国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
宮古島保良の石灰華段丘
ふりがな
:
みやこじまぼらのせっかいかだんきゅう
宮古島保良の石灰華段丘(全景)
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
101357.65 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
142
特別区分
:
指定年月日
:
2016.10.03(平成28.10.03)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
所在都道府県
:
沖縄県
所在地(市区町村)
:
沖縄県宮古島市
保管施設の名称
:
所有者種別
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所有者名
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管理団体・管理責任者名
:
宮古島保良の石灰華段丘(全景)
解説文:
詳細解説
棚田のような形状を有するカルスト地形の一種で,保良宮土(ぼらみゃーどぅ)地区の崖下部に長さ約70m,幅約30mの範囲で分布する。宮古島の地質構造は,中新世から鮮新世の中国大陸東海岸からもたらされた砂や泥から成る島尻層群を基盤とし,その上位に約10~50mの琉球石灰岩(更新世の珊瑚礁)が不整合で覆っている。また島全体の地形は,東側が高く西~南西側に向かって緩やかに傾斜する。そのため,島の東端の保良地区では,海岸の崖中腹部の島尻層群と琉球石灰岩の境界部が露出する。地下浸透した降雨は,島尻層群の上面を伝って流下し,保良宮土地区の崖部で湧水として流れ出ている。湧水中の炭酸カルシウムは,水分の蒸発とともに石灰沈殿物(石灰華)として析出し,石灰華によって縁取られた小さな池が順次形成されて,崖下部に野外の石灰華段丘として国内最大規模で発達している。日本国内において,鍾乳洞以外の場所で石灰華段丘が形成されることは珍しく,学術上貴重である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
宮古島保良の石灰華段丘(全景)
宮古島保良の石灰華段丘(棚田状のリムストーンプール)
宮古島保良の石灰華段丘(リムストーンプールの縁)
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宮古島保良の石灰華段丘(全景)
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宮古島保良の石灰華段丘(棚田状のリムストーンプール)
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宮古島保良の石灰華段丘(リムストーンプールの縁)
解説文
棚田のような形状を有するカルスト地形の一種で,保良宮土(ぼらみゃーどぅ)地区の崖下部に長さ約70m,幅約30mの範囲で分布する。宮古島の地質構造は,中新世から鮮新世の中国大陸東海岸からもたらされた砂や泥から成る島尻層群を基盤とし,その上位に約10~50mの琉球石灰岩(更新世の珊瑚礁)が不整合で覆っている。また島全体の地形は,東側が高く西~南西側に向かって緩やかに傾斜する。そのため,島の東端の保良地区では,海岸の崖中腹部の島尻層群と琉球石灰岩の境界部が露出する。地下浸透した降雨は,島尻層群の上面を伝って流下し,保良宮土地区の崖部で湧水として流れ出ている。湧水中の炭酸カルシウムは,水分の蒸発とともに石灰沈殿物(石灰華)として析出し,石灰華によって縁取られた小さな池が順次形成されて,崖下部に野外の石灰華段丘として国内最大規模で発達している。日本国内において,鍾乳洞以外の場所で石灰華段丘が形成されることは珍しく,学術上貴重である。
詳細解説▶
詳細解説
宮古島保良(みやこじまぼら)の石灰華段丘は、棚田のような形状を有するカルスト地形の一種である。長さ約70m、幅約30mの範囲に、石灰沈殿物(石灰華)によって縁取られた小さな池(リムストーンプール)が300個以上も分布している。日本国内において同様の地形は、秋芳洞の「百枚皿」のように鍾乳洞内に形成されており、野外の石灰華段丘として国内最大の規模である。 宮古島の位置する琉球弧は、九州から台湾にかけておよそ1,300kmにわたる弧状の地形的高まりであり、現在の琉球弧の大半は海面下にある。琉球弧と中国大陸の間にある沖縄トラフは、白亜紀後期から現在にかけて拡大と沈降を続けることで形成された盆地(背弧海盆)である。海底の盆地の拡大によって、琉球弧は中国大陸の陸棚から離れ、現在の位置まで張り出したと考えられている。宮古島の基本的な地質構造は、中新世から鮮新世にかけて中国大陸東海岸からもたらされた砂や泥から成る島尻層群を基盤とし、その上位に不整合で層厚約10~50mの琉球石灰岩(更新世の珊瑚礁)が覆う。琉球石灰岩が約120万年前以降の形成年代を示すため、この頃から宮古島は沖縄トラフの拡大によって次第に黒潮にさらされて水温が高く清澄な海域となり、さらに琉球弧が隆起することで浅海になったと推定されている。 宮古島は、地殻変動の際に生じた北西-南東方向の数条の断層によって複数のブロックに分断される。各ブロックは西側斜面が緩く東側斜面が急な非対称な形状を示す。島全体としては、東側が高く、西~南西側に向かって緩やかに傾斜する。そのため、島の東端の保良地区では、海岸崖部で島尻層群と琉球石灰岩の境界部が露出する。宮古島の年間約2,200mmの降雨は地下浸透し、多孔質な琉球石灰岩を通り、不透水層である島尻層群上面をつたって流下する。一般に石灰岩の分布する地域では、雨水は石灰岩の主成分である炭酸カルシウムを溶食しながら地下に浸透する。そして、地下水の温度や圧力などが変化することで、溶けていた炭酸カルシウムが石灰華として析出する。 保良宮土地域の海岸では、崖中腹部に露出する島尻層群と琉球石灰岩の境界から、ティダガーと呼ばれる湧水が流れ出ている。その湧水は緩やかな傾斜面をつたって海抜1m前後にある甌穴に流れ込み、低潮位時に水分が蒸発して石灰華が析出する。その結果、最初のリムストーンプールが生じ、上方に向かって順次形成されて石灰華段丘となる。炭素14年代測定法によると約3,600年前から石灰華の析出が始まり、現在も石灰華段丘が形成され続けている。石灰華段丘は、海岸から約200m沖に発達する堡礁(バリアリーフ)よって波食が軽減されるため、良く保存されている。以上のように、宮古島保良の石灰華段丘は、地下水に溶解した炭酸カルシウムが石灰華として析出して形成されたカルスト地形である。その背景となる地下水系は、琉球弧と宮古島形成に伴う地質構造の影響を受けている。したがって、宮古島保良の石灰華段丘は、複雑な地殻変動と琉球石灰岩が分布する地域の地下水系により形成された地形として、極めて重要なものである。