国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
木造執金剛神立像
ふりがな
:
もくぞうしゅこんごうしんりゅうぞう
解説表示▶
員数
:
1躯
種別
:
彫刻
国
:
時代
:
鎌倉
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
像内にア(梵字)阿弥陀仏の銘がある
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
3593
枝番
:
1
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2012.09.06(平成24.09.06)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
2017.09.15(平成29.09.15)
所在都道府県
:
和歌山県
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
宗教法人金剛峯寺
管理団体・管理責任者名
:
財団法人高野山文化財保存会
解説文:
詳細解説
「南無阿弥陀仏作善集」所載の高野新別所に重源が安置した像にあたるとみられる一対の像で、快慶作の四天王像に通じる造形を示す。執金剛神像内に「ア(梵字)阿弥陀仏」の銘記と経巻二巻が存在することが判明した。
関連情報
(情報の有無)
附指定
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
「南無阿弥陀仏作善集」所載の高野新別所に重源が安置した像にあたるとみられる一対の像で、快慶作の四天王像に通じる造形を示す。執金剛神像内に「ア(梵字)阿弥陀仏」の銘記と経巻二巻が存在することが判明した。
詳細解説▶
詳細解説
嗔目で右足を踏み上げ、右手で金剛杵を振り上げて立つ執金剛神と、髑髏の胸飾を付け、左腕に蛇を巻き付けて立つ深沙大将の一具像である。 執金剛神は檜材の割矧造【わりはぎづくり】で、頭躰通して前後に割矧ぎ、内刳【うちぐり】の上、割首し、さらに右脚外側に別材を矧ぐ。深沙大将は檜材製で頭躰を通して前後矧(別材か割矧かは不明)とし、頸部を水平に鋸挽【のこびき】して面部を割矧いでいる。 平成二十三年、像内頸部正面にア(梵字)阿弥陀仏の墨書、胸部辺に巻子【かんす】が打ち付けられていることが確認され、また像内から別に宝篋印陀羅尼【ほうきょういんだらに】を記した巻子が取り出された。像内銘のア(梵字)阿弥陀仏は快慶作の京都・金剛院深沙大将像(重要文化財)の胴部矧面に同じ名が記され、同じく快慶作の大阪・八葉蓮華寺阿弥陀如来像(重要文化財)の納入書状に「ア(梵字)阿弥陀仏御房」とある。さらに快慶無位時代の作例で像内頸部正面にアン(梵字)阿弥陀仏名を記す例に栃木・真教寺阿弥陀如来像、京都・如意寺地蔵菩薩像があり、本像の墨書は金剛院像および八葉蓮華寺像の例とともにアン(梵字)の空点を書落としたものである可能性が考えられる。 天保十五年(一八四四)の台座修理銘には六角堂(六角経蔵)に四天王像とともに所在していたことが記され、現在、霊宝館保管の四天王像(重要文化財)台座内にも本像とほぼ同文の修理銘が記されている。四天王像は『南無阿弥陀仏作善【さぜん】集』に記録される重源【ちょうげん】建立の高野新別所の四天王像に当たり、快慶無位時代の建久(一一九〇~九九)ないし建仁(一二〇一~一〇四)ころの作品である。同書によれば新別所には「執金剛身深虵大王【じんじゅだいおう】像」の彫像があり、四天王像とともに伝来したことやともに像高四尺を測る法量の近似を考慮すれば本像も新別所伝来とみられる。 忿怒の形相や筋肉描写などは誇張的で、四肢の構成にやや破綻があるが、背中に分厚く肉付けした躰型と顎を強く引く姿勢は四天王像にもみられ、深沙大将の額の中央が隆起する特徴が東大寺南大門金剛力士像(国宝)と共通することが注意される。深沙大将の唇の縁を薄く立上げる形は金剛院深沙大将像に、執金剛神の唇を噛む形は同寺金剛力士像(重要文化財)の吽形にそれぞれ近いものが認められる。このような点から快慶もしくはその周辺仏師の作とみてよいものと考えられる。 その図像は両像とも、同じ組み合わせになる金剛院像と異なることが注意される。執金剛神は金剛院像が東大寺法華堂像(国宝)の模刻であるのに対して、蔵王権現のように右手を振り上げ右足を蹴上げる姿になる。深沙大将は金剛院像が画像における通行の巻髪であるのに対し炎髪【えんぱつ】であり、これは岐阜・横蔵寺像や福井・明通寺像(ともに重要文化財)など平安以来の彫像の伝統を襲うものである。図像では諸尊図像(五島美術館〈大東急記念文庫〉)などに炎髪で本像と手勢が共通する像が掲載され、中でも金沢文庫本諸尊図像集所載の像は著衣形式まで類似することが注意される。 なお平安末期ないし鎌倉初期の醍醐寺内には執金剛神(上醍醐准胝堂)と深沙大将(下醍醐深沙堂)の彫像がともに存在したことが知られる。これらの像が本像とどのような関係にあるかはにわかに決しがたいが、重源が醍醐寺出身僧であることを考えるとその関連に注意してよいであろう。
関連情報
附指定
一、宝篋印陀羅尼(執金剛神像内納入)
関連情報
附指定
附名称
:
一、宝篋印陀羅尼(執金剛神像内納入)
附員数
:
8通
附ト書
:
内三通に建久八年等の記がある