな赤色、体側は光沢のある青色を帯びる。トゲウオ科魚類は巣をつくることで有名であり、ハリヨも水底に水草等の繊維質を用いてトンネル状の巣をつくる。オスはなわばり内に作った巣にメスを誘い入れて産卵させ、その後10数日間、水煽りや転卵、巣から離れた仔魚を巣に戻す等の育児行動を単独で行う。繁殖は3~5月をピークとしてほぼ周年に渡り行われ、繁殖後多くの個体は死亡し、寿命は1~2年である。 ハリヨは日本固有亜種で、岐阜県南西部と滋賀県北東部にのみ生息している。かつては三重県北部にも生息していたが、1950年代に絶滅した。近年も生息環境の悪化等により個体数は減少しており、環境省レッドリストで絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)、岐阜県レッドリストで絶滅危惧Ⅰ類(岐阜県内において絶滅の危機に瀕している種)、滋賀県レッドリストで絶滅危惧種(滋賀県内において絶滅の危機に瀕している種)に選定されている。 ハリヨは系統的に元来北方系の魚類であり、水温が20℃を超える場所では生息できない。指定対象区域にハリヨが生息できるのは、夏季でも20℃を超えない湧水域(周年ほぼ15℃)があることによる。指定対象区域は、岐阜県海津市南西部で養老山地の東山麓に位置する、湧水池とそれを源流とする細流である。湧水池の面積は約234平方メートル、最大水深約60センチメートル、湧出水量は季節により変化はあるものの毎分約30リットルである。当該細流は幅0.6~3メートル程度で、150メートルほど続いて揖斐川水系支流津屋川に注ぐ。指定対象区域を含む津屋川水系右岸側の湿地帯は、養老山地の扇状地を伏流して湧出する湧水に恵まれており、国内最大級のハリヨの生息地となっている。特に、指定対象区域内の湧水池はこれまでに一度も涸れた記録がなく、安定して湧水を供給しており、常にハリヨが生息可能な水量を維持している。これまでの岐阜経済大学、大垣東高校等による調査の結果から、当該湧水池及びこれを源流とする細流では、数百~二千個体のハリヨが生息していると推定され、比較的安定して個体群が維持されていることが確認されている。 ハリヨを含むトゲウオ科魚類は、行動学、進化学、生態学、形態学、生理学など様々な学問分野において世界中で研究されており、特に、オランダ出身のN・ティンバーゲンがその行動研究により1973年にノーベル医学生理学賞を受賞したことは有名である。現在もトゲウオ科魚類に関する学術研究は数多く行われており、学問の進展に寄与している。特に、ハリヨは遡河型イトヨ類から分化したと考えられており、系統進化的研究に貴重な資料を提供している。また、北緯35度線上に位置する指定対象区域を含むハリヨの生息地は、ハリヨを含むトゲウオ科魚類の世界的な分布南限の一つであり、生物地理学的にも貴重である。 なお、指定対象区域においては、海津市教育委員会により東屋や観察路の整備、解説板の設置等が行われているほか、地元の保全グループが周辺の清掃活動や見回り、草刈り等を定期的に実施している。さらに、岐阜経済大学及び大垣東高校により、ハリヨの生息状況等に関する調査研究が継続して実施されており、地域における指定対象区域とそこに生息するハリヨに対する保護意識は高い。 指定対象区域は、ハリヨを含む学術上貴重なトゲウオ科魚類の世界的な分布南限の一つで、豊富な湧水によりハリヨが安定的に生息する重要な生息地であり、地域における保護意識も高いことから、天然記念物に指定して、その保護を図るものである。