国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(建造物)
各棟情報
名称
:
琴ノ浦温山荘
ふりがな
:
ことのうらおんざんそう
棟名
:
主屋
棟名ふりがな
:
しゅおく
琴ノ浦温山荘 主屋
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員数
:
1棟
種別
:
近代/住居
時代
:
大正
年代
:
大正4
西暦
:
1915
構造及び形式等
:
主座敷部及び内玄関部からなる
主座敷部・木造、建築面積279.26平方メートル、一階建、地下一階、入母屋造及び寄棟造、桟瓦葺及び銅板葺、
内玄関部・木造、建築面積152.72平方メートル、一階建、地下一階、入母屋造及び寄棟造、桟瓦葺及び銅板葺
創建及び沿革
:
棟礼、墨書、その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
02559
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2010.06.29(平成22.06.29)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
重文指定基準1
:
(一)意匠的に優秀なもの
重文指定基準2
:
所在都道府県
:
和歌山県
所在地
:
和歌山県海南市船尾字矢ノ島370番地1
保管施設の名称
:
所有者名
:
財団法人琴ノ浦温山荘園
所有者種別
:
管理団体・管理責任者名
:
琴ノ浦温山荘 主屋
解説文:
詳細解説
琴ノ浦温山荘は、製革業で財をなした新田長次郎)が営んだ別荘で、潮入の池泉を造成した庭園内に、各建物を配置している。
主屋は、接客用の主座敷部と、居住用の内玄関部を南北に接続した構成になる。主座敷は、東西の庭園を観賞するための開放的な室内空間をもつとともに、座敷飾りや彫刻欄間などに技巧的な意匠がみられる。また庭園の周囲には、瀟洒な意匠の茶室や浜座敷などを配置している。
琴ノ浦温山荘の建造物は、独特な構成の庭園と一体的に建設された別荘建築で、優れた意匠を持ち、当時最新の建築資材であった合板の使用など、先駆的な技術や建材を積極的に用いている点において高い価値が認められる。
関連情報
(情報の有無)
附指定
添付ファイル
なし
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琴ノ浦温山荘 主屋
琴ノ浦温山荘 主屋(内部)
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琴ノ浦温山荘 主屋
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琴ノ浦温山荘 主屋(内部)
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解説文
琴ノ浦温山荘は、製革業で財をなした新田長次郎)が営んだ別荘で、潮入の池泉を造成した庭園内に、各建物を配置している。 主屋は、接客用の主座敷部と、居住用の内玄関部を南北に接続した構成になる。主座敷は、東西の庭園を観賞するための開放的な室内空間をもつとともに、座敷飾りや彫刻欄間などに技巧的な意匠がみられる。また庭園の周囲には、瀟洒な意匠の茶室や浜座敷などを配置している。 琴ノ浦温山荘の建造物は、独特な構成の庭園と一体的に建設された別荘建築で、優れた意匠を持ち、当時最新の建築資材であった合板の使用など、先駆的な技術や建材を積極的に用いている点において高い価値が認められる。
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詳細解説
琴ノ浦温山荘 三棟 主屋、浜座敷、茶室 琴ノ浦温山荘は、製革業で財をなした事業家新田長次郎(一八五七~一九三六)が黒江湾を臨む海浜に営んだ別荘で、陸繋島であった矢ノ島との間を埋立てて潮入の池泉を造成した庭園内に、各建物を配置している。この庭園は、平成二二年二月二二日付で名勝に指定された。 庭園の中央に主屋が建ち、西側の矢ノ島南東端に浜座敷を、東側の池の対岸に茶室を建てる。主屋の周囲に、伴待部屋、中門、西冠木門、南冠木門、北冠木門を配し、敷地北面に正門を構える。これらの主屋ほか八棟は、平成一〇年一二月一一日付で、登録有形文化財(建造物)に登録された。 建物の建設は、大正二年の浜座敷に始まり、同四年の主屋、九年の茶室建設と続き、昭和初期までに正門が建てられて、概ね完了したとみられる。