国宝・重要文化財(美術工芸品)
 主情報
名称 絹本著色仏涅槃図〈呉彬筆/〉
ふりがな けんぽんちゃくしょくぶつねはんず
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員数 1幅
種別 絵画
日本
時代 平安
年代
西暦
作者 呉彬
寸法・重量
品質・形状
ト書
画賛・奥書・銘文等
伝来・その他参考となるべき事項
指定番号(登録番号) 01929
枝番 00
国宝・重文区分 重要文化財
重文指定年月日 1994.06.28(平成6.06.28)
国宝指定年月日
追加年月日
所在都道府県 長崎県
所在地
保管施設の名称
所有者名 崇福寺
管理団体・管理責任者名

解説文:
 特異な図様をもつ大幅の仏涅槃図である。入寂した釈迦は仮眠でも取るかのようであり、周囲の広大な陸・水・空には極度に多数の会衆がひしめき合う。会衆のなかには湧雲に乗って来迎する阿弥陀三尊、太上老君【たいじようろうくん】・寿老人ら道教の神々や道士たち、水中から出現する魚貝の怪物など珍しい図像が多い。これらの図様の特徴は、極楽浄土ないし不老長寿の願いを仏涅槃に重ね合わせる阿弥陀浄土信仰や道仏習合、総じて明末の民間信仰に由来すると指摘される。加えて、僧侶たちの顔貌のうちに散見する肖像画風の個性的な描写、文殊・普賢を初め婦女形の諸尊・諸神の美人画風の描写、四天王や八部衆の怪異な風貌の強調、さらに赤や青の原色の多用といった表現上の諸特徴は、本図が民衆の現実的な興味に強く訴える性格をもつことを示唆する。
 作者の呉彬【ごひん】は字【あざな】を文中(文仲)といい、僧籍を得て枝隠庵頭陀などとも号した。福建省〓田【ほでん】の出身で金陵(南京)に移り活躍した。作品の款記により隆慶二年(一五六八)ころから天啓六年(一六二六)ころまでの活動が知られる。その山水画は北宋の様式を独特の手法で復興することによって幻想的な景観を作り出しており、近年高い評価を得ている。道釈人物画においても擬古的であると同時に形態のおもしろさを強調する個性的な画風を見せ、明末の奇異な人物画を代表する作家のひとりである。現存する呉彬の最大の作品かつ唯一の仏涅槃図である本図には、その力量がいかんなく発揮される。人物に比して自然景の描写は保守的ともいえるが、湧雲は彼の山水画の岩山を思わせる細かな凹凸をもつ形に作られており、動感に富んだ空間構成もその山水画と共通する特色を示す。
 田中崇和なる逸伝の画家が本図をもとに描いた二幅の「仏涅槃図」のうち佐賀県・福源寺【ふくごんじ】の一幅に元禄二年(一六八九)二月の款記があるので、それ以前に請来されたことは確実である。本図に見られる人物の奇怪な表情や原色の多用という特色は、日本の画家にも影響を及ぼしていると考えられ、黄檗文化の一環として江戸時代の絵画界に流行した新様式の源流とも位置づけ得る。明末の特異な仏涅槃図であり呉彬の仏画の代表作であるとともに、また江戸時代の画壇に与えた明代絵画の影響という点からも注目すべき作品である。
関連情報
    (情報の有無)
  附指定 なし
  一つ書 なし
  添付ファイル なし