国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
平糠のイヌブナ自然林
ふりがな
:
ひらぬかのいぬぶなしぜんりん
イヌブナと林内の様子
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
550600.0 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
特別区分
:
指定年月日
:
2011.09.21(平成23.09.21)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
(二)代表的原始林、稀有の森林植物相
所在都道府県
:
岩手県
所在地(市区町村)
:
岩手県二戸郡一戸町
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
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管理団体・管理責任者名
:
イヌブナと林内の様子
解説文:
詳細解説
対象は北限域に良好に残されたイヌブナを含む自然林である。イヌブナは太平洋側を中心にブナよりやや低い地域に分布する代表的樹種で、平成4年に報告された新たな北限域内で最も規模が大きく、典型的な群落で、学術的価値も高い貴重な森林である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
イヌブナと林内の様子
斜面中部のイヌブナ巨木
写真一覧
イヌブナと林内の様子
写真一覧
斜面中部のイヌブナ巨木
解説文
対象は北限域に良好に残されたイヌブナを含む自然林である。イヌブナは太平洋側を中心にブナよりやや低い地域に分布する代表的樹種で、平成4年に報告された新たな北限域内で最も規模が大きく、典型的な群落で、学術的価値も高い貴重な森林である。
詳細解説▶
詳細解説
指定対象は北限域のイヌブナ自然林で、対象地は岩手県北部一戸町の南東端、葛巻町との境に近い位置にある。太平洋に向かって北流する馬淵川の支流である平糠川右岸に流入する小支流の左岸にあたる。標高673mのピークから北西に延びる尾根筋から沢筋までの北東に面した斜面となり、標高は400~670mほどである。 対象地域は北上山地の北西部に位置している。北上山地は全体として第三紀の浸食平坦面により構成され緩傾斜となっているものの、谷筋は氷期の浸食作用を受け急峻な地形となり、尾根筋は比較的傾斜が緩やかであるが、斜面は傾斜が30°以上の急傾斜地が多い。イヌブナはこのような急傾斜の斜面下部・中部の適潤な崩積土上に多く生育し、緩傾斜の尾根筋や斜面上部のやや乾燥する残積土上ではブナが多く見られる。地質としては、古生代から中生代の各種付加体により構成されている。 対象となるイヌブナはブナ科ブナ属の落葉高木で、樹高25m、胸高直径70cmに達し、しばしば株立ちをする。同属で山地帯(冷温帯)の優占種となるブナはほとんど株立ちをせず、同じ属でともに日本固有であるが、系統的にはかなり離れている。イヌブナは本州(岩手以南)・四国・九州(宮崎以北)の主に太平洋側に分布し、ブナとも混交するが、ブナより多少標高が低い地域に分布し、シデ類やコナラなどの落葉広葉樹やモミ・ツガなどの温帯性針葉樹と混交することも多い。イヌブナは、シイ・カシ類を中心とした暖温帯林とブナが優占する冷温帯林との間の温帯中間域に成立する森林の主要な構成種の一つである。イヌブナ林の主な立地としては比較的土壌の浅い山地斜面で、急傾斜地ではモミ・ツガなどと多く混交し、標高のやや高い緩傾斜地などではブナの割合が多くなる。 イヌブナの北限はかつて岩手県花巻市と宮古市を結ぶ線とされていた。しかし、昭和57年頃から一戸町史編纂にあたり、地元調査員が調査した結果、イヌブナを確認し町史に掲載した。その後、石巻専修大学の石塚和雄教授らが調査を行い、一戸町・葛巻町で新たなイヌブナの分布地を確認し、平成4年に論文として報告した。これにより、これまでの北限より約70km北が北限として確定され、それより北では確認されていない。分布地の多くは単木状であるが、3ヶ所では群落を形成していることが明らかにされた。 指定対象地域は北限地域の中で、もっとも面積的に広く、良好な環境が残された地域である。周辺地域は一度伐採された後に再生した二次林が多く、指定地内でも斜面中下部の河川沿いには小径木が多く、二次林的な要素が強い。一方、斜面中部か尾根筋にかけては、大径木も点々と見られ、斜面下部より人為による影響が少ない。斜面下部ではイヌブナとともに、トチノキ、ケヤキ、シナノキ、サワシバなどが混生する。斜面中上部でイヌブナが多くなり、ミズナラ、ウダイカンバなどが混生する。尾根筋になるとイヌブナは少なくなり、ブナ、ミズナラが多く、岩が露出するような場所ではアカマツが出現する。 このように、新たな北限域のイヌブナ林として良好な状態で残された自然林であり、学術的価値も高いことから、天然記念物に指定し保護を図ろうとするものである。