庭園を含めたこれらの造営にあたり、長次郎自ら考案、作図して指揮したとされるが、建物については、長次郎の女婿で合資会社新田帯革製造所の建築顧問でもあった木子七郎(一八八四~一九五四)が関与したとみられる。木子七郎は宮内省内匠寮技師を務めた木子清敬の四男で、大正元年に長次郎の長女と結婚し、同年新田家の経営する合資会社新田帯革製造所の建築顧問となり、翌二年に木子七郎建築事務所を開設した。木子は、新田帯革製造所本社など事務所や工場などの設計監督を行うほか、長次郎の郷里である松山市などでも建築設計を手がけた。 主屋は、御幣の墨書により大正四年五月二六日の上棟である。主座敷部と内玄関部を南北に接続した構成になり、木造一階建、地下一階、入母屋造及び寄棟造、桟瓦葺及び銅板葺で、小屋は洋小屋を組む。特に西側で床高を高め、池越しの眺望を意識したつくりとしている。 主座敷部は、建築面積二七九・二六平方メートルで、北より、式台玄関を構えた寄付、七畳半と五畳の二間、六畳二間を介して二四畳の主室をおき、七畳半の東に一〇畳を張出し、周囲に縁を廻らす。軸部は栂の良材を用い、天井は棹縁天井を張り、縁廻りはガラス戸と雨戸を建てる。 主室は、北面中央を一間半の床として西側に琵琶棚を付し、東側に違棚、西側に付書院を設ける。違棚の棚板の端部を反増して筆返しとし、棚の仕切板や縁高欄に格狭間を透かすなど、各部に瀟洒な意匠を用いる。また主室東面には木彫家相原雲楽による「波に兎」の彫刻欄間を入れる。 一〇畳は、寄付とともに大正後期に増築されたとみられ、北側に床・違棚・付書院を備え、南西面の縁板は欅の一枚板を張る。違棚壁付を井桁状に表現し、室西面と付書院の欄間は矩形の組合わせとするなど、独創的な意匠を用いる。また棹縁天井には、新田ベニヤ製造所で製造していた三尺幅の合板を使用している。 内玄関部は、建築面積一五二・七二平方メートルで、北に内玄関と一一畳、南を八畳二間として縁を廻らす。一一畳は、西面に肘掛窓、北面に出格子窓を設ける。 主屋の地階はコンクリート造及び木造である。西面地盤が東面より低いため、東面を土留擁壁とし、西面は腰高さの布基礎に柱を立てて上階を受ける。 浜座敷は、大正二年の建築とみられ、岩盤に縁束を高く立てて懸造風の外観をもつ。建築面積九四・六六平方メートル、入母屋造及び寄棟造、本瓦葺で、小屋は洋小屋を組む。一〇畳主室の北側と西側に六畳を配し、矩の手に縁を廻らす。主室は西面に琵琶棚付の床・違棚を備え、北側の六畳は北面に大きな軍配形の花頭窓を穿ち、西面を玄関とする。縁高欄は横連子や栭束を用いた意匠とし、また軒は垂木を吹寄せに配るなど、軽妙な構成とする。 茶室は「鏡花庵」とも称し、大正九年の建築とみられる。建築面積九六・三三平方メートル、入母屋造、茅葺で、周囲を桟瓦葺の下屋とする。 平面は、九畳の広間を中心に、南面に玄関を構えた寄付、北西面には矩の手に入側を廻らして池泉の眺望を得る。 伴待部屋は、建築面積一二・九一平方メートル、入母屋造、銅板葺である。内部を前後に仕切り、前室をモルタル土間、後室を畳敷とする。内外の壁板や天井板、化粧裏板に合板を張る。 正門は、間口三・八メートルの鉄筋コンクリート造の門柱に鉄扉を吊り、さらに左右にも門柱を立てて脇門を開く。また門柱に柱頭飾を作る。 中門と西冠木門は、一間腕木門、切妻造、銅板葺、南冠木門は編笠門形式の棟門で、銅板葺である。北冠木門は一間棟門、寄棟造、桟瓦葺で、軒先を銅板葺とする。これらの伴待部屋、正門、中門、西冠木門、南冠木門、北冠木門を附指定とする。 琴ノ浦温山荘の建造物は、潮入の池泉を中心とした庭園の造成と一体的に建設された別荘建築で、いずれも厳選された材料と高度な施工技術を用いて建設された、優れた意匠をもつ近代和風建築である。またコンクリート造基礎やトラス構造、当時最新の建築資材であった合板の使用など、先駆的な技術や建材が駆使されている点においても、価値が高い。 【参考文献】 『琴ノ浦温山荘園建築調査報告書』((財)琴ノ浦温山荘園 二〇〇九年)
関連情報
附指定
御幣
伴待部屋
正門
中門
西冠木門
南冠木門
北冠木門
関連情報
附指定
附名称
:
御幣
附員数
:
1本
関連情報
附指定
附名称
:
伴待部屋
附員数
:
1棟
関連情報
附指定
附名称
:
正門
附員数
:
1棟
関連情報
附指定
附名称
:
中門
附員数
:
1棟
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附指定
附名称
:
西冠木門
附員数
:
1棟
関連情報
附指定
附名称
:
南冠木門
附員数
:
1棟
関連情報
附指定
附名称
:
北冠木門
附員数
:
1棟