国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要文化的景観
主情報
名称
:
姨捨の棚田
ふりがな
:
おばすてのたなだ
姨捨の棚田(棚田)
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種別1
:
重要文化的景観
種別2
:
面積
:
64.3 ha
その他参考となるべき事項
:
選定番号
:
選定年月日
:
2010.02.22(平成22.02.22)
追加年月日
:
選定基準
:
(一)水田・畑地などの農耕に関する景観地
所在都道府県
:
長野県
所在地(市区町村)
:
長野県千曲市
姨捨の棚田(棚田)
解説文:
詳細解説
姨捨の棚田は、水源となる大池から更級川へと繋がる水系を軸として、用水や田越の給水手法、「ガニセ」と呼ぶ暗渠による排水方法が網の目のように張り巡らされ、近世から近現代に至るまで継続的に営まれてきた農業の土地利用の在り方を示す独特の文化的景観である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
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姨捨の棚田(棚田)
姨捨の棚田(大池のため池)
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姨捨の棚田(棚田)
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姨捨の棚田(大池のため池)
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解説文
姨捨の棚田は、水源となる大池から更級川へと繋がる水系を軸として、用水や田越の給水手法、「ガニセ」と呼ぶ暗渠による排水方法が網の目のように張り巡らされ、近世から近現代に至るまで継続的に営まれてきた農業の土地利用の在り方を示す独特の文化的景観である。
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詳細解説
古くから月見の名所や棄老説話で著名な姨捨山の北麓には、千曲川の河川敷から遠く善光寺平に至る広大な盆地に臨んで、約1,500枚の水田から成る姨捨の棚田が展開する。近世初頭に定着し始めた斜面地における畑作と稲作が混在する農耕の在り方は、次第に利水が進展することにより稲作が主体となり、近世末期から近代にかけて、標高460~550mの傾斜面の全体に日本を代表する棚田の文化的景観を形成した。 姨捨の文化的景観は、冠着山から三峯山にかけての山塊が数度にわたって地滑りを起こし、北東方向に押し出されて形成された土石流の堆積斜面上に展開する。山腹斜面の湿潤地にはコナラ・ミズナラ・オニグルミなどから成る落葉広葉樹林が広がるほか、山塊の頂部には広くアカマツを中心とする常緑針葉樹林が展開し、その間隙を縫ってカラマツ・スギ・ヒノキの人工林が分布する。このような森林が豊かな水源涵養機能を育み、千曲川支流の更級川を中心とする水系が姨捨の棚田の形成に重要な水利の基盤をもたらした。 姨捨の棚田の基本構造は、土石流が形成した斜面上に生産の場として展開する棚田と、その水源である更級川上流の大池が有機的に結びついている点にある。中世の末期、姨捨における農業は斜面上の随所に分布する多数の小さな湧水(涌水)を利用して出発したが、やがて兎沢川や横沢川などの自然河川を軸に用水が整備されるようになり、さらには不足する水量を補うために溜池である大池から更級川を経て各用水へと給水する灌漑手法が導入された。こうして、16世紀後半から18世紀にかけて地域の全体に細流が張り巡らされ、土坡の畦畔を超えて導水する「田越」と呼ぶ灌水方法や、耕作土及び床土の下層に敷設された石組みの「ガニセ」と呼ぶ暗渠による排水方法が採られることにより、棚田は斜面の全体へと広がっていった。姨捨には棚田の水系に沿った縦長の字界が多く見られ、水系ごとに一群の受益者がまとまって用水の管理を行うなど、用水系が地域社会の紐帯として機能してきたことがわかる。 また、長期間にわたって継続されてきた棚田の造成と、そこでの絶え間のない営農活動は、多様な生物の生息環境を育んで来た。 このような棚田の維持運営の基盤は継続的な水利にあり、水利共同体の紐帯を示す物証として、大池の池畔に残る弁財天の小祠をはじめ、武水別神社(八幡宮)とその神宮寺である長楽寺などの所属である小祠などが棚田の区域に散在している。 以上の自然的・歴史的・社会的諸条件に基づき、姨捨の棚田を中心とする文化的景観は、①生産の場である棚田が展開する区域、②溜池である大池を中心とする水源の区域、③大池から出発して棚田における利水の背骨となる更級川の3つの景観単位に区分でき、その周辺に水源涵養林の区域や生活の場である集落などが展開する。その中でも、大池から更級川を経て棚田を含む区域は、姨捨の棚田の文化的景観の中核を成している。 以上のように、姨捨の棚田は、水源となる大池から更級川へと繋がる水系を軸として、用水や田越の給水手法が網の目のように張り巡らされ、中世末期から近現代に至るまで継続的に営まれてきた農業の土地利用の在り方を示す独特の文化的景観であり、我が国民の生活又は生業を理解する上で欠くことのできないものであることから、重要文化的景観に選定して保護を図ろうとするものである。