国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
猪崎鼻の堆積構造
ふりがな
:
いざきばなのたいせきこうぞう
猪崎鼻の堆積構造(猪崎鼻の遠景)
写真一覧▶
地図表示▶
解説表示▶
種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
5228.0 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
32
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2014.03.18(平成26.03.18)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
所在都道府県
:
宮崎県
所在地(市区町村)
:
宮崎県日南市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
猪崎鼻の堆積構造(猪崎鼻の遠景)
解説文:
詳細解説
猪崎鼻は,宮崎県南部の日南市にある日向灘に突き出した小さな岬である。ここには,今からおよそ4000~2200万年前に,海溝から大陸斜面にかけての深海域に堆積し,海洋プレートの沈み込みに伴って付加された日南層群(にちなんそうぐん)とよばれる砂岩泥岩互層が露出する。猪崎鼻ではことに,混濁流といわれる,地震などをきっかけに海底を流れ下る高密度の流れから堆積した地層に特徴的な堆積構造が典型的に発達するほか,深海底での堆積環境を示す様々な生痕化石や,海底地滑りに伴うスランプの構造もみられる。堆積構造の研究は,地質学そのものの歴史と同じ位,古くから行われてきた分野であり,堆積岩は,地史を編む際に欠かせない重要な情報源である。猪崎鼻の多種多様な堆積構造・生痕化石は,このような日本列島の生い立ち(地史)に関する重要な情報である堆積構造が典型的に発達することに加え,堆積時の古環境や堆積の仕組みを知る場所として大変貴重な場所である。特に,砂岩層の底面にみられるフルートキャストの規模と保存の良さ,美しさは他に類をみない。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
猪崎鼻の堆積構造(猪崎鼻の遠景)
猪崎鼻の堆積構造(フルートキャスト)
猪崎鼻の堆積構造(生痕化石)
写真一覧
猪崎鼻の堆積構造(猪崎鼻の遠景)
写真一覧
猪崎鼻の堆積構造(フルートキャスト)
写真一覧
猪崎鼻の堆積構造(生痕化石)
Loading
Zeom Level
Zoom Mode
解説文
猪崎鼻は,宮崎県南部の日南市にある日向灘に突き出した小さな岬である。ここには,今からおよそ4000~2200万年前に,海溝から大陸斜面にかけての深海域に堆積し,海洋プレートの沈み込みに伴って付加された日南層群(にちなんそうぐん)とよばれる砂岩泥岩互層が露出する。猪崎鼻ではことに,混濁流といわれる,地震などをきっかけに海底を流れ下る高密度の流れから堆積した地層に特徴的な堆積構造が典型的に発達するほか,深海底での堆積環境を示す様々な生痕化石や,海底地滑りに伴うスランプの構造もみられる。堆積構造の研究は,地質学そのものの歴史と同じ位,古くから行われてきた分野であり,堆積岩は,地史を編む際に欠かせない重要な情報源である。猪崎鼻の多種多様な堆積構造・生痕化石は,このような日本列島の生い立ち(地史)に関する重要な情報である堆積構造が典型的に発達することに加え,堆積時の古環境や堆積の仕組みを知る場所として大変貴重な場所である。特に,砂岩層の底面にみられるフルートキャストの規模と保存の良さ,美しさは他に類をみない。
詳細解説▶
詳細解説
