国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(建造物)
各棟情報
名称
:
名古屋市庁舎
ふりがな
:
なごやしちょうしゃ
棟名
:
棟名ふりがな
:
名古屋市庁舎 全景
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員数
:
1棟
種別
:
近代/官公庁舎
時代
:
昭和
年代
:
昭和8
西暦
:
1933
構造及び形式等
:
鉄骨鉄筋コンクリート造、建築面積4,511.84㎡、地上五階地下一階建、塔屋付
創建及び沿革
:
棟礼、墨書、その他参考となるべき事項
:
指定番号
:
02619
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2014.12.10(平成26.12.10)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
重文指定基準1
:
(一)意匠的に優秀なもの
重文指定基準2
:
所在都道府県
:
愛知県
所在地
:
愛知県名古屋市中区三の丸三丁目一番
保管施設の名称
:
所有者名
:
名古屋市
所有者種別
:
市区町村
管理団体・管理責任者名
:
名古屋市庁舎 全景
解説文:
詳細解説
名古屋市庁舎は,名古屋城の旧三之丸に位置する。現在の建物は昭和8年に新築されたものである。建設にあたって設計競技が実施され,金賞となった平林金吾の案をもとに,名古屋市土木部建築課が実施設計を行った。
鉄骨鉄筋コンクリート造,地上五階地下一階建で,正面中央には高塔を聳えさせる。外観はタイルやテラコッタで飾り,車寄やパラペット頂部,塔屋は瓦屋根風の意匠とする。各階の正面に配置された正庁や貴賓室,議場は伝統的な意匠を巧みに織り交ぜた格調高い意匠になる。
名古屋市庁舎は,当時の市庁舎として突出した規模を誇る。特産のタイルを駆使した壁面で独創的な意匠を創り出し,西洋的な建築様式に日本的な要素を取り入れて内外に優れた造形美を示している。昭和初期の記念的庁舎建築として,高い価値がある。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
名古屋市庁舎 全景
名古屋市庁舎 正庁
名古屋市庁舎 議場
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名古屋市庁舎 全景
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名古屋市庁舎 正庁
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名古屋市庁舎 議場
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解説文
名古屋市庁舎は,名古屋城の旧三之丸に位置する。現在の建物は昭和8年に新築されたものである。建設にあたって設計競技が実施され,金賞となった平林金吾の案をもとに,名古屋市土木部建築課が実施設計を行った。 鉄骨鉄筋コンクリート造,地上五階地下一階建で,正面中央には高塔を聳えさせる。外観はタイルやテラコッタで飾り,車寄やパラペット頂部,塔屋は瓦屋根風の意匠とする。各階の正面に配置された正庁や貴賓室,議場は伝統的な意匠を巧みに織り交ぜた格調高い意匠になる。 名古屋市庁舎は,当時の市庁舎として突出した規模を誇る。特産のタイルを駆使した壁面で独創的な意匠を創り出し,西洋的な建築様式に日本的な要素を取り入れて内外に優れた造形美を示している。昭和初期の記念的庁舎建築として,高い価値がある。
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詳細解説
名古屋市庁舎 一棟 名古屋市庁舎は、名古屋城旧三之丸の北東に位置し、大津通に面した西を正面とする。南には愛知県庁舎が隣接し、北は出来町通、その先には城の中心部である旧本丸、二之丸を控えている。名古屋市庁舎は、平成十年七月二十三日付で登録有形文化財となっている。 明治二十二年(一八八九)に市制を施行した名古屋市は、栄町や新栄町付近に庁舎を置いてきたが、昭和三年に三之丸を使用していた陸軍騎兵第三連隊等が郊外に移転し、当地に市庁舎を移転する運びとなった。翌四年二月には市庁舎建築準備委員会が発足し、同年十月に設計図案が募集され、佐野利器、武田五一、土屋純一らの審査員により、翌五年一月に平林金吾案が金賞に選ばれた。平林金吾は、明治二十七年愛知県西春日井郡豊山村に生まれ、東京高等工業学校建築科を卒業、大正十一年には岡本馨と連名で応募した大阪府庁舎設計懸賞競技で一等に入選した。関東大震災後、東京市臨時建築局に名古屋市庁舎の設計競技に応募したころは、復興建築助成株式会社の技師として勤めていた。平林案をもとに、土木部建築課が実施設計を進め、昭和六年十一月八日に起工、同八年九月六日に竣工した。施工は大倉土木株式会社である。 名古屋市庁舎は、市政執務棟と市会議事堂からなる。鉄骨鉄筋コンクリート造の地上五階、地下一階建、塔屋付、建築面積は四五一一・八四平方メートルで、日の字型の北辺を東に延ばした平面をもち、東辺中央に議事堂を張り出して、西正面中央と北面中央に車寄せ玄関を開く。 市政執務棟は、一階を石張、二階から四階を茶褐色のタイル張、五階を淡黄色のタイル張とした三層構成の外観を示し、車寄せやパラペット頂部に瓦を載せて日本趣味の意匠を加味している。西正面中央には五階分の高塔を掲げ、頂部には銅板を貼り付けた瓦葺の宝形屋根を二重に架けて、軒を切妻に切り上げる。それぞれの中央に鯱を、頂部には四方睨みの鯱を載せて威厳を示し、さらに付柱を用いて垂直性を強調する。 内部は、五階の正庁、四階の貴賓室、三階の市長公室、二階の第一会議室など、各階の正面に重要な部屋を配置し、一階正面には車寄せ玄関および中央広間を設ける。三階の市長公室の近くには市長事務室や助役室など幹部用の執務室、市民が訪れることの多い料金課、給水課、会計課および郵便局などを一階に配し、動線を考慮した合理的な平面計画とする。地階は倉庫などに用いられる。 正面中央広間から続く中央階段は、一階から五階まで吹抜けの空間で、丁字型の階段を中心として、左右にエレベーターを配置する。国産の大理石をふんだんに用い、斜めの階段が交差し、柱間を繊細な装飾を施したアーチで繋いで、荘重な空間を創出している。 四階の貴賓室は、主室と左右の副室、化粧室の四室からなる。主室の鋼製扉外側は杢目出しラッカー仕上げとし、扉上部には菱組格子欄間が付く。天井はプラスター塗で梁形を見せ、格天井風に仕上げるなど、日本的な要素を取り入れる。五階の正庁は、北を正面として、織模様布地貼の格天井を高く設ける。北面の御真影奉掲所は、黒色大理石で一段高くし、周囲に額縁を廻らして、腰壁にも黒色大理石を張る。南面には浅いアルコーブが設けられる。 市会議事堂は、一階を石張、上部を茶褐色のタイル張とした外観をもち、東西棟の切妻造屋根を架けて、北東隅に煙突を立てる。議場は二階に設けており、二階分を吹抜けとして上階の三方に傍聴席を設ける。ほぼ正方形平面の議場は、西を正面として議長席と演壇を置き、中央に速記席を、それを取り囲むように円形に議席を配する。トップライトを設けて、効果的に外光を採りいれる。 名古屋市庁舎の設計趣旨は「日本趣味を基調としたる近世式」とされ、外観では旧城内という立地に配慮して塔屋の宝形屋根やパラペット部の瓦葺に表現されている。内部を通観すると、様式的には西洋的な意匠を採用しながら、主要諸室には彩色や飾金具を用いて日本的な要素を多く取り入れ、格調高い意匠に仕上げている。 名古屋市庁舎は、二万四〇〇〇平方メートルを超える延床面積で、当時の市庁舎としては突出した規模を誇る。特産のタイルを駆使した壁面で独創的な意匠を創り出し、正庁や貴賓室、議場には伝統的な意匠を巧みに織り交ぜるなど、西洋的な建築様式に日本的な要素を取り入れて内外に優れた造形美を示し、高塔を聳えさせた昭和初期の記念的庁舎建築として価値が高い。 【参考文献】 『愛知県の近代化遺産』(愛知県教育委員会 二〇〇五年) 『国登録有形文化財名古屋市役所本庁舎現況調査報告書』(名古屋市 二〇一二年)