国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落
ふりがな
:
きかいじまのりゅうきさんごしょうじょうしょくぶつぐんらく
喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(荒木海岸から見た風景)
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
179400.88 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
32
特別区分
:
特別以外
指定年月日
:
2014.03.18(平成26.03.18)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
所在都道府県
:
鹿児島県
所在地(市区町村)
:
鹿児島県大島郡喜界町
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(荒木海岸から見た風景)
解説文:
詳細解説
喜界島は奄美大島の東に位置する南北12.5km,東西5.5kmの楕円形の島で,地形は平坦で琉球石灰岩の段丘により構成されている。島の周囲はサンゴ礁に縁取られ,北限域にあたる完新世の隆起サンゴ礁が広がっている。
対象地域は喜界島の南西部にある荒木海岸である。喜界島では汀線(ていせん)から標高約20mの台地までの間に広い隆起サンゴ礁の段丘が形成されている。汀線の飛沫帯(ひまつたい)から標高約5mまでに,点々と植物が分布する群落から矮性低木群落(わいせいていぼくぐんらく)などの隆起サンゴ礁上植物群落が展開されている。それ以上の高さでは風衝(ふうしょう)低木林となり,台地付近には沿岸地の樹林が残されており,連続的な植生の帯状分布が良好に見られる。
隆起サンゴ礁地域は平坦地のため人為的な改変されることが多く,かつて園芸目的での植物の盗掘が頻発していた。喜界町では,地域の自然の重要性から,昭和48年6月に鹿児島県内で最も早く喜界町自然保護条例を制定し,開発を規制,海岸植物等の保護を行っている。
対象地域は,隆起サンゴ礁の北限域にありながら,海岸植生から沿岸地樹林まで連続して残されており,面積も広く多様性の高い植物群落として貴重な地域である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(荒木海岸から見た風景)
喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(隆起珊瑚礁)
喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(展望台から見た風衝低木林)
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喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(荒木海岸から見た風景)
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喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(隆起珊瑚礁)
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喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落(展望台から見た風衝低木林)
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解説文
喜界島は奄美大島の東に位置する南北12.5km,東西5.5kmの楕円形の島で,地形は平坦で琉球石灰岩の段丘により構成されている。島の周囲はサンゴ礁に縁取られ,北限域にあたる完新世の隆起サンゴ礁が広がっている。 対象地域は喜界島の南西部にある荒木海岸である。喜界島では汀線(ていせん)から標高約20mの台地までの間に広い隆起サンゴ礁の段丘が形成されている。汀線の飛沫帯(ひまつたい)から標高約5mまでに,点々と植物が分布する群落から矮性低木群落(わいせいていぼくぐんらく)などの隆起サンゴ礁上植物群落が展開されている。それ以上の高さでは風衝(ふうしょう)低木林となり,台地付近には沿岸地の樹林が残されており,連続的な植生の帯状分布が良好に見られる。 隆起サンゴ礁地域は平坦地のため人為的な改変されることが多く,かつて園芸目的での植物の盗掘が頻発していた。喜界町では,地域の自然の重要性から,昭和48年6月に鹿児島県内で最も早く喜界町自然保護条例を制定し,開発を規制,海岸植物等の保護を行っている。 対象地域は,隆起サンゴ礁の北限域にありながら,海岸植生から沿岸地樹林まで連続して残されており,面積も広く多様性の高い植物群落として貴重な地域である。
詳細解説▶
詳細解説
対象は隆起サンゴ礁の上に発達する海岸植生(かいがんしょくせい)から沿岸地樹林(えんがんちじゅりん)までである。本地域は隆起サンゴ礁植生の北限域であるが、面積が広く多様な植生が発達し、飛沫帯(ひまつたい)の無植生域から石灰岩地帯の沿岸地に発達する樹林までの連続的な植生の帯状分布(たいじょうぶんぷ)が見られる。 喜界島は鹿児島港から南へ約380km、奄美大島の東方23kmにある南北12.5km、東西5.5kmの長い楕円形の島で、行政区は大島郡喜界町である。地形は平坦で石灰岩の段丘(だんきゅう)により構成され、島の最高地点は東側中部にある百之台(ひゃくのだい)の214mである。基盤は新第三紀層(しんだいさんきそう)に属する島尻層群(しまじりそうぐん)で、その上を厚さ60mに達する第四紀更新世(だいよんきこうしんせい)の琉球石灰岩が覆っており、島の周囲にはサンゴ礁が発達している。喜界島は南西諸島で最大の隆起速度を示し、汀線から標高約20mの台地までの間にいくつかの段丘により構成された完新世の広い隆起サンゴ礁が発達している。 対象地域は島の南西部にある荒木海岸(あらきかいがん)である。荒木海岸のサンゴ礁段丘は標高約5m付近が広く平坦になっており、この付近まではほとんど未風化の新しい隆起サンゴ礁が続き、平坦面に続く斜面や台地はより古い時期の隆起サンゴ礁で構成されている。隆起サンゴ礁上の植物群落は標高約5mまで展開し、それ以上の高さでは風衝低木林(ふうしょうていぼくりん)、台地付近には沿岸地の高木林が分布している。 対象範囲は荒木海岸から中里海岸(なかざとかいがん)に続く地域の汀線に沿った長さ約2km、汀線からの距離約100mの範囲である。この地域は汀線付近に砂地がなく隆起サンゴ礁が立ち上がっているため、植生帯最前線のイソマツ-モクビャッコウ群集はあまり発達せず、ミズガンピ群落も広がりは少ない。一方、テラス状になった隆起サンゴ礁上は風化が進まず乾燥も著しいため、矮性低木林のハリツルマサキ-テンノウメ群集が広がり、テンノウメの個体群密度が高い。その後背地にはモンパノキ-クサトベラ群集が広がる。さらにモンパノキ-クサトベラ群集の背後にアダン群集が続くが、面積は狭く、風衝低木林のアカテツ-ハマビワ群集につながる。アカテツ-ハマビワ群集は風衝の強いところでは群落高が低く構成種数も少ないが、風が穏やかになるにつれ群落高も高くなる。さらに適潤(てきじゅん)あるいは湿潤(しつじゅん)な環境ではガジュマル-ハマイヌビワ群落が発達する。群落高が高くなったアカテツ-ハマビワ群集、ガジュマル-ハマイヌビワ群落に続いて、一部ではタブノキ群落に推移し、耕作地に接する。 隆起サンゴ礁は平坦地のため、耕作地等人為的な改変を強く受けることが多い。また、隆起サンゴ礁上の植物であるテンノウメ、イソマツ、ハリツルマサキ、モンパノキ等はかつて盆栽等の園芸目的で根こそぎ採取され、多くの地域で減少し、絶滅危惧植物にも掲載されている。喜界町でもかつて園芸目的による盗掘が頻発する時期があり、地域の自然の重要性から、昭和48年6月に鹿児島県内で最も早く喜界町自然保護条例を制定し、開発を規制して海岸植物等の保護を行ってきた。 隆起サンゴ礁上植物群落は亜熱帯から熱帯に分布する代表的な海岸植生であり、対象地は地元で条例等により開発を規制、保護してきた地域である。北限域にありながら面積が広く、多様な植物群落が発達し、学術的に貴重である。よって、天然記念物に指定し、保護を図るものである。