国宝・重要文化財(美術品)
 主情報
名称 花鳥蒔絵螺鈿聖龕
ふりがな かちょうまきえらでんせいがん


花鳥蒔絵螺鈿聖龕
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員数 1基
種別 工芸品
日本
時代 桃山
年代
西暦
作者
寸法・重量 (厨子)高61.5  幅39.5  奥行5.0 (㎝)
(額) 高56.9  幅36.0  奥行3.0 (㎝)
品質・形状  観音開きの扉を付した薄い箱状の厨子に、聖画を描いた板絵を嵌めた額を慳貪式に納める。屋蓋部は唐破風様に造る。素地は木製で、総体を黒漆とし、全面に金銀の平蒔絵と螺鈿を併用…
ト書
画賛・奥書・銘文等
伝来・その他参考となるべき事項
指定番号(登録番号) 02683
枝番
国宝・重文区分 重要文化財
重文指定年月日 2016.08.17(平成28.08.17)
国宝指定年月日
追加年月日
所在都道府県 福岡県
所在地 福岡県太宰府市石坂4丁目7−2
保管施設の名称 九州国立博物館
所有者名 独立行政法人 国立文化財機構
管理団体・管理責任者名


花鳥蒔絵螺鈿聖龕
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解説文:
 聖画を収納する聖龕で、桃山時代に我が国からヨーロッパへ向けて輸出された漆器の一つである。
 我が国では、十六世紀後期から十七世紀前期にかけて、ポルトガルを中心とするいわゆる南蛮交易において、箪笥や櫃などの調度品を主に、数多くの輸出用漆器が製作された。これらは、南蛮様式の輸出漆器で、いわゆる南蛮漆器と呼ばれる。これら南蛮漆器の特色は、螺鈿を多用することや幾何学文の縁取りによって装飾面を明確に区画すること、そしてその区画内部に花鳥文などを充填する表現を施すことなどが挙げられる。これらの額縁的な明確な区画、空間充填的な装飾は、インドやイスラムの装飾様式の影響を受けたものとされ、当時の国際交易の有様を物語っているといえよう。
 我が国における輸出漆器の製作は、十六世紀半ば以降日本を訪れたキリスト教宣教師らによって、布教活動に不可欠な道具として祭儀具が注文されたことに始まると考えられている。祭儀具とは、聖餐式に用いる聖餅を納める聖餅箱や聖書を置くための書見台、聖画を納めるための聖龕などである。その製作の担い手は、京における漆工職人らを中心とした集団であったと思われ、蒔絵とともに螺鈿が多用され、花鳥文を充填的に配置する意匠が施された。これら我が国で製作された祭儀具は、宣教師たちの帰国に際して持ち帰られたものもあると思われる。また、それと同時期、あるいはやや遅れて、交易品として本国における注文を受けて輸出されたものも少なくない。
 本件は、恐らく祭儀具として注文を受けて製作、輸出されたものと思われる。伝来は未詳ながら、近年里帰りしたもので、国内に現存する聖龕としては最大のものである。金銀蒔絵に螺鈿を併用し、幾何学文や花鳥文を全体に隈無く充填して、豪華荘重な意匠が施されている。横溢する螺鈿および蒔絵の意匠や全体の構成は、桃山時代でもやや下って、南蛮漆器の螺鈿意匠がほぼ完成した印象が漂う。また、背面に大きく描かれる花鳥図は、平蒔絵に絵梨地を交えたもので、高台寺蒔絵との関連性が強く感じられる。現存する聖龕において、背面にも装飾を施した例は、類例をみない。いずれにしても、総体に特に入念で優れた作行きを示す優品である。一方、外郭としての厨子に絵画を嵌めた龕を慳貪式に納める方式は、重要文化財・花樹鳥獣蒔絵螺鈿聖龕[東京都・独立行政法人国立文化財機構蔵(東京国立博物館保管)]や花鳥蒔絵螺鈿聖龕[東京都・公益財団法人サントリー芸術財団蔵(サントリー美術館保管)]など、現存する他例も多く、聖龕として当時一般的な構造であったと思われる。また、銅板に聖家族と聖ヨハネを描いた聖画は、精緻かつ丁寧に描かれており、正確な人物表現や総体に金彩が多用される点などは、やや特徴的で、少なくとも日本における写しや複製などにみられる構図の崩れなどはない。作者、製作地ともに不明ながら、この聖龕が輸出された先、ヨーロッパあるいはその周辺において、聖画を後から製作し、額縁に嵌装されたものと思われる。
 本件は、キリスト教の祭儀具である聖龕として、国内に現存する遺品の中では最大で、かつ精緻な漆工技術を駆使した豪華な装飾が施された優品である。また、螺鈿を多用し、かつ区画した内区に充填的な意匠を配置するなど、中世末から近世最初期における国際交易の様相を反映した遺品として貴重であり、南蛮様式の輸出漆器の一つの典型を示す代表作である。
関連情報
    (情報の有無)
  附指定 なし
  一つ書 なし
  添付ファイル なし