国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
木造千手観音立像
ふりがな
:
もくぞうせんじゅかんのんりゅうぞう
解説表示▶
員数
:
1躯
種別
:
彫刻
国
:
時代
:
平安
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
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ト書
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画賛・奥書・銘文等
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伝来・その他参考となるべき事項
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指定番号(登録番号)
:
3581
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2011.06.27(平成23.06.27)
国宝指定年月日
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追加年月日
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所在都道府県
:
岡山県
所在地
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保管施設の名称
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所有者名
:
大賀島寺
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
腰を捻り動勢を表す異色の千手観音像で、榧とみられる針葉樹の一材から脇手の一部を含む本体および台座蓮肉を彫出する。凝った髪型、複雑な構成を示す着衣形式、各部の深く鋭い彫り口、厳しい表情の面貌などに平安極初期の特色を顕著にみせる。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
腰を捻り動勢を表す異色の千手観音像で、榧とみられる針葉樹の一材から脇手の一部を含む本体および台座蓮肉を彫出する。凝った髪型、複雑な構成を示す着衣形式、各部の深く鋭い彫り口、厳しい表情の面貌などに平安極初期の特色を顕著にみせる。
詳細解説▶
詳細解説
ほぼ等身、十一面四十二臂【ひ】の千手観音立像である。秘仏本尊千手観音立像(重要文化財)を納める厨子の右に設けられたもう一つの厨子内に伝来し、寺伝では本尊の「御代仏【おだいぶつ】」すなわち身替わりのために造られた模刻像とする。構造は榧かと思われる針葉樹材の一木造で、頭躰幹部を木心を後方に外した縦の一材より彫出し、躰部背面より内刳して上下二段の背板を当てる。合掌手の上膊【じょうはく】半以下別材、宝鉢手は各手首・臂で矧ぎ躰部に差し込む。脇手は付根の先を細めて重ね並べ本躰に打ち付ける。表面は後補の古色塗に覆われているが、面頬等に当初とみられる錆下地が認められる。 像容は、眉を面的に表し、顎の短い顔立ちで、目に金属板製の瞳を嵌入する点(左は亡失)、耳を覆いながら鬢髪【びんぱつ】が渦巻く点、裙の左右の裾を後方に引く点等に、奈良・法華寺十一面観音像(国宝)等との共通性を見出せる。裙には翻波式衣文【ほんばしきえもん】を表し、それが不連続かつ自由な配置で所々に松葉形衣文を置くなどの変化をみせ、裙打合せや裙裾の折畳み部には衣縁を波打たせた流麗で鋭角的な彫り口を示している。背面は肩を盛上げ中央には縦に窪みを表し、腹に二段の弛みをみせる肉感豊かな表現に仕上げられている。こうした様式上の特徴もその製作が平安時代前期に遡ることを示している。現状は後補の天衣が両肩に取付けられるが、これを取外すと合掌手が撫で肩に表されていることからすれば、当初も別材製の天衣を著けていた可能性が考えられる。 湖北地方に伝存し、本像と共通の形式・様式をみせる像として、黒田観音寺伝千手観音像、日吉神社千手観音像、千手院本尊像、来現寺聖観音像(以上重要文化財)、鶏足寺菩薩形像(伝魚藍観音)が挙げられる。この中で黒田観音寺像は京都・広隆寺不空羂索【ふくうけんじゃく】観音像(国宝)に類する衣文の彫り口から製作が最も遡るものとみられるが、本像は黒田観音寺像と、裙の渦文をはじめとする衣文の構成、彫り口の鋭さなどに共通性が見出せ、これに次ぐ製作であろう。製作年代は九世紀前半ころとみるべきかと考えられる。 保存状態は表面彩色のほか、頭上面、脇手先、両足先等が後補になり、口周りの補修が尊容をやや損ねてはいるものの、湖北地域の平安前期彫像の作風を如実に示す等身の一木彫像の優作として極めて貴重である。