国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
杉本氏庭園
ふりがな
:
すぎもとしていえん
座敷庭
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種別1
:
名勝
種別2
:
時代
:
近代
年代
:
西暦
:
面積
:
811.81 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
12
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2011.02.07(平成23.02.07)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
一.公園、庭園
所在都道府県
:
京都府
所在地(市区町村)
:
京都府京都市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
座敷庭
解説文:
詳細解説
明治3年(1870)に上棟し、大正時代にかけて完成した伝統的な京町家の庭園。洗(あら)い庭(にわ)・通(とお)り庭(にわ)などの生活・生業の空間とも一連の機能的な連続性を保ちつつ、建築に囲まれた狭小な空間に座敷庭(ざしきにわ)・仏間(ぶつま)庭(にわ)・露地(ろじ)を配置するなど、接客のための芸術性に富んだ優秀な造園意匠が認められ、芸術上・観賞所の価値は高い。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
座敷庭
露地
西通り庭
仏間庭
写真一覧
座敷庭
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露地
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西通り庭
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仏間庭
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解説文
明治3年(1870)に上棟し、大正時代にかけて完成した伝統的な京町家の庭園。洗(あら)い庭(にわ)・通(とお)り庭(にわ)などの生活・生業の空間とも一連の機能的な連続性を保ちつつ、建築に囲まれた狭小な空間に座敷庭(ざしきにわ)・仏間(ぶつま)庭(にわ)・露地(ろじ)を配置するなど、接客のための芸術性に富んだ優秀な造園意匠が認められ、芸術上・観賞所の価値は高い。
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詳細解説
京都下京の綾小路(あやのこうじ)新町(しんまち)に所在する杉本氏庭園は、伝統的な京町家の庭園の一つである。元治(げんじ)元年(1864)の大火によって罹災した後、明治3年(1870)に建築が上棟し、その後、順次増改築を経て、大正時代にかけて建築・庭園の全容が完成した。 杉本氏は、寛(かん)保(ぽう)3年(1743)に呉服商「奈良屋」として四条烏丸に創業し、明和4年(1767)に現在の地に移転した。その後、下総方面に販路を拡大しつつ、明治42年(1909)に開設した千葉の店舗を昭和5年(1930)に百貨店に改めたのを契機として、京本店を専用住宅へと転用した。 主屋は綾小路通に南面し、正面中央に開く「店庭(みせにわ)」から「玄関庭(げんかんにわ)」・「台所庭(だいどころにわ)」を経て、奥の一群の蔵に面する「西洗(あら)い庭(にわ)」、主屋西側の「露地(ろじ)」にも通ずる「西通(とお)り庭(にわ)」に至るまで、通風・採光など日常の生活・生業上の目的とも密接に関係しつつ、土間・石敷から成る通路状の空間が屋内から屋外へと機能的に連続する。 また、奥座敷に北面する「座敷庭(ざしきにわ)」は、クロモジ垣や四つ目垣で囲まれた東西3間半、南北約3間の不整方形を成し、モッコク・アラカシ・ネズミモチ・カゴノキなどの緑樹とクチナシなどの花木の樹間から陽光が差し入る穏やかな雰囲気の庭である。座敷縁先の沓(くつ)脱石(ぬぎいし)から大きな伽藍礎石(そせき)を象った踏分(ふみわけ)石(いし)を介して北面する庭門(ていもん)へと飛石が打たれ、縁先の手水鉢及び2基の燈籠などの景物が、さほど広くはない空間に程よく配置されている。 「座敷庭」の東に接し、三畳の間に北面して、石敷き等により舗装され、シュロチクをあしらった「旧(きゅう)坪(つぼ)庭(にわ)」がある。この空間は、もともと北辺を今は無き土蔵、東辺を三畳の間の縁側から矩(かね)折(お)れに土蔵へと延びる板敷きの廊下、西辺を「座敷庭」東面の塀により、それぞれ区画された坪庭であった。 仏間と仏間前室の北側には、南北1間、東西2間の狭小な「仏間(ぶつま)庭(にわ)」がある。軒先を三和土(たたき)仕上げとし、その北側には青(せい)海(かい)波(は)を象って黒色の扁平な円礫を敷き詰め、西に寄せて円形の水盤のみが置かれている。東辺は北側の厠へと通ずる延段(のべだん)の通路となっており、「仏間庭」とともに矩(かね)折(お)れに延びる空間の全体は、一木一(いちぼくいっ)草(そう)をも拒む極めて意匠性の高い造園空間を成す。 主屋西側の「露地(ろじ)」は仏間の南に位置する茶室の庭で、仏間の南西隅部から西へと延びる松明(たいまつ)垣(がき)、その中央に設けられた庭門、敷地西端に設けられた雪隠(せっちん)により、南半部と北半部に分かたれる。茶室の躙(にじ)り口をはじめ、その西南に接する八畳の間の縁先及び南端の引戸に向かって飛石が縦横に打たれ、蹲踞(つくばい)・井戸囲い、2基の燈籠などが配置されている。明治時代後期から昭和時代初期にかけて進んだ建築の増改築に伴い、露地の改変も行われたことが窺える。 このように、杉本氏庭園には、「店庭」・「玄関庭」・「台所庭」・「洗い庭」・「通り庭」などの生活・生業のための空間とも機能的な連続性を保ちつつ、主屋に囲まれた狭小な空間に「座敷庭」・「仏間庭」・「露地」を配置するなど接客のための芸術性に富んだ優秀な造園意匠が認められる。それは伝統的な京町家に見られる空間配置及び意匠を表す代表的・典型的な事例の一つであり、その芸術上・観賞上の価値は高い。よって、名勝に指定し、保護しようとするものである。