国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要文化的景観
主情報
名称
:
阿蘇の文化的景観
産山村の農村景観
ふりがな
:
あそのぶんかてきかいかん
うぶやまむらののうそんけいかん
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種別1
:
重要文化的景観
種別2
:
面積
:
65.3 ha
その他参考となるべき事項
:
選定番号
:
選定年月日
:
2017.10.13(平成29.10.13)
追加年月日
:
選定基準
:
所在都道府県
:
熊本県
所在地(市区町村)
:
熊本県阿蘇郡産山村
解説文:
詳細解説
阿蘇カルデラの外輪山と九重山麓が交わる産山村では,波状(なみじょう)高原(こうげん)と浸食された急傾斜の丘陵地域から成る地域に位置する丘陵が広がり水源地が多数ある。斜面地の多くは草地又は林地として利用されてきた。阿蘇地方独特の農村景観である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
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解説文
阿蘇カルデラの外輪山と九重山麓が交わる産山村では,波状(なみじょう)高原(こうげん)と浸食された急傾斜の丘陵地域から成る地域に位置する丘陵が広がり水源地が多数ある。斜面地の多くは草地又は林地として利用されてきた。阿蘇地方独特の農村景観である。
詳細解説▶
詳細解説
九州の内陸ほぼ中央に位置する阿蘇火山は、南北約25km、東西約18km、面積約380k㎡のカルデラ地形を有する。カルデラ地形は、約27万年前から約9万年前に流出した計4回の火砕流噴火によって形成された中央火口丘・カルデラ床・外輪山からなり、中央火口丘に位置する中岳は我が国を代表する活火山である。 産山村は、阿蘇山とその北東に位置する九重山の火山帯が複合する地域に位置する。九重山麓では、かつて九州が中国大陸と陸続きであったことを示すヒゴタイ、野焼きによって守られてきたキスミレ等の希少植物を確認することができ、貴重な自然環境及び生態系が育まれている。山麓の山吹水源から流れる産山川と池山(いけやま)水源(すいげん)から流れる玉来(たまらい)川(がわ)が小さな谷を作りながら南東方向に流れるが、その2つの谷あいを中心に産山村が広がり、2つの川は大野川となって別府湾に注ぐ。 阿蘇の他地域と同様、火山灰等からなる土壌のため田畑の耕作には適さない地域であり、草肥供給に必要な草地と一体となった土地利用がなされてきた。火山灰土に覆われた平均標高約600mの台地には耕作地、山裾から谷底へ至る斜面には林地、谷底では湧水を利用した水田及び棚田が多く広がる傾向にあり、九重山麓の高原に草地がまとまって分布する。 阿蘇の草地は、千年以上にわたり、牛馬の放牧及び飼料用の草を得る場、耕作地に施す緑肥及びたい肥を供給する場、時には居住地の家屋の屋根及び生活用具の材料を供給する場等として継続的に利用されてきた。このような草地を軸として、地形に沿って垂直方向に変化する土地利用及び景観は、阿蘇地域の自然風土に適応した生活又は生業によって歴史的に形成されてきたものである。 山吹水源の下流にも傾斜地が多いため、江戸時代に棚田が開かれ、水路及び石橋群が築造された。扇棚田は、山吹水源から南方に約1.3km導水した標高820mの位置に開墾された約3haの棚田であり、現在も16枚の水田が維持されている。 昭和40年代には阿蘇の広大な草地を対象とした大規模草地改良事業と広域農業開発事業により、草地酪農及び肉用牛の低コスト生産のための飼料基盤整備が行われた。現在、阿蘇の草地で放牧されるあか牛は役牛として育成されてきたものを品種改良した種であり、その生産は産山村の代表的な産業となっている。 産山川沿いの乙宮神社には、健(たけ)磐(いわ)龍(たつの)命(みこと)の嫡(ちゃく)孫(そん)が降誕し、その命を山になぞらえて産山という地名になったという伝承がのこる。また、村南部には、旧豊後街道の石畳が残る弁天坂及び境の松坂地区があり、江戸時代の街道景観が窺い知れるほか、九重山・阿蘇山・祖母山の九州の名峰三山を一望できる贅沢な眺望地点があり、一覧三山台と呼ばれている。 近年の草地は、地域の牧野組合が中心となり、秋に草を刈って防火帯を作る「輪地切り」及び早春に枯れた草を焼き払う「野焼き」によって維持されているが、担い手の確保が課題となっている。平成17年(2005)からは、自然再生法に基づいて関係行政機関、地域住民、牧野組合員、NPO、専門家等によって「阿蘇草原再生協議会」が組織され、国立公園管理団体である「(公財)阿蘇グリーンストック」とともに、草地を維持再生する募金活動及びボランティア活動が継続的に行われている。 阿蘇の文化的景観は、広大な阿蘇のカルデラ地形に沿った土地利用を継続的に行ってきたために形成された草地・林地・居住地・耕作地が一体となった文化的景観である。特にその中心となる阿蘇地方の採草・放牧に関連する景観は千年以上継続するものであり、我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないものであることから、重要文化的景観に選定して保護を図るものである。 今回は産山村域のうち、保護措置の整った九重山麓の草地、林地のほか、山吹水源及び扇棚田を選定する。