国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
絹本著色真言八祖行状図
ふりがな
:
けんぽんちゃくしょくしんごんさっそじょうじょうず
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員数
:
8幅
種別
:
絵画
国
:
日本
時代
:
平安
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
01992
枝番
:
0
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2002.06.26(平成14.06.26)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
東京都千代田区丸の内3-1-1
保管施設の名称
:
公益財団法人出光美術館
所有者名
:
公益財団法人出光美術館
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
本図は八幅各々に真言八祖の行状を広略の『付法伝』等に依拠して表したもので、背景に描かれた景観の連続性から四幅ずつに二分される。すなわち、竜猛・竜智・金剛智・不空の順で右から左に並ぶ秋景、善無畏・一行・恵果・空海の順で左から右に並ぶ春景である。
竜猛幅は画面中央に宝塔を表し、その斜め下に宝形造の三間四面の堂、さらに塔の斜め右上に寄棟造の大きな建物が描かれている。建物の手前軒下に二僧が坐し、左手には内陣に向かって坐す僧(竜猛か)が描かれている。二僧のうち左(竜猛の弟子)が差し出す水盤に右(提婆)が針を入れようとする、『広付法伝』の記事を表していると考えられている。建物の背景は山岳となり、画面左上方に山並みが連なる。左上方に一堂があり、中に対座する二僧を描いている(三鈷を持つ竜猛と竜智)。画面下方左手は水辺とし、右下部には芭蕉が描かれ、天竺の風景であることを示している。堂塔の屋根や左下部などに損傷がある。
竜智幅は画面半ばから下は紅葉に色づく山中の風景で、左方には対座する二僧(竜智と玄奘か)、右下方には二僧(金剛智と善無畏)と対座する竜智が表されている。画面の上方にまで山並みが続き、霞の中に堂舎の屋根がのぞく。中央やや右には楽器を持つ二人物が表され、間を隔てて左方の丘には鹿があり、左下の手前にも鹿の群が描かれている。この二人物は金剛智幅に連なると考えられる。
金剛智幅は画面の中央上から下に大海を表し、画面左下方に堂舎、その手前に観音菩薩と金剛智を表し、摩羅耶国補陀落山で観音から、師子国を経て大唐国に弘法せよと教勅された場面を表している。荒海では左端に遭難船を表し航海の困難を示しているが、右上の岸辺には無事に唐に着いた牀座上の金剛智と従者、これを歓迎する節度使一行を表している。松原を背景に笏を手に跪坐する人物の前では音楽を奏で華や香を捧げている。岸の左に着岸した一艘の船と小舟があり、荷を陸に揚げようとしている。画面右下には断崖を表し、その裾の岸辺には種々の貝を描いている。画面左方に紅葉を表す。大海の中央部に大きな絹の欠失がある。なお、波頭の白色は後補である。
不空幅画面右上方は金剛智幅から連続する海と飛鳥の列、下方は手前に双松の生える土坡、その向こうに紅葉の下に小さな滝を表す。画面上方中央には師子国で竜智に対座する不空とその一行が紅葉下に表される。霞を隔てて左下に不空とその前に臥した象(後補)が描かれ、不空の後方には狂象から逃げる二人物が表される。画面中央の宮殿中央部の正殿では横向きの不空に皇帝(玄宗か)が対している。正殿軒下や廊には三人の従者が控え、さらに左方の中門に一人が立ち、その向こうに二人の上半身が見える。右側土坡の上にはカモシカが表され、画面左下は池となっている。画面上部に雨漏り痕が甚だしく、本図がもと障子絵であったことをうかがわせる。
善無畏幅は状態が八幅中最も悪く、画面下方と左中央部に絹の欠失がある。上方も傷んでいるが、画面中央右から左下にかけて近景の山岳を表している。右下には山中で武将たちの見守る中、叔母である王妃の使者に迎えられる王者風の善無畏を表している。画面左上には峻険な岩山を背に城門を構えた殿舎があり、母屋には国王と妃に出家の決意を語る善無畏を表し、母屋の左奥には剃髪する善無畏を異時同景に表している。城門の左方には衛兵らが描かれ、門の中では紅梅が咲いている。さらに右上部には流砂の中、唐を目指して歩を悩ませる善無畏一行を表す。善無畏は僧形で、向かい風を制するかのように錫杖を振り上げ、後方に二侍者が続く。構図としては、画面が右方に続くことを示している。
一行幅は比較的状態が良いが、主要な場面は左下方の一情景のみである。右上方には山道を下ってきた二人物が左方の水鳥や飛鶴を見やっており、のどかな春の情景が表されている。画面中ほどには楼門と土塀に囲まれた一堂舎が描かれる。堂舎の中には一行が経机の前に坐して一僧と対し、左右に各一人の僧が聴聞している。堂の後方には桜が咲きにおい、手前には左から土坡がせり出し、豊かな水流が画面下辺中ほどに及んでいる。
