国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
能装束
ふりがな
:
のうしょうぞく
地図表示▶
解説表示▶
員数
:
4領
種別
:
工芸品
国
:
日本
時代
:
桃山
年代
:
慶長15
西暦
:
1610
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
:
萌葱地繍狩衣は、表は萌葱地生絹、裏は黄地生絹の袷仕立ての狩衣である。形状は盤領、闕腋で、身丈は前後同寸である。袖口には括緒を通さず、白、赤茶、茶、黄、萌葱の組紐で縁取る。襟は共裂とし、中に紙の芯を入れる。両襟端には白木綿平紐をつける。 前身頃と背面全面に、唐花と尾長鳥の文様を刺繍で表す。前身頃には上端に尾長鳥一羽を置き、その周りと裾に蔓を伸ばす唐花を配す。背面には肩まわりに五羽、後身頃の腰と裾にそれぞれ一羽の尾長鳥を配し、その周りを蔓を伸ばす唐花で密に囲む。刺繍糸は、尾長鳥には白、薄紅、紅、黄、薄萌葱、萌葱、紫、赤茶、茶、焦茶の平糸と白・茶の杢糸を、唐花には白・薄紅、紅、赤茶、茶、焦茶、紫、黄を用いる。尾長鳥の尾や唐花の花弁は、白、薄紅、赤茶を主に用いた二〜三段の色変わりとして表す。刺繍は渡し繍の技法を主とし、留繍を施す。
紺地繍狩衣は、表は紺繻子地、裏は萌葱地平絹の袷仕立ての狩衣である。袖口には括緒を通さず、白、紅、黄、萌葱の組紐で縁取るが、右袖は一部欠失する。上前の襟端には白麻撚紐をつける。 前身頃と背面全面に、大きく唐花と尾長鳥の文様を刺繍で表す。前身頃には上端に尾長鳥一羽を置き、その周りと裾に蔓を伸ばす唐花を配す。背面には肩まわりに五羽、後身頃の裾に一羽の尾長鳥を配し、その周りを蔓を伸ばす唐花で囲む。刺繍糸は、尾長鳥には白、薄紅、紅、黄、薄萌葱、萌葱、縹、紫、茶の平糸と、白・紅、白・縹、黄・萌葱の杢糸を、唐花には白、紅、薄紅、黄、薄萌葱、萌葱を用いる。尾長鳥の尾や唐花の花弁は、白、薄紅、紅を主に用いた二〜三段の色変わりとして表す。刺繍は渡し繍の技法を主とし、留繍を施す。
長絹は、雲文を織り出した、現状は赤茶色(本来は紅か)を呈する紋紗の単仕立てである。襟は垂領共裂とする。背中央の紋所の位置に牡丹風の刺繍裂(後補)を切り付けする。刺繍は白麻地に、葉と花の多くは金糸で駒繍とし、花の内部は紅糸の渡し繍、蘂は萌葱糸の相良繍とする。
法被は、表は菱に刻みが入った四ツ花菱文を織り出した黄地花菱文綾、裏は紫地平絹の袷仕立である。衽を設け、襟は垂領、共裂とする。袖は肩先で袖付けし、先端に向かってややすぼまる。脇裾に共裂二枚による襴をつける。仕立ては身頃の肩山や脇、袖の各所に継ぎがある。
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
付属品 紺地唐花尾長鳥文様繍狩衣残欠(右袖、左袖、不明)
指定番号(登録番号)
:
02629
枝番
:
00
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2005.06.09(平成17.06.09)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
和歌山県
所在地
:
和歌山県立博物館 和歌山県和歌山市吹上1-4-14
保管施設の名称
:
和歌山県立博物館
所有者名
:
古沢厳島神社
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
和歌山県伊都郡九度山町の古沢【こさわ】荘四か村(笠木、上古沢、中古沢、下古沢)の惣氏神である古沢厳島神社に伝わる慶長十五年(一六一〇)の「古佐布色衆【こさわしきしゅう】之道具の日記」に記載されている装束である。九度山町地域は文化の面では高野山の影響を強く受けており、高野山はこの地域の法会、祭礼に必要な舞楽は大坂の四天王寺楽所、能楽は吉野衆を呼び寄せていたことが知られている。
萌葱地唐花尾長鳥文様繍狩衣と紺地唐花尾長鳥文様繍狩衣に用いられた、裂の裏に糸をまわさずに表を一方向に針足長く、柔らかく繍った渡し繍の技法や、大らかな文様の表現、尾長鳥や唐花に見られるような写実にこだわることなく二~三段の大胆な色変わりに繍い分ける表現方法は桃山時代に通例のものである。
本品のような繍狩衣の遺例はきわめて少なく、重文・能装束紺地白鷺文繍狩衣一領(岐阜県・春日神社蔵、桃山時代)と重文・黄地蝶梅文様繍狩衣及び黄地牡丹文様繍狩衣二領(岐阜県・白山神社蔵、元和六年<一六二〇>)が知られるのみである。表裂や裏地に傷みが多く見られるものの、刺繍はきわめてよく残されており、貴重な作品である。日記に記されたうち「カリキヌ」「シテカリキヌ」がこれらに該当すると考えられる。
関連情報
(情報の有無)
附指定
一つ書
なし
添付ファイル
Loading
Zeom Level
Zoom Mode
解説文
和歌山県伊都郡九度山町の古沢【こさわ】荘四か村(笠木、上古沢、中古沢、下古沢)の惣氏神である古沢厳島神社に伝わる慶長十五年(一六一〇)の「古佐布色衆【こさわしきしゅう】之道具の日記」に記載されている装束である。九度山町地域は文化の面では高野山の影響を強く受けており、高野山はこの地域の法会、祭礼に必要な舞楽は大坂の四天王寺楽所、能楽は吉野衆を呼び寄せていたことが知られている。 萌葱地唐花尾長鳥文様繍狩衣と紺地唐花尾長鳥文様繍狩衣に用いられた、裂の裏に糸をまわさずに表を一方向に針足長く、柔らかく繍った渡し繍の技法や、大らかな文様の表現、尾長鳥や唐花に見られるような写実にこだわることなく二~三段の大胆な色変わりに繍い分ける表現方法は桃山時代に通例のものである。 本品のような繍狩衣の遺例はきわめて少なく、重文・能装束紺地白鷺文繍狩衣一領(岐阜県・春日神社蔵、桃山時代)と重文・黄地蝶梅文様繍狩衣及び黄地牡丹文様繍狩衣二領(岐阜県・白山神社蔵、元和六年<一六二〇>)が知られるのみである。表裂や裏地に傷みが多く見られるものの、刺繍はきわめてよく残されており、貴重な作品である。日記に記されたうち「カリキヌ」「シテカリキヌ」がこれらに該当すると考えられる。
関連情報
附指定
古佐布色衆之道具の日記(慶長十五年十月)
関連情報
添付ファイル
重要文化財2629解説文
関連情報
附指定
附名称
:
古佐布色衆之道具の日記(慶長十五年十月)
附員数
:
一通
附ト書
: