国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
伊万里湾カブトガニ繁殖地
ふりがな
:
いまりわんかぶとがにはんしょくち
伊万里湾カブトガニ繁殖地(多々良海岸 産卵状況)
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
581766.03 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
70
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2015.10.07(平成27.10.07)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
所在都道府県
:
佐賀県
所在地(市区町村)
:
佐賀県伊万里市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
伊万里湾カブトガニ繁殖地(多々良海岸 産卵状況)
解説文:
詳細解説
カブトガニは剣尾綱(けんびこう)カブトガニ目カブトガニ科に属する節足動物(せっそくどうぶつ)である。種名にカニが含まれるが甲殻類ではなく,分類学上はカニよりもクモに近い。背面は甲羅(こうら)に覆われ,尾剣(びけん)と呼ばれる特徴的な剣状の長い尾を持つ。本種を含むカブトガニ科は,約2億年前の中生代(ちゅうせいだい)・ジュラ紀(き)にヨーロッパからアジアにかけて生息したとされるメソリムルスの化石と形態が酷似しており,生きた化石とも呼ばれ,古生物学や進化生物学上貴重である。カブトガニは,かつて瀬戸内海のほぼ全域と九州北部の海岸一帯に連続して分布していたが,近年個体数が減少し分布域も縮小している。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類に選定されており,国内での絶滅が懸念されている。
指定対象区域は,佐賀県伊万里市の伊万里湾内奥部東側の海域及び海岸部である。当該区域内にはカブトガニが産卵する砂地とその幼生が生育する干潟が良好な状態で維持されており,カブトガニが安定的に繁殖していることが確認されている。また,地元保護団体により産卵地清掃や産卵観察会等の活動も盛んに行われている。指定対象区域は,学術上貴重なカブトガニが安定的に繁殖する重要な繁殖地であり,また,地域における保護意識も高いことなどから,天然記念物に指定して,その一層の保護を図るものである。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
伊万里湾カブトガニ繁殖地(多々良海岸 産卵状況)
伊万里湾カブトガニ繁殖地(トンゴ島)
伊万里湾カブトガニ繁殖地(多々良海岸)
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伊万里湾カブトガニ繁殖地(多々良海岸 産卵状況)
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伊万里湾カブトガニ繁殖地(トンゴ島)
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伊万里湾カブトガニ繁殖地(多々良海岸)
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解説文
カブトガニは剣尾綱(けんびこう)カブトガニ目カブトガニ科に属する節足動物(せっそくどうぶつ)である。種名にカニが含まれるが甲殻類ではなく,分類学上はカニよりもクモに近い。背面は甲羅(こうら)に覆われ,尾剣(びけん)と呼ばれる特徴的な剣状の長い尾を持つ。本種を含むカブトガニ科は,約2億年前の中生代(ちゅうせいだい)・ジュラ紀(き)にヨーロッパからアジアにかけて生息したとされるメソリムルスの化石と形態が酷似しており,生きた化石とも呼ばれ,古生物学や進化生物学上貴重である。カブトガニは,かつて瀬戸内海のほぼ全域と九州北部の海岸一帯に連続して分布していたが,近年個体数が減少し分布域も縮小している。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類に選定されており,国内での絶滅が懸念されている。 指定対象区域は,佐賀県伊万里市の伊万里湾内奥部東側の海域及び海岸部である。当該区域内にはカブトガニが産卵する砂地とその幼生が生育する干潟が良好な状態で維持されており,カブトガニが安定的に繁殖していることが確認されている。また,地元保護団体により産卵地清掃や産卵観察会等の活動も盛んに行われている。指定対象区域は,学術上貴重なカブトガニが安定的に繁殖する重要な繁殖地であり,また,地域における保護意識も高いことなどから,天然記念物に指定して,その一層の保護を図るものである。
詳細解説▶
詳細解説
カブトガニは剣尾綱(けんびこう)カブトガニ目カブトガニ科に分類される節足動物である。種名にカニが含まれるが甲殻類ではなく、分類学上はカニよりもクモに近い。体長は雄約50㎝、雌約60㎝で、背面は甲羅で覆われ、尾剣と呼ばれる特徴的な剣状の長い尾を持つ。腹側には6対の脚(1対の鋏角と5対の胸肢)を持ち、海底を移動しながら環形動物(ゴカイ等)や貝類等を捕食する。繁殖は6~8月の大潮時に行われ、雌雄がつながったまま上げ潮とともに海岸付近に移動し、満潮線に近い砂中に産卵する。卵は約50日で孵化し、孵化後に砂中から這い出た幼生は引き潮とともに干潟に移動し、そこで成長する。成体になるまでに十数回脱皮を繰り返し、約10年の歳月を要する。成体になる前にやや深い場所に移動するが、その後の生活史の詳細は不明である。本種を含むカブトガニ科は、約2億年前の中生代・ジュラ紀にヨーロッパからアジアにかけて生息したとされるメソリムルスの化石と形態が酷似しており、生きた化石とも呼ばれ、古生物学や進化生物学上貴重である。 本種は日本が分布の北限であり、揚子江以南の中国沿岸から台湾、ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシア等の各沿岸に分布する。国内では、かつては瀬戸内海のほぼ全域と九州北部の海岸一帯に連続して分布していた。本種の繁殖には産卵場所となる満潮線付近の砂地と幼生の生育場所となる干潟が不可欠だが、そうした環境は海岸開発等により失われつつあり、近年分布域は縮小している。環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類(絶滅の危機に瀕している種:現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用する場合、野生での存続が困難なもの)に選定されており、国内での絶滅が懸念されている。 指定対象区域は、佐賀県伊万里市の伊万里湾内奥部東側の海域及び海岸部である。当該区域はカブトガニの繁殖に不可欠な満潮線付近の砂地と干潟が良好な状態で維持されており、昭和61年に伊万里市の天然記念物に指定されている。当該区域の海岸線は総延長約2,460mで、主な産卵場所となる砂地が3箇所(多々良海岸、多々良南海岸、トンゴ島)計1,710m2あり、その目前には約557,000m2の干潟が広がる。佐賀県立伊万里高等学校理化・生物部により昭和61年以降毎年実施されている産卵個体数調査では、過去29年間で年平均292つがい(範囲92‐741つがい)が観察されており、本種が当該区域において安定的に繁殖していることが確認されている。また、地元保護団体により産卵地清掃や産卵観察会等の活動も盛んに行われており、地域住民の本種に対する保護意識は高い。さらに、指定対象区域は、佐賀県が策定した伊万里港港湾計画において自然環境の保全を図る自然環境保全ゾーンとされているほか、漁業権の消滅範囲に含まれていて、漁業による混獲の懸念もない。 指定対象区域は、学術上貴重なカブトガニが安定的に繁殖する重要な繁殖地であり、また、地域における保護意識も高いことなどから、国の天然記念物に指定して、その一層の保護を図るものである。