国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
小野川の阿蘇4火砕流堆積物及び埋没樹木群
ふりがな
:
おのがわのあそよんかさいりゅうたいせきぶつおよびまいぼつじゅもくぐん
火砕流に取り込まれた樹木
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
4091.61 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
特別区分
:
指定年月日
:
2011.09.21(平成23.09.21)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
(一)岩石、鉱物及び化石の産出状態,(十)硫気孔及び火山活動によるもの
所在都道府県
:
大分県
所在地(市区町村)
:
大分県日田市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
火砕流に取り込まれた樹木
解説文:
詳細解説
阿蘇4火砕流は,およそ9万年前に起こった阿蘇火山最大の噴火の際に流出した火砕流で,北部九州に壊滅的なダメージを与えた。日田市小野川沿いでは,火砕流でなぎ倒された樹木群が大量に発見されたほか,詳細な地層の調査から,阿蘇火砕流のメカニズムについて,より詳細な復元が可能となった。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
火砕流に取り込まれた樹木
空撮(南から)
堆積物
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火砕流に取り込まれた樹木
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空撮(南から)
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堆積物
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解説文
阿蘇4火砕流は,およそ9万年前に起こった阿蘇火山最大の噴火の際に流出した火砕流で,北部九州に壊滅的なダメージを与えた。日田市小野川沿いでは,火砕流でなぎ倒された樹木群が大量に発見されたほか,詳細な地層の調査から,阿蘇火砕流のメカニズムについて,より詳細な復元が可能となった。
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詳細解説
阿蘇火山は、九州の中部にある世界有数のカルデラ火山である。なかでも阿蘇4火砕流の流出は,阿蘇火山最大の噴火であり,火砕流は山口県萩市まで到達しており,火山灰は遠く北海道東部まで飛散している。 大分県日田市小野川沿いに(以下「小野川」と呼ぶ),この阿蘇4火砕流堆積物と火砕流になぎ倒されて取り込まれた樹木化石が,良好に産出することが最近の調査で明らかになった。このような例は,佐賀県上峰町の八藤遺跡(以下「八藤遺跡」と呼ぶ)での発見に次ぐ2例目である。 日田地域に分布する阿蘇4火砕流堆積物は,岩相などの違いにより下位より阿蘇4-Ⅰ~Ⅳの4つのユニットに分けられる。小野川の阿蘇4火砕流堆積物は,このユニットのうち阿蘇4-Ⅰに対応し,日田地域の阿蘇4火砕流堆積物の最下部の層相を示すものとされる。 小野川で発見された阿蘇4火砕流堆積物を含む地層は,堆積した順にO-ⅠからO-Ⅴの5つに分けられる。O-Ⅰは,火砕流が流れる以前の地表面を構成していた当時の河床礫堆積物。O-Ⅱが阿蘇4火砕流堆積物で,O-Ⅰ-a~O-Ⅰ-eの5つに細分される。O-Ⅲは,火山泥流の堆積物(ラハール堆積物),O-Ⅳは,土石流堆積物,O-Ⅴは,現小野川河床に続く河床礫堆積物となる。埋没樹木群は,O-Ⅱ-d層の上部に集中する。 また埋没樹木については、八藤遺跡(天然記念物「八藤丘陵の阿蘇4火砕流堆積部及び埋没林」)ではヒメバラモミを主体としたトウヒ属を中心にブナ属やカエデ類などが発見されており、小野川ではトウヒ属やヒノキ科、スギを主体とする針葉樹が優先する。さらに埋没樹木群は、八藤遺跡が現位置をとどめた「現地性化石」に対し、小野川は二次堆積による「異地性化石」であり、樹木断面は前者は原形を保ち、後者は大きく変形している。これは,噴火口からの距離(小野川が40キロメートル,八藤遺跡が70㎞)に応じた阿蘇4火砕流による衝撃の強さの違いによるものと考えられる。 樹木化石の最外年輪の形成状況から,火砕流の発生時期は,樹木の生育の停止期間である,晩秋から晩春にかけての時期であることが推定されているが,これは,八藤遺跡での分析結果と矛盾しない。また、花粉分析から,小野川では絶滅したフウ属の花粉が発見されている。 小野川での,阿蘇4火砕流堆積物の堆積の仕方は次のとおりと推定される。現在の小野川に近い礫床河川に,南方から流下の途中で森林を破壊した火砕サージが流れ込む(O-Ⅱ-a及びb)。このうち一部は溶結凝灰岩となる(O-Ⅱ-b)。続いて火砕流本体が到達し,組成は上部に向かって火山灰から軽石質に変化してゆき(O-Ⅱ-c及びd),最上部に樹木群が堆積する。樹木群の周辺では,火砕流の熱で炭化が進行する。ガス抜けと共に細粒の火山灰が流出し,軽石や岩片など粗粒部分が残る(O-Ⅱ-e)。周辺に堆積した火砕流堆積物が火山泥流となって堆積する(O-Ⅲ)。火山岩や溶結凝灰岩の巨礫を含む土石流堆積物が堆積する(O-Ⅳ)。現在の小野川に連なる河床礫が堆積する(O-Ⅴ)。 このように小野川では,火砕流の堆積の詳細と噴火後の泥流や土石流の発生という阿蘇4火砕流堆積物の堆積の詳細が観察され,火山国日本においても最大級の火山噴火について多くの新たな知見が得られている。天然記念物に指定し,保護を図ろうとするものである。