国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
和漢朗詠集(雲紙)
ふりがな
:
わかんろうえいしゅう(くもがみ)
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員数
:
2巻
種別
:
書跡・典籍
国
:
日本
時代
:
平安時代
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
法量省略
品質・形状
:
紙本墨書
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
285
枝番
:
国宝・重文区分
:
国宝
重文指定年月日
:
国宝指定年月日
:
2024.08.27(令和6.08.27)
追加年月日
:
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
東京都千代田区千代田
保管施設の名称
:
皇居三の丸尚蔵館
所有者名
:
国(文化庁)
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
和漢朗詠集は、平安時代に貴族の間で朗詠に適した漢詩文の秀句と和歌を題ごとにまとめた詩歌集である。撰者とされる藤原公任(九六六~一〇四一)は当代きっての文化人である。
本巻は、上下二巻からなる完本であり、和漢朗詠集の最古の遺例のひとつとである。各料紙には、右下と左上の対角の位置に藍の雲形を漉きかけた雲紙が用いられている。雲紙の完品の遺品としては現存最古であり、雲紙を対角に配した例は他に知られていない。この特徴的な料紙から本巻は「雲紙本和漢朗詠集」と呼び慣わされている。
本文に使用される漢字・仮名は複数の書体を用いて変化をつけながら書写されており、筆者が視覚的な美を追究した様子をうかがうことができる。筆者に比定される源兼行(生没年不詳)は、平等院鳳凰堂扉の色紙形を揮毫するなど、十一世紀中頃を代表する能書である。
本巻は、平安時代後期を代表する能書が書写した和漢朗詠集の最古の写本の一つであるとともに、雲紙の遺品としても最古であり、我が国の国文学史、書道史上、きわめて貴重である。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
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解説文
和漢朗詠集は、平安時代に貴族の間で朗詠に適した漢詩文の秀句と和歌を題ごとにまとめた詩歌集である。撰者とされる藤原公任(九六六~一〇四一)は当代きっての文化人である。 本巻は、上下二巻からなる完本であり、和漢朗詠集の最古の遺例のひとつとである。各料紙には、右下と左上の対角の位置に藍の雲形を漉きかけた雲紙が用いられている。雲紙の完品の遺品としては現存最古であり、雲紙を対角に配した例は他に知られていない。この特徴的な料紙から本巻は「雲紙本和漢朗詠集」と呼び慣わされている。 本文に使用される漢字・仮名は複数の書体を用いて変化をつけながら書写されており、筆者が視覚的な美を追究した様子をうかがうことができる。筆者に比定される源兼行(生没年不詳)は、平等院鳳凰堂扉の色紙形を揮毫するなど、十一世紀中頃を代表する能書である。 本巻は、平安時代後期を代表する能書が書写した和漢朗詠集の最古の写本の一つであるとともに、雲紙の遺品としても最古であり、我が国の国文学史、書道史上、きわめて貴重である。
詳細解説▶
詳細解説
『和漢朗詠集』は、平安時代に貴族の間で朗詠に適した漢詩文の秀句と和歌を題ごとにまとめた詞歌集である。撰者とされる藤原公任(九六六~一〇四一)は、当代きっての文化人であり、彼の撰による本詩歌集は、後世まで朗詠や詞歌詠作のための手本として利用されただけでなく、平安時代の我が国の文化を知るための資料としても重視されている。 本巻は、上下二巻からなる完本であり、『和漢朗詠集』の最古の写本の一つとして知られる。料紙は、楮紙打紙の雲紙で全体に雲母が撒かれている。雲紙は、天地に長く雲形をおく通常の形式ではなく、各料紙の右下と左上の対角に雲形をおく形式が採られている。雲紙の完品の遺品としては最古であり、雲形を対角に配した例は他に知られていない。この特徴的な料紙が用いられていることから、本巻は「雲紙本和漢朗詠集」と呼び慣わされている。 本文は、部立に次いで標目を記し、漢詩文、和歌の順に記す。漢詩文は句の長さに応じて一句一行から三行、和歌は一首二行で記し、末尾に作者名を小字で記す。使用される漢字は、楷書・行書・草書など複数の書体を用いて記されている。仮名は一音につき複数の字母を使用し、女手のほか、草仮名が用いられ、筆者が視覚的な美を追求した様子をうかがうことができる。 本巻の筆者は、藤原行成(九七二~一〇二七)として伝来してきたが、研究の進展に伴い、源兼行(生没年不詳)の筆跡であることが通説となっている。兼行は、平等院鳳凰堂扉の色紙形を揮毫するなど、十一世紀中頃を代表する能書である。 上巻の末尾には和歌一首が添えられている。本文とは異筆であり、作者も不明であるが、記された時代は本文が書写された時代をそれほど下るものではなく、内容から当時の所有者の周辺で記されたものと推測される。下巻の末尾には関白近衛基熈(一六四八~一七二二)が元禄十年(一六九七)に記した識語が存在し、本巻が近衛家に一時期伝来したことを伝えている。なお、本巻の装丁は、基熈の息子家熈(一六六七~一七三六)が好んだ装丁であり、本巻が家熈によって改装されたことが推測されている。その後、天皇家に進上され、御物として伝来した。 本巻は、平安時代後期を代表する能書が書写した『和漢朗詠集』の最古の写本の一つであるとともに、雲紙の遺品としても最古であり、我が国の国文学史、書道史上、極めて貴重なものである。