国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
志布志市夏井海岸の火砕流堆積物
ふりがな
:
しぶししなついかいがんのかさいりゅうたいせきぶつ
入戸火砕流からなる海食崖
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
64462.52 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
148
特別区分
:
指定年月日
:
2012.09.19(平成24.09.19)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
(二)地層の整合及び不整合,(十)硫気孔及び火山活動によるもの
所在都道府県
:
鹿児島県
所在地(市区町村)
:
鹿児島県志布志市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
入戸火砕流からなる海食崖
解説文:
詳細解説
南九州を象徴するシラス台地を構成するのが,2.2-2.5万年前に鹿児島湾北部の姶良カルデラから噴出した入戸火砕流である。入戸火砕流堆積物は,歴史的にも石材として利用されるなど南九州の歴史を辿る上で欠かせない堆積物として貴重である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
入戸火砕流からなる海食崖
入戸火砕流の石切場跡
石蔵(入戸火砕流)
夏井海岸の火砕流堆積物
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入戸火砕流からなる海食崖
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入戸火砕流の石切場跡
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石蔵(入戸火砕流)
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夏井海岸の火砕流堆積物
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解説文
南九州を象徴するシラス台地を構成するのが,2.2-2.5万年前に鹿児島湾北部の姶良カルデラから噴出した入戸火砕流である。入戸火砕流堆積物は,歴史的にも石材として利用されるなど南九州の歴史を辿る上で欠かせない堆積物として貴重である。
詳細解説▶
詳細解説
鹿児島県の地表の半分以上は、シラスとよばれる火砕流堆積物に覆われた台地からなり、鹿児島の風土を語る上で欠かせない要素となっている。鹿児島県志布志市夏井海岸沿いの崖には、このシラス台地を構成する入戸(いと)火砕流が典型的に分布するだけでなく、入戸火砕流の堆積以前に堆積していた日南層群、阿多鳥浜火砕流、夏井層、阿多火砕流などシラス台地の形成の歴史を辿る地層が揃っている。 入戸火砕流は今から2.2~2.5万年前、現在の鹿児島湾北部の姶良(あいら)カルデラから噴出した火砕流で、鹿児島県内のほか、宮崎県南部、熊本県の一部、東は四国西部でも確認されている。火山国日本でも有数の巨大カルデラ噴火の堆積物である。同時期に噴出した火山灰はAT火山灰として知られ、遠く北海道までも確認されている広域テフラであり、噴出物総量は450立方キロメートルと見積もられている。平成2年から7年にかけての平成新山を形成した雲仙普賢岳の噴火の際の0.25立方キロメートルと比べるとその凄まじさが想像できる。 夏井海岸に分布する地層を古い順に説明する。 Ⅰ.日南層群:指定範囲の東端に近い部分にだけ分布する。日南山地を形作って広く分布する。おもに砂岩・泥岩の細互層からなり、一部に海底地滑りによるスランプ構造が発達する。日南層群の地質年代は、第三紀漸新世〜前期中新世(4000~2200万年前)とされている。夏井層、阿多(夏井)火砕流に不整合関係で覆われる。 Ⅱ.阿多鳥浜火砕流:阿多鳥浜火砕流は、志布志港から東へ約800メートル離れた、一露頭のみで認められる。阿多鳥浜火砕流の年代は25〜23万年前とされている。阿多(夏井)火砕流に不整合で覆われる。 Ⅲ.夏井層:JR夏井駅の西方約700メートルの海岸に分布する。下部の海棲(かいせい)の貝や植物の化石を含むシルト層と上部の礫層に分けられる。含まれる珪藻(けいそう)化石から、夏井層の堆積環境は、比較的水深の浅い汽水から海水域の内湾であったと考えられる。日南層群を不整合に覆い、阿多(夏井)火砕流、入戸火砕流に不整合関係で覆われる。 Ⅳ.阿多(夏井)火砕流:現在の鹿児島湾口の阿多カルデラを噴出源とする。溶結部は、海食崖の基部に主に露出し、上方あるいは側方へ非溶結部(ひようけつぶ)に漸移する。阿多火砕流の年代は11万年前とされている。 Ⅴ.入戸火砕流:海岸沿いでは海抜高度40メートル前後のシラス台地を形成し、切り立った海食崖に典型的に露出する。入戸火砕流を含む2.2~2.5万年前の姶良カルデラを形成した噴火による堆積物には、下位より大隅(おおすみ)降下(こうか)軽石(かるいし)層(そう)・妻(つま)屋(や)火砕流・亀割(かめわり)坂(ざか)角礫層・入戸火砕流が識別されているが、夏井海岸では、大隅降下軽石層・入戸火砕流が典型的に発達する。溶結部は入戸火砕流堆積以前の旧地形の谷部にのみ発達し、側方へ非溶結へと変化する。阿多(夏井)火砕流より古い地層を不整合に覆い、新期火山灰層に覆われる。 一般に火砕流堆積物は、当時の地表地形の谷部で厚く堆積するが、このような部分では、高温の状態が保たれることと、堆積物の荷重により、非溶結に比べ緻密な溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)が形成される。入戸火砕流の溶結部の存在は、このような当時の谷地形の存在を示唆しているものとされている。 夏井海岸周辺では、阿多火砕流の溶結凝灰岩を「黒石」、入戸火砕流の溶結凝灰岩を「白石」と呼び、昔から石材として盛んに切り出されていた。海岸の岩場では入戸火砕流の溶結凝灰岩を切り出した跡が多く残されている。その用途は、建築用の土台石をはじめ石倉、石塀、井戸の丸輪、門柱、石垣等で、出荷先は大隅一円から宮崎県串間方面に及んでいる。志布志市内の前方後円墳(「神領(じんりょう)10号墳」)から出土した刳抜式舟形石棺(くりぬきしきふながたせっかん)も入戸火砕流の溶結凝灰岩を使用していることが知られている。 活発な火山活動で特徴付けられる南九州を象徴するシラス台地を構成するのが、2.2~2.5万年前に鹿児島湾北部のカルデラから噴出した入戸火砕流堆積物である。志布志市夏井の海岸には、この入戸火砕流堆積物が典型的に露出する。歴史的にも石材として利用されるなど、南九州の歴史と暮らしを辿る上で欠かせない火砕流堆積物の好露出として極めて重要である。