国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
宝島女神山の森林植物群落
ふりがな
:
たからじまめがみやまのしんりんしょくぶつぐんらく
女神山全景
写真一覧▶
地図表示▶
解説表示▶
種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
66115.0 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
148
特別区分
:
指定年月日
:
2012.09.19(平成24.09.19)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
(二)代表的原始林、稀有の森林植物相
所在都道府県
:
鹿児島県
所在地(市区町村)
:
鹿児島県鹿児島郡十島村
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
女神山全景
解説文:
詳細解説
宝島にある女神山は,聖地として木々の伐採が厳しく禁じられ、山麓部から山頂部にかけてタブノキ,ビロウ,ウバメガシ林という森林の変化が良く保存されており,トカラ列島の森林相を良好に留めている植物群落として貴重である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
女神山全景
山麓からのビロウ林とウバメガシ林
山頂部のウバメガシ林
山麓部のタブノキ林
写真一覧
女神山全景
写真一覧
山麓からのビロウ林とウバメガシ林
写真一覧
山頂部のウバメガシ林
写真一覧
山麓部のタブノキ林
Loading
Zeom Level
Zoom Mode
解説文
宝島にある女神山は,聖地として木々の伐採が厳しく禁じられ、山麓部から山頂部にかけてタブノキ,ビロウ,ウバメガシ林という森林の変化が良く保存されており,トカラ列島の森林相を良好に留めている植物群落として貴重である。
詳細解説▶
詳細解説
宝島は屋久島と奄美大島の間に点在するトカラ列島の南部の島で、行政上は鹿児島県十島村に属する。トカラ列島は有人島7島と無人島5島を合わせた12の島々からなり、生物地理学上でも重要な位置にある。トカラ列島中部の悪石島と小宝島・宝島の間に、温帯域と熱帯域の生物分布境界として重要な渡瀬ラインがある。 トカラ列島は東側と西側の2列の島列に区別でき、西側の島々は古い時代(新第三紀中新世中期~鮮新世頃)の火山岩類と隆起石灰岩からできた島で、山が低く比較的平坦地が多い。一方、東側の島々は新しい時代(第四紀更新世以降)の火山岩類からでき、山が高く現在も火山活動が続いている。どちらの島も古くから人間活動が行われ、平地が少ないことから急傾斜の山地斜面で焼き畑や家畜の放牧が行われており、多くの地域はリュウキュウチク群落となり、自然植生は少ない。 宝島はほぼ二等辺三角形の形をした西側の列島に属する島で、周囲12.1キロメートル、面積5.94平方キロメートルで、最高点はイマキラ岳の291.9メートルである。島の北西端にある女神山(標高130メートル)から南東端の荒木崎までほぼ直線的に稜線が伸びている。この山地を取り巻いて海岸段丘状の平地が発達し、その周囲は隆起サンゴ礁によって取り囲まれている。トカラには、多くの島にメガミ、ネガミ、オガミと呼ばれる山があり、聖地とされている。これらは最高峰ではなく、集落近くにあって巫女が男達の航海安全を祈る森であった。このため、木々の伐採を厳しく禁じていた。宝島の女神山もその一つで、島の北部にあり海岸に近く、麓にはしみ出し水を利用した水田地帯が広がり、水田に隣接して集落がある。 対象地は女神山の山麓部から山頂までの自然林で、対象地域は標高約60メートルから山頂部130メートルまでの女神山全体の約6ヘクタールである。女神山の山麓部は主にタブノキ林が発達し、わずかにスダジイ林がみられる。中腹部にはタブノキ林と組成的にはほぼ同じであるがビロウが優占するビロウ林、山頂部にウバメガシ林が明瞭に区分され、良好な状態で発達している。 タブノキ(Machilus thunbergii)はクスノキ科タブノキ属に属する常緑大高木で、本州から南西日本にかけて広く分布している。女神山のタブノキ林は隆起サンゴ礁の末端部にあたり、群落高は10メートル程度であるが、胸高直径70センチメートル以上の個体も生育している。高木層、亜高木層にはモクタチバナ、フカノキ、ツゲモドキ、ヤブニッケイなどが生育している。タブノキ林は宝島で広く分布するが、よく発達した群落は少なく、奄美大島以南でもタブノキの巨木が優占する林分はきわめて希であり、南西諸島の中でも特異な存在である。 スダシイ(Castanopsis sieboldii)はブナ科シイ属に属する常緑大高木で、タブノキと同様に本州から南西日本にかけて広く分布している。女神山のスダジイ林は大径木が数本が見られるのみである。組成的にはタブノキ林とほぼ同じであるが、若木も見られ自然林の残存したものと考えられる。 ビロウ(Livistona chinensis var. subglobosa)はヤシ科ビロウ属の常緑高木で、四国西南部以南の南西日本に分布し、四国・九州では沿岸部に点々と分布している。トカラ列島には広く分布し、生活用品等様々な形で利用されてきた。トカラ列島の聖地はビロウが優占する森林が多く、神事の装束などにも利用され、トカラの信仰と切り離すことが出来ないものとなっている。女神山中腹のビロウ林は群落高10メートルで、胸高直径は15~20センチメートルのものが多い。種組成はタブノキ林と同様であるが、低木層、林床にもビロウが優占し、出現樹種は少ない。 ウバメガシ(Quercus phillyraeoides)はブナ科コナラ属の常緑小高木で、千葉県以西の各地に分布し、本州・四国・九州などの沿岸の崖地などに生育する。南西諸島では特異な分布を示し、屋久島・種子島に分布、トカラ列島では宝島のみ、奄美諸島には分布せず、沖縄県の伊平屋島と伊是名島、沖縄島名護のみに分布している。ウバメガシ林は山頂部分のみで、風衝低木林の様相を示している。群落高は3~7メートル程度、林冠はうっ閉していないが、胸高直径は50センチメートルを越える巨木が大きな枝を広げ、純林に近い状態で発達している。山頂部の空中湿度が高いようで、ウバメガシの幹や露岩にはボウランが密生し、ノキシノブ・サクララン・マメヅタなどの着生植物・ツル植物が多い。林床は表土が薄く、岩盤が露出している部分もあり、林床植生は貧弱であるが、トカラ列島で代表的なマルバサツキや絶滅危惧種であるリュウキュウクロウメモドキ、ヒロハネムなども生育し、希少な自然植生が残されている。 宝島女神山の森林はトカラ列島の代表的な自然林であり、希少な植物を含み、山頂部から山麓部までの森林の変化を示したものとして学術的に貴重なものである。よって天然記念物に指定するものである。