恵果幅は画面中央より下方には右手に松の生えた土坡、左方に城壁に囲まれた殿舎が表され、皇帝(代宗か)と対座する恵果、および童子や従者等を描いている。前庭にも二従者が控えている。楼門の左右には衛兵が描かれているが損傷甚だしく、後補が多い。中景に桜を表し、右から左に池が張り出し、鴛鴦や鴨など水鳥が浮かび、岸辺には柳が枝を垂れている。その向こう、左上方には宝形造の堂舎が表され、一童子を従えた恵果と、これに対座する空海を描いている。堂舎の上方には山の端目指して雁の群が飛んでいる。…全文は添付ファイルを参照
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
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解説文
本図は八幅各々に真言八祖の行状を広略の『付法伝』等に依拠して表したもので、背景に描かれた景観の連続性から四幅ずつに二分される。すなわち、竜猛・竜智・金剛智・不空の順で右から左に並ぶ秋景、善無畏・一行・恵果・空海の順で左から右に並ぶ春景である。 竜猛幅は画面中央に宝塔を表し、その斜め下に宝形造の三間四面の堂、さらに塔の斜め右上に寄棟造の大きな建物が描かれている。建物の手前軒下に二僧が坐し、左手には内陣に向かって坐す僧(竜猛か)が描かれている。二僧のうち左(竜猛の弟子)が差し出す水盤に右(提婆)が針を入れようとする、『広付法伝』の記事を表していると考えられている。建物の背景は山岳となり、画面左上方に山並みが連なる。左上方に一堂があり、中に対座する二僧を描いている(三鈷を持つ竜猛と竜智)。画面下方左手は水辺とし、右下部には芭蕉が描かれ、天竺の風景であることを示している。堂塔の屋根や左下部などに損傷がある。 竜智幅は画面半ばから下は紅葉に色づく山中の風景で、左方には対座する二僧(竜智と玄奘か)、右下方には二僧(金剛智と善無畏)と対座する竜智が表されている。画面の上方にまで山並みが続き、霞の中に堂舎の屋根がのぞく。中央やや右には楽器を持つ二人物が表され、間を隔てて左方の丘には鹿があり、左下の手前にも鹿の群が描かれている。この二人物は金剛智幅に連なると考えられる。 金剛智幅は画面の中央上から下に大海を表し、画面左下方に堂舎、その手前に観音菩薩と金剛智を表し、摩羅耶国補陀落山で観音から、師子国を経て大唐国に弘法せよと教勅された場面を表している。荒海では左端に遭難船を表し航海の困難を示しているが、右上の岸辺には無事に唐に着いた牀座上の金剛智と従者、これを歓迎する節度使一行を表している。松原を背景に笏を手に跪坐する人物の前では音楽を奏で華や香を捧げている。岸の左に着岸した一艘の船と小舟があり、荷を陸に揚げようとしている。画面右下には断崖を表し、その裾の岸辺には種々の貝を描いている。画面左方に紅葉を表す。大海の中央部に大きな絹の欠失がある。なお、波頭の白色は後補である。 不空幅画面右上方は金剛智幅から連続する海と飛鳥の列、下方は手前に双松の生える土坡、その向こうに紅葉の下に小さな滝を表す。画面上方中央には師子国で竜智に対座する不空とその一行が紅葉下に表される。霞を隔てて左下に不空とその前に臥した象(後補)が描かれ、不空の後方には狂象から逃げる二人物が表される。画面中央の宮殿中央部の正殿では横向きの不空に皇帝(玄宗か)が対している。正殿軒下や廊には三人の従者が控え、さらに左方の中門に一人が立ち、その向こうに二人の上半身が見える。右側土坡の上にはカモシカが表され、画面左下は池となっている。画面上部に雨漏り痕が甚だしく、本図がもと障子絵であったことをうかがわせる。 善無畏幅は状態が八幅中最も悪く、画面下方と左中央部に絹の欠失がある。上方も傷んでいるが、画面中央右から左下にかけて近景の山岳を表している。右下には山中で武将たちの見守る中、叔母である王妃の使者に迎えられる王者風の善無畏を表している。画面左上には峻険な岩山を背に城門を構えた殿舎があり、母屋には国王と妃に出家の決意を語る善無畏を表し、母屋の左奥には剃髪する善無畏を異時同景に表している。城門の左方には衛兵らが描かれ、門の中では紅梅が咲いている。さらに右上部には流砂の中、唐を目指して歩を悩ませる善無畏一行を表す。善無畏は僧形で、向かい風を制するかのように錫杖を振り上げ、後方に二侍者が続く。構図としては、画面が右方に続くことを示している。 一行幅は比較的状態が良いが、主要な場面は左下方の一情景のみである。右上方には山道を下ってきた二人物が左方の水鳥や飛鶴を見やっており、のどかな春の情景が表されている。画面中ほどには楼門と土塀に囲まれた一堂舎が描かれる。堂舎の中には一行が経机の前に坐して一僧と対し、左右に各一人の僧が聴聞している。堂の後方には桜が咲きにおい、手前には左から土坡がせり出し、豊かな水流が画面下辺中ほどに及んでいる。 恵果幅は画面中央より下方には右手に松の生えた土坡、左方に城壁に囲まれた殿舎が表され、皇帝(代宗か)と対座する恵果、および童子や従者等を描いている。前庭にも二従者が控えている。楼門の左右には衛兵が描かれているが損傷甚だしく、後補が多い。中景に桜を表し、右から左に池が張り出し、鴛鴦や鴨など水鳥が浮かび、岸辺には柳が枝を垂れている。その向こう、左上方には宝形造の堂舎が表され、一童子を従えた恵果と、これに対座する空海を描いている。堂舎の上方には山の端目指して雁の群が飛んでいる。…全文は添付ファイルを参照
関連情報
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重要文化財1992解説文