国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
寸松庵色紙(しものたて并楓図扇面)
ふりがな
:
すんしょうあんしきし
解説表示▶
員数
:
1幅
種別
:
書跡・典籍
国
:
日本
時代
:
平安
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
色紙 縦13.0cm 横12.6cm
扇面 辺14.5cm 上弦幅34.8cm 下弦幅14.5cm
品質・形状
:
掛幅装
料紙 丹地雲母引唐紙
扇面 金地著色楓図
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
本文「しものたて」の和歌、半葉6行
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
02526
枝番
:
00
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2003.05.29(平成15.05.29)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
個人
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
「寸松庵色紙」は、『古今和歌集』の四季の歌を書写した粘葉装冊子本の断簡で、紀貫之筆と伝えられている。継【つぎ】色紙(伝小野道風)、升【ます】色紙(伝藤原行成)とともに三色紙と称される古筆切の名品である。
寸松庵は、江戸時代前期の茶人、佐久間将監真勝【しょうげんさねかつ】(一五七〇~一六四二)が、元和七年(一六二一)に京都大徳寺龍光院内に建立した茶室である。当時堺の南宗寺の襖には、冊子本を解体した三六枚が貼られており、真勝はその中から一二枚を手に入れるとともに、色紙の歌意を表す扇面を土佐光則(一五八三~一六三八)に描かせたとされる。そして同一の台紙の上部に色紙、下部に扇面を貼る掛幅装に仕立て、これが巷間に「寸松庵色紙」と称されて珍重され現在に至った。
本幅は、『古今和歌集』巻第五、秋歌下に所収される第二九一番藤原関雄の歌を、丹地に雲母引きの唐紙の料紙に書写した半葉で、王朝好みの優美を伝えている。表具は一文字・風帯に銀染地花兎石畳文金襴、中廻に薄萌葱地鳳凰花唐草文万暦刺繍、上下に藍地丸龍文宝尽緞子で、軸は牙切軸である。表具裂からみても、江戸時代の然るべき伝来を示している。
本文は、始めに作者名の「せ□(き)を」とあり、ついで「しもの□□(たて)つゆの/ぬきこそもろか/らし山のにしき/のおれはかつち/る」の六行の散らし書きを品格の高い書風で温和な仮名の連綿にて書写している。「もろからし」の部分は、『古今和歌集』では「よわからし」となっている。色紙下の金地著色の扇面には、歌意、心ばえを表す楓の紅葉の様が描かれ、両者一対となって台紙貼にされた「寸松庵色紙」独特の形態を今に伝えている。
なお、本幅には益田孝(鈍翁 一八四八~一九三八)の許に伝来したことを示す「益田家旧蔵」の付札のほか、収納箱には、多田親愛(一八四〇~一九〇五)が町田久成(石谷 一八三八~一八九七)に本幅の価値を伝えた書状と模写図(掛幅装)があり、その内容は現装と一致し、近代以降におけるその伝来を伝えている。
現在、「寸松庵色紙」として伝えられる中で扇面を伴うものは四件あり、すでに二件が重要文化財に指定されているが、いずれも色紙と扇面とが別幅に仕立てられている。色紙と扇面とを同じ台紙上に貼って掛幅装に仕立てられたもので、現在確認できるのは本幅のみである。本幅は、平安仮名史上の優品として、かつ古筆伝来上に著名な「寸松庵色紙」の本来の形状を今に伝える唯一の遺品としてきわめて貴重である。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
「寸松庵色紙」は、『古今和歌集』の四季の歌を書写した粘葉装冊子本の断簡で、紀貫之筆と伝えられている。継【つぎ】色紙(伝小野道風)、升【ます】色紙(伝藤原行成)とともに三色紙と称される古筆切の名品である。 寸松庵は、江戸時代前期の茶人、佐久間将監真勝【しょうげんさねかつ】(一五七〇~一六四二)が、元和七年(一六二一)に京都大徳寺龍光院内に建立した茶室である。当時堺の南宗寺の襖には、冊子本を解体した三六枚が貼られており、真勝はその中から一二枚を手に入れるとともに、色紙の歌意を表す扇面を土佐光則(一五八三~一六三八)に描かせたとされる。そして同一の台紙の上部に色紙、下部に扇面を貼る掛幅装に仕立て、これが巷間に「寸松庵色紙」と称されて珍重され現在に至った。 本幅は、『古今和歌集』巻第五、秋歌下に所収される第二九一番藤原関雄の歌を、丹地に雲母引きの唐紙の料紙に書写した半葉で、王朝好みの優美を伝えている。表具は一文字・風帯に銀染地花兎石畳文金襴、中廻に薄萌葱地鳳凰花唐草文万暦刺繍、上下に藍地丸龍文宝尽緞子で、軸は牙切軸である。表具裂からみても、江戸時代の然るべき伝来を示している。 本文は、始めに作者名の「せ□(き)を」とあり、ついで「しもの□□(たて)つゆの/ぬきこそもろか/らし山のにしき/のおれはかつち/る」の六行の散らし書きを品格の高い書風で温和な仮名の連綿にて書写している。「もろからし」の部分は、『古今和歌集』では「よわからし」となっている。色紙下の金地著色の扇面には、歌意、心ばえを表す楓の紅葉の様が描かれ、両者一対となって台紙貼にされた「寸松庵色紙」独特の形態を今に伝えている。 なお、本幅には益田孝(鈍翁 一八四八~一九三八)の許に伝来したことを示す「益田家旧蔵」の付札のほか、収納箱には、多田親愛(一八四〇~一九〇五)が町田久成(石谷 一八三八~一八九七)に本幅の価値を伝えた書状と模写図(掛幅装)があり、その内容は現装と一致し、近代以降におけるその伝来を伝えている。 現在、「寸松庵色紙」として伝えられる中で扇面を伴うものは四件あり、すでに二件が重要文化財に指定されているが、いずれも色紙と扇面とが別幅に仕立てられている。色紙と扇面とを同じ台紙上に貼って掛幅装に仕立てられたもので、現在確認できるのは本幅のみである。本幅は、平安仮名史上の優品として、かつ古筆伝来上に著名な「寸松庵色紙」の本来の形状を今に伝える唯一の遺品としてきわめて貴重である。