国宝・重要文化財(美術工芸品)
 主情報
名称 絹本著色法華曼荼羅図
ふりがな けんぽんちゃくしょくほっけまんだらず
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員数 1幅
種別 絵画
日本
時代 平安
年代
西暦
作者
寸法・重量
品質・形状
ト書
画賛・奥書・銘文等
伝来・その他参考となるべき事項
指定番号(登録番号) 02010
枝番 0
国宝・重文区分 重要文化財
重文指定年月日 2004.06.08(平成16.06.08)
国宝指定年月日
追加年月日
所在都道府県 奈良県
所在地
保管施設の名称
所有者名 法隆寺
管理団体・管理責任者名

解説文:
 外周に描表装を付けた方形の三重院からなっている。
 第一院は緑色地で中台八葉を表し、中央に宝塔一基を置き、塔中には並坐する二仏を描いているが、両尊は同図像で、ともに蓮華座上に結跏趺坐(衣下に隠す)し、拱手した両手を大衣下に隠している。金箔を押した上に墨線で象形している。八葉上に描かれた八大菩薩(向かって左上の東北方から順次時計回りに、弥勒・文殊・薬王・妙音・常精進・無尽意・観音・普賢各菩薩)は蓮華座上に結跏趺坐する。蓮華座は青色と緑色系を交互に配して暈かしを加える。
 四隅に敷物の上に跪坐する四声聞を配している。舎利弗が合掌する以外はいずれも左手で条帛を掴んでいるが、摩訶迦葉は全指を伸ばした右掌を前に向け、須菩提は掌を指先を下に向けて構え、目〓連は手の甲を前に向けている。各声聞は白色の大衣の裏を朱または丹とし、左膝には大衣下から裳(丹あるいは朱で、大衣裏の色と違えている)をのぞかせている。
 第二院は丹地に青、緑、紫の暈繝による蓮華唐草文様を散らしている。文様は白色の線および点綴で縁取る。並置された十六菩薩はいずれも白色の円相内、蓮華座上に結跏趺坐する。頭身光は金と銀を交互に配し、頭光内側は丹、身光内側は緑と青を交互に塗っているとみられる。蓮華座は青と紫の交互か。同様に、着衣においても条帛と裳は丹と朱、腰衣は緑と青を交互としている。各尊像の肉身は丹線で、着衣は墨で描き起こしている。冠は金箔を置いた上に墨線で描き起こす。
 第三院には、並列した金地の上の炎に囲まれた三鈷杵の間に、四明王と一二体の天部像を廻らせている。四天王は〓〓座、天部は荷葉座、不動以外の明王は蓮華座である。
 法華曼荼羅図は不空訳『成就妙法蓮華経王瑜伽観智儀軌』一巻および『法華曼荼羅威儀形色法経』一巻に依拠する法華経法の本尊画であり、その図像は特に後者に詳説するほか、『十巻抄』(一図)や『別尊雑記』(二図)、『曼荼羅集』(二図)等に掲載されている。『十巻抄』掲載図像と『別尊雑記』其の二(其の一は同図)図像では、宝塔中の二仏や三重院からなる諸尊の像容について相違がある。本図は『十巻抄』図像と同様に釈迦多宝二仏は拱手して結跏趺坐しているが、八大菩薩以下の尊像はむしろ『別尊雑記』其の二と合致するものが多いなど、両本を折衷したような関係にある。なお、『法華曼荼羅威儀形色法経』所説に忠実なのはむしろ『別尊雑記』其の二図像である。
 法華曼荼羅の遺品として、兵庫・太山寺本(明治三十四年八月二日指定)、奈良・唐招提寺本(大正十二年三月二十八日指定)、香川・萩原寺本(昭和四十二年六月十五日指定)および京都・松尾寺本(昭和五十四年六月六日指定)の四件が重要文化財に指定されているが、最も古様を示す松尾寺本をはじめいずれも制作時期は鎌倉時代以降であり、平安時代に遡る遺品は本図以外に知られていない。特に釈迦多宝二仏を拱手、結跏趺坐の形に表す点は、京都・松尾寺本以下の遺品中とは異なる本図の特徴の一つである。
 本図は擦損による顔料の剥落が少なくないが、それでも白色や橙色を多用した柔らかい色調や、優美な象形等、平安仏画ならではの雅趣が十分にくみ取れよう。特に、第二院に表された蓮華文様における白線の輪郭や照暈は平安後期でもさほど降らない制作期を推測させる。各尊像の肉身に施された丹線による描き起こしや、四声聞の大衣下から裳を現す等の表現は本図独自のものとして注目されよう。
関連情報
    (情報の有無)
  附指定 なし
  一つ書 なし
  添付ファイル なし