国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
四国山地の発酵茶の製造技術
ふりがな
:
しこくさんちのはっこうちゃのせいぞうぎじゅつ
四国山地の発酵茶の製造技術
写真一覧▶
解説表示▶
種別1
:
民俗技術
種別2
:
衣食住
その他参考となるべき事項
:
選択番号
:
選択年月日
:
2018.03.08(平成30.03.08)
追加年月日
:
選択基準1
:
(三)地域的特色を示すもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
徳島県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
四国山地の発酵茶の製造技術
解説文:
詳細解説
本件は,徳島県勝浦郡上勝町・那賀郡那賀町,愛媛県西条市,高知県長岡郡大豊町等,四国地方の標高数百mの山間部に伝承されている茶の製造技術で,製造過程で人為的な発酵が行われる点に特色がある。
徳島県では,阿波晩茶などと呼ばれ,夏場に刈り取った茶葉を,煮てから揉捻し,桶に数週間漬け込んで発酵させ,最後に乾燥させる。
愛媛県や高知県では,それぞれ石鎚黒茶,碁石茶などと呼ばれ,夏場に刈り取った茶葉を,蒸してからカビ付けした後に,桶に数週間漬け込んで発酵させ,最後に乾燥させる。
阿波晩茶が一段発酵,石鎚黒茶や碁石茶が二段発酵という違いはあるものの,摘んだ茶葉をすぐに加熱して自然発酵を抑制する一方で,後に人為的に強制発酵させる点は共通し,どちらも独特の酸味を持った茶となる。
(※解説は選択当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
四国山地の発酵茶の製造技術
四国山地の発酵茶の製造技術
写真一覧
四国山地の発酵茶の製造技術
写真一覧
四国山地の発酵茶の製造技術
解説文
本件は,徳島県勝浦郡上勝町・那賀郡那賀町,愛媛県西条市,高知県長岡郡大豊町等,四国地方の標高数百mの山間部に伝承されている茶の製造技術で,製造過程で人為的な発酵が行われる点に特色がある。 徳島県では,阿波晩茶などと呼ばれ,夏場に刈り取った茶葉を,煮てから揉捻し,桶に数週間漬け込んで発酵させ,最後に乾燥させる。 愛媛県や高知県では,それぞれ石鎚黒茶,碁石茶などと呼ばれ,夏場に刈り取った茶葉を,蒸してからカビ付けした後に,桶に数週間漬け込んで発酵させ,最後に乾燥させる。 阿波晩茶が一段発酵,石鎚黒茶や碁石茶が二段発酵という違いはあるものの,摘んだ茶葉をすぐに加熱して自然発酵を抑制する一方で,後に人為的に強制発酵させる点は共通し,どちらも独特の酸味を持った茶となる。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
四国山地の発酵茶の製造技術は、徳島県の勝浦郡上勝町や那賀郡那賀町、愛媛県西条市などに伝承されている製茶技術で、摘み取った茶葉の自然発酵を熱処理によって止める一方で、別の方法で人為的に強制発酵させることで、独特の味わいをもった発酵茶を製造するものである。 上勝町や那賀町に伝承される発酵茶は、阿波晩茶などと呼ばれる。徳島県南西部の標高200m前後の山間部で、7月から8月にかけて各家で造られ、自家消費されるほか、かつては茶粥の材料として瀬戸内方面にも出荷されたという。この技術は、自生する山茶の製茶法として弘法大師が伝授したと伝えられるほか、平家の落人がもたらしたとも言い伝えられ、上勝町旭の神田地区には平家の落人の携えてきた八幡神を祀ったとされる茶神八幡宮も鎮座し、毎年9月の例祭では新茶が供えられる。製法は、茶摘み、煮る(茹で)、揉捻、漬け込み、乾燥の大きく5つの工程からなる。茶摘みは、暑さを避けて早朝から行われ、山茶の葉をすべてしごきとる。摘んだ茶葉は、数日後、釜で茹でる。数分茹でて葉の色が茶褐色になったり、枝から葉が取れると揉捻に入る。なお、茹で汁も別にとっておく。揉捻は、茶摺りといい、茶葉を軽く撚る。次いで、茶葉を大きな桶に漬け込む。那賀町ではこれをネサスという。竪杵で搗いたり、足で踏んでぎっしり詰め、最後に棕櫚や芭蕉の葉などで上部を覆って蓋を載せ、「石を持たす」と称して茶葉と同等の重さの重石をする。このとき茹で汁も桶の表面に張るほど入れる。2週間前後漬け込むが、途中で汁が減った場合は汁を追加して常に桶の表面に汁が張るようにする。やがて濃い黄色の気泡がでてくると茶葉を取り出してほぐし、茶干しと称して筵に広げて2日前後天日乾燥する。茶葉に混じった茶の実が割れる頃を目安として取り込み、最後に小枝や異物を取り除く。 西条市に伝承される発酵茶は、石鎚黒茶などと呼ばれる。愛媛県東部の標高200m前後の山間部で、7月から8月にかけて造られる。かつては石鎚山麓の多くの家が造っていたが、現在はいくつかの団体が製造する。この技術は、弘法大師から伝授された、平家の落人が伝えたなどといわれている。自家消費されるほか、かつては石鎚山のお山開きの接待で用いられたり、茶粥の材料として瀬戸内方面に出荷されたともいわれる。製法は、茶摘み、洗浄、蒸し、黴付け、揉捻、漬け込み、乾燥の大きく7つの工程からなる。茶摘みで山茶の葉をほとんど採り、水で洗って蔓や塵などを取り除く。次いで1時間ほど蒸し、茶色になった葉を冷ましながら異物や枝を取り除く。次に茶葉に蒸した際に出た汁をかけてから木箱などに入れる。7日ほどして白い黴が付着すると、これを取り出して手で軽く揉む。そして桶などに茶葉を漬け込む。手で押したり足で踏んだりしてぎっしり詰め、最後に蓋の上に茶葉と同等の重さの重石をする。3日ほどすると表面に茶色の水があがってくる。そのまま数週間漬け込んだ後、取り出してほぐし、筵などに広げて2日前後天日乾燥し、最後に小枝や異物を取り除く。 石鎚黒茶と同様に黴付けと漬け込みという二段発酵を行う発酵茶に、高知県長岡郡大豊町に伝承される碁石茶と呼ばれる発酵茶もある。高知県北部の標高400m前後の山間部で、7月から8月にかけて造られる。かつては家ごとに造ったが、現在は組合が中心となって製造している。その起源は詳らかでないが、自家消費というよりは、もっぱら茶粥の材料として瀬戸内方面に出荷された。製造工程の最後に茶葉を小さな塊にして天日乾燥させることから碁石茶の名がある。 (※解説は選択当時のものをもとにしています)