猪崎鼻(いざきばな)は、宮崎県日南市の重要港湾である油津港(あぶらつこう)の南に位置する、東西約800m、南北約400mの日向灘(ひゅうがなだ)に突き出した小さな岬である。岬の周りは、海面からの比高10~20mほどの海食崖になっている。この崖には、今からおよそ4000~2200万年前に、海溝(かいこう)から海溝(かいこう)斜面(しゃめん)にかけての深海域に堆積し、海洋プレートの沈み込みに伴って付加された日南層群(にちなんそうぐん)とよばれる砂岩泥岩(さがんでいがん)互層(ごそう)が露出する。日南層群の地層は、堆積後の構造運動ないしは、大規模な海底(かいてい)地滑(じすべ)りなどにより、巨大な堆積岩のブロックに分かれており、猪崎鼻に見られる地層もこうした巨大なブロックのいくつかとされている。 砂岩などの堆積岩には、様々な履歴が堆積構造として残される。まず、堆積物が水流などにより運搬され堆積される際の密度や流速を反映した構造、次に、堆積直後、堆積(たいせき)粒子(りゅうし)間に含まれた多量の水分を排除してより、固結した状態になろうとする際にできる構造がある。そして岩石として固まってゆく過程で作られる構造があり、こうした様々な構造は、堆積構造とよばれ、堆積岩が形成された条件を知る上で重要な記録となる。 猪崎鼻ではことに、混濁流(こんだくりゅう)(turbidity current)といわれる、地震などをきっかけに海底を流れ下る高密度の流れから堆積した地層に特徴的な堆積構造が典型的に発達するほか、深海底での堆積環境を示す様々な生(せい)痕(こん)化石(かせき)や、海底地滑りに伴うスランプ構造も見られる。 猪崎鼻で見られる堆積構造の主なものとしては、以下のものがある。 (1)混濁流堆積物(turbidite) 混濁流堆積物に特徴的な一連の堆積構造(Bouma Sequence)がみられる。下位から級化層(きゅうかそう)理(り)、平行(へいこう)葉(よう)理(り)、コンボリュート葉理、リップル葉理、平行葉理という規則的な堆積構造の変化を示す。 (2)フルートキャスト(flute cast)・グルーブキャスト(gloove cast) 混濁流が海底の泥を削りながら流れ下る際にできる渦状(うずじょう)ないしは溝状の凹みを砂の地層が埋めたもの。砂岩層の底面に観察できることから一括して底痕(sole markings)とよばれる。 (3)荷重(かじゅう)痕(こん)(load cast) 未固結(みこけつ)の泥層の上に砂層が堆積した際に、密度差により境界が不安定となり、砂層が下位の泥層の中にめり込んだ構造。上述のフルートキャストが荷重痕に変化する場合や、荷重痕がさらに進行して、ボールアンドピロー構造(ball and pillow structure)となる場合もある。 (4)皿状(さらじょう)構造(こうぞう)(dish structure) 堆積直後の未固結の砂層が、粒子間(りゅうしかん)の水分を上方へ排出してより安定的な構造となるための水分の通り道の痕跡で、皿のような断面形態を示す。上方に向かって次第に皿の底が深くなってゆき、ピラー構造(pillar structure)へと変化する場合がある。 (5)コンボリュート構造(convolute structure) 皿状構造の上方にみられることが多い。未固結の砂層が流動化して複雑に変形したもの。堆積直後に下方から排出された水流によって層理が乱れてできる。 (6)ロート状構造(funnel structure)・ベント構造(vent structure) 下位の堆積直後の未固結の砂層の排水にともない、上位の地層を突き破ってできる構造。逆円錐状(ぎゃくえんすいじょう)の断面形態を示す。流体(りゅうたい)噴出(ふんしゅつ)構造(こうぞう)として一括される。ベント構造の方がより規模が大きい。 (7)砕屑(さいせつ)岩脈(がんみゃく)(clastic dyke) 未固結時に砂層から下位ないしは、上位の泥層に砂層が注入したもの。 (8)スランプ構造(slump structure) 海底での地滑りなどに伴い、地層の一部が褶曲したり滑ったりするもの。変動が著しい場合は、元の地層の形態が破壊され、礫状になる場合もある。 (9)生痕化石 猪崎鼻で見られる生痕化石は、深海の環境を示唆するもので、保存状態が良い。 堆積構造の研究は、地質学そのものの歴史と同じ位、古くから行われてきた分野であり、地史を編む際に欠かせない堆積岩からの重要な情報源である。猪崎鼻の多種多様な堆積構造・生痕化石は、このような日本列島の形成過程(地史)に関する重要な情報である堆積構造が典型的に発達することに加え、堆積時の古環境や堆積の仕組みを知る場所として大変貴重な場所である。特に、砂岩層の底面にみられるフルートキャストの規模と保存の良さ、美しさは他に類をみない。