国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
琴ノ浦温山荘庭園
ふりがな
:
ことのうらおんざんそうていえん
琴ノ浦温山荘庭園(西池)
写真一覧▶
地図表示▶
解説表示▶
種別1
:
名勝
種別2
:
時代
:
近代
年代
:
西暦
:
面積
:
46554.57 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
13
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2010.02.22(平成22.02.22)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
一.公園、庭園
所在都道府県
:
和歌山県
所在地(市区町村)
:
和歌山県海南市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
琴ノ浦温山荘庭園(西池)
解説文:
詳細解説
紀淡海峡に臨む新田(にった)長(ちょう)治郎(じろう)(1857~1936)の別荘の庭園。2つの潮入(しおいり)の池泉から成り、矢ノ島の岩盤と海浜の俯瞰を別荘の風致景観の構成に取り入れたことをはじめ、青石やコンクリート製の擬石・擬木の素材を多用した独特の技法がみられる点に特質が見られる。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
琴ノ浦温山荘庭園(西池)
琴ノ浦温山荘庭園(東池)
写真一覧
琴ノ浦温山荘庭園(西池)
写真一覧
琴ノ浦温山荘庭園(東池)
Loading
Zeom Level
Zoom Mode
解説文
紀淡海峡に臨む新田(にった)長(ちょう)治郎(じろう)(1857~1936)の別荘の庭園。2つの潮入(しおいり)の池泉から成り、矢ノ島の岩盤と海浜の俯瞰を別荘の風致景観の構成に取り入れたことをはじめ、青石やコンクリート製の擬石・擬木の素材を多用した独特の技法がみられる点に特質が見られる。
詳細解説▶
詳細解説
和歌浦の片男波海岸の南端からさらに約1.5km南の海岸は、紀淡海峡に臨んでリアス式海岸を形成している。その入り江のひとつである黒江湾の北岸には、大正初期から昭和初期にかけて、製革業で財を成した新田長治郎(1857~1936)の別荘である琴ノ浦温山荘がある。その名は、東郷平八郎(1847~1934)が長治郎の求めに応じて、地名であった「琴ノ浦」と長治郎の雅号であった「温山」から命名したとされる。 大正元年(1912)、長治郎は54歳のときに山海の風光と眺望に富んだこの地に別荘の敷地を買い求め、多忙な会社経営の傍ら海面を埋め立て、隣地を買い足して敷地の拡張に努めた。さらに、自らの保養と趣味を兼ねて、主屋とその附属屋、茶室、浜座敷などの建築をはじめ、主屋の西と東に池泉を中心とする庭園を順次築造し、昭和初期にほぼ完成するまで随所に手を加えていった。 琴ノ浦温山荘の庭園には、立地を活かした様々な工夫が見られる。第一の工夫は、陸繋島であった矢ノ島と陸地との間を埋め立て、その南辺中央部と東南隅部から海水を導き入れる給水管を園内に埋設し、2つの潮入の池泉を造成したことである。池泉の水面は潮の干満により上下し、水面に映る岸辺の岩影や緑陰に微妙な襞を形成した。 第二の工夫は、矢ノ島の岩盤に庭園から海浜へと通ずる隧道を開削し、東麓に展開する人工的な池泉庭園の風景と西麓の自然の海浜の風致とを結合したことである。さらに、矢ノ島の頂上へ通ずる小径を拓き、池泉と海浜の対比する俯瞰を別荘の風致景観の構成に取り入れた。 第三は、池泉の護岸石組、沢渡りの飛石、石橋をはじめとして、紀州に特有の青石と呼ぶ緑色片岩の巨石や乳白色の花崗岩を用いた華やかな意匠が見られることである。特に主屋西側の池泉には、中島に架かる石橋や沢渡りの飛石に大振りの青石が用いられている。 第四の工夫は、コンクリート製の擬石・擬木の素材を多用した独特の技法がみられることである。特に、主屋の東の池泉西岸から北岸にかけての汀線付近の石組、東岸に建てられた茶室の鏡花亭周辺の飛石には、自然石の外側にセメント・モルタルを施して、原石よりもひとまわり大きく、さらに自然の石らしく仕上げた擬石の技法が多用されている。また、池泉に架かる橋及びその欄干、池中に設けられた給排水施設の魚止めには木材に似せて造られたコンクリート製の擬木が多用されているほか、セメント・モルタルを用いて飛石と寄石敷を織り交ぜた園路の意匠・技法も随所に見られる。長治郎は、セメント・モルタルを用いた擬石の試作を繰り返し、この庭園の造作に活かす工夫を行ったことが知られる。 以上のように、琴ノ浦温山荘庭園は、大正時代から昭和初期にかけて日本庭園に共通する巨石を用いた時代的特質を認めるのみならず、潮入の池泉に擬石・擬木などを多用した独特の意匠・構造・技法が見られ、その芸術上・観賞上の価値は高い。よって名勝に指定し、その保護を図ろうとするものである。