国宝・重要文化財(美術工芸品)
 主情報
名称 木造観音菩薩坐像
ふりがな もくぞうかんのんぼさつざぞう
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員数 1躯
種別 彫刻
日本
時代 南宋
年代
西暦
作者
寸法・重量
品質・形状
ト書
画賛・奥書・銘文等
伝来・その他参考となるべき事項
指定番号(登録番号) 03467
枝番 00
国宝・重文区分 重要文化財
重文指定年月日 1997.06.30(平成9.06.30)
国宝指定年月日
追加年月日
所在都道府県 京都府
所在地
保管施設の名称
所有者名 泉涌寺
管理団体・管理責任者名

解説文:
 泉涌寺【せんにゆうじ】観音堂の本尊で、「楊貴妃【ようきひ】観音」の名で広く親しまれている等身大の観音像である。大型の山形透彫宝冠を戴き、ともに白色の内衣と両肩と両袖を覆う上衣を纏って、両手で華茎を執って坐している。
 日本の木彫像にはみられない白く堅密な材を用い、頭躰を別材から彫出し、頭部は前後三材矧ぎにして頭髪に練物を盛り上げ塑形する。躰部は数材を箱組状に組み付け、これに両躰側材・両足部を矧いでいる。宝冠や胸飾、持物は当初のもので、本体表面の彩色の保存状態もよく、直線的な幾何学文を中心に構成された着衣の切金文様等もよく残り、当初の姿をよくとどめている。
 南宋請来の寺伝があるように、長大で肉厚な耳朶を付した、目尻の上がった切れ長の目と鼻梁の長い大きな鼻でつくる面長の顔立ちには一種のなまめかしさが認められ、一見してわが国の仏像とは異相を表している。頭部を前に差し出して少し猫背気味で奥行の深い側面観や、概念的に簡略化された躰躯の肉取りと着衣の表現、内衣の腹部に刻まれた渦文状の衣文表現、あるいは頭髪や垂髪、装身具の塑形に練物を多用する表現は、南宋時代の作とみられる神奈川・清雲寺観音菩薩坐像に非常に近似しており、本像は寺伝どおり中国南宋時代に製作された木彫像とみて誤りなかろう。
 その伝来について確証のある記録は知られてはいないものの、本像の請来者として、俊〓【しゆんじよう】の弟子の湛海【たんかい】の名が指摘されており、南宋慶元府の白蓮寺から仏牙舎利を日本に請来した湛海によりもたらされた可能性も考慮すべきで、彼の二度目の入宋の帰国年、建長七年(一二五五)はその製作の下限の目安となろう。鎌倉時代には、このような僧侶らによる宋代文化の受容が盛んとなり、京都におけるこうした潮流の中心となっていた泉涌寺に請来された本像は、その実情を如実に示す好例といえる。
 韋駄天と、月蓋長者と伝えられる二像は、現在舎利殿の舎利宝塔の左右に安置され、その面貌や用材、髪や甲の飾りなどの細部の造形に練物を多用することなどは、観音菩薩像と共通し、同じころ南宋で製作されたとみられる。
関連情報
    (情報の有無)
  附指定
  一つ書 なし
  添付ファイル なし