国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
烏喰の行事
ふりがな
:
からすくいのぎょうじ
烏喰の行事
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
社会生活(民俗知識)
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年旧暦1月1日、5月5日、9月9日(※選択当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
選択番号
:
選択年月日
:
2008.03.13(平成20.03.13)
追加年月日
:
選択基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
高知県
所在地
:
保護団体名
:
若一王子宮総代会
烏喰の行事
解説文:
詳細解説
この行事は、香我美町徳王子の若一王子宮で年3回行われる行事である。3回とも同じように行われ、昼搗いた御膳上げ餅と呼ばれる餅を深夜に神社本殿の屋根に供え、朝までに烏がこの餅を食べたか否かで作物の豊凶を占う行事である。天下泰平、五穀豊穣、万民豊楽を願って行われ、本殿屋根の軒端に供えた御膳餅を烏が食べれば豊作になるといわれている。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
烏喰の行事
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烏喰の行事
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烏喰の行事
解説文
この行事は、香我美町徳王子の若一王子宮で年3回行われる行事である。3回とも同じように行われ、昼搗いた御膳上げ餅と呼ばれる餅を深夜に神社本殿の屋根に供え、朝までに烏がこの餅を食べたか否かで作物の豊凶を占う行事である。天下泰平、五穀豊穣、万民豊楽を願って行われ、本殿屋根の軒端に供えた御膳餅を烏が食べれば豊作になるといわれている。(※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
烏喰の行事は、香南市香我美町徳王子に所在する若一王子宮で旧暦1月1日、同5月5日、同9月9日の年3回行われる行事である。3回とも同じように行われ、昼搗いた御膳上げ餅と呼ばれる餅を深夜に神社本殿の屋根に供え、朝までに烏がこの餅を食べたか否かで作物の豊凶を占う行事である。 徳王子は、南国市の東隣、物部川の東に位置する。若一王子宮の氏子は香我美町徳王子、岸本、赤岡町絵美町の地域に広がっている。全体で38人の総代がおり、その中から徳王子3人、岸本と赤岡から2人ずつあわせて7人の責任総代が選ばれ、徳王子の責任総代の中から総代会長1人と会計が選ばれ、岸本と赤岡の責任総代から一期交代で副総代長が1人選ばれる。このほか徳王子と赤岡から1人ずつ監事が選ばれる。任期はいずれも4年である。行事は7人の責任総代と徳王子の12人の総代、さらに徳王子に3人、岸本に1人いる協力員が参加して行われる。協力員は総代をやめた人が務める。 1月1日の行事は大晦日の朝の潮垢離取りから始まり、翌元日の朝までお籠りして行われる。大晦日の朝に岸本の浜辺に参加者全員が集合し、神職のお祓いの後全員が海に入って潮垢離を取る。この潮垢離取りをしていないと行事に参加することができない。これが終わると若一王子宮に向かい行事の準備が始まる。総代会長の指示で境内・社殿の清掃、餅つきなどの準備を進める。これらの準備が始まると鳥居や境内と外をつなぐ出入り口にロープを張り、参加者が外に出ること、一般の者が中に入ることをできなくする。並行して餅つきが始まる。全部で6升の餅を搗くことになっており、かつては糯米を持ち寄って搗いたが現在では糯米を購入して搗いている。餅は石の臼で3臼搗き、1臼目で烏に食べさせるために神社本殿の屋根に供える御膳上げの餅5個をとり、2臼目で月の神重ね餅を平年は112重ね、潤年は113重ねとる。続いて祈願重ね餅を6重ねとり、最後に日の神千切餅を平年は365個、潤年は366個とる。最後の3臼目で毒味試食餅と祈願いただき餅をそれぞれ参加総代1人あたり2個ずつの計算でとる。これは行事終了後参加者に配られる。これらの準備が済むと昼食をとって休憩した後、総代と神職がそろって若一王子宮内外に祀られている小社を拝んでまわる小宮参りが行われる。小宮参りが済むと夕食までの間に参加者は各自持参したお籠り用の寝具を運び込んで準備を進める。夕方には食事をかねた小宴が行われ、夜中12時から行事を行うことを確認した後参加者は拝殿と境内にある社務所等に分かれてお籠りする。 夜中12時になると、お籠りしていた全員が正装して拝殿に集合して神事を行った後、神職が進行役の総代から御膳上げの餅を受け取り、総代会長に先導されて本殿前に登る。神職はここから本殿横に出ると屋根にかけられた梯子を登って軒端に御膳餅を供え、唱えごとを唱えて拝み下りてくる。この後拝殿に戻って神楽を奉納すると御膳上げの行事は終了する。 翌早朝再び全員が拝殿に集合して神事の後、総代会長の先導で神職が本殿の屋根の上に供えた御膳餅を確認して戻り烏が御膳餅を食べたか否かを報告する。食べていれば祈願成就で豊作になるといわれている。最後に大太鼓を拝殿入り口に運び総代全員が5回ずつ太鼓を打って行事が終了する。 この行事は、天下泰平、五穀豊穣、万民豊楽を願って行われる行事で、本殿屋根の軒端に供えた御膳餅を烏が食べれば祈願成就で豊作になるといわれている。 この行事は、小正月やコトヨウカなどに全国的に行われる、烏に餅や米を食べさせて作の善し悪しを占う烏勧請とか烏呼びと呼ばれる行事と同種の行事であると考えられている。一方、年に3回も同様の行事が行われることや、高知県内においては同種の行事の報告例が存在しないなどの特色もみられる。しかしながら作占の結果がほぼ毎年決まって豊作と占うようになったりするなど行事の形骸化がみられるようになっている。このように類例の少なくなった地域的特色の見られる行事であり、我が国の年頭の作占行事を知る上で貴重な行事である。しかしながら行事の形骸化など衰退・変貌の恐れが高く、早急に記録を作成する必要がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)