国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
オオヨドカワゴロモ自生地
ふりがな
:
おおよどかわごろもじせいち
オオヨドカワゴロモ自生地(近景)
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
82262.15 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
29
特別区分
:
指定年月日
:
2016.03.01(平成28.03.01)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
所在都道府県
:
宮崎県
所在地(市区町村)
:
宮崎県小林市
保管施設の名称
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所有者種別
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所有者名
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管理団体・管理責任者名
:
オオヨドカワゴロモ自生地(近景)
解説文:
詳細解説
オオヨドカワゴロモはカワゴケソウ科カワゴロモ属に属する水生植物である。カワゴケソウ科植物は熱帯から亜熱帯地方を中心に分布し,カワゴロモ属はインド以東のアジアに約10種が分布している。タイ・中国南部等に生育が知られているが,フィリピン・台湾には分布せず,日本では鹿児島県と宮崎県南部に4種が隔離分布(かくりぶんぷ)している。この仲間の植物はほとんどが急流の水中に生育し,流水中に適応した特殊な形態に変化し,種子植物であるが形態はコケ類・藻類のようである。根は平たい葉状体(ようじょうたい)となり岩の表面に広がり,葉は小さな針状(しんじょう)で光合成は根から変化した葉状体で行っている。
本種は昭和3年に確認されたものの,平成11年になり新種記載された,岩瀬川(いわせがわ)にのみに生育する固有種(こゆうしゅ)である。日本に生育する同属の種と比較すると,葉状体が多層(たそう)で厚く堅くなることから,捻れたり,捲れ上がることで,非常に粗剛(そごう)で極めてざらつく特徴がある。このような通常の植物とは異なった特異な形態を示し,隔離分布を示す学術的価値が高い植物である。カワゴロモ属の中でも独特の特徴を持ち,北限にあたる良好な生育地として貴重である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
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オオヨドカワゴロモ自生地(近景)
オオヨドカワゴロモ自生地(オオヨドカワゴロモ)
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オオヨドカワゴロモ自生地(近景)
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オオヨドカワゴロモ自生地(オオヨドカワゴロモ)
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解説文
オオヨドカワゴロモはカワゴケソウ科カワゴロモ属に属する水生植物である。カワゴケソウ科植物は熱帯から亜熱帯地方を中心に分布し,カワゴロモ属はインド以東のアジアに約10種が分布している。タイ・中国南部等に生育が知られているが,フィリピン・台湾には分布せず,日本では鹿児島県と宮崎県南部に4種が隔離分布(かくりぶんぷ)している。この仲間の植物はほとんどが急流の水中に生育し,流水中に適応した特殊な形態に変化し,種子植物であるが形態はコケ類・藻類のようである。根は平たい葉状体(ようじょうたい)となり岩の表面に広がり,葉は小さな針状(しんじょう)で光合成は根から変化した葉状体で行っている。 本種は昭和3年に確認されたものの,平成11年になり新種記載された,岩瀬川(いわせがわ)にのみに生育する固有種(こゆうしゅ)である。日本に生育する同属の種と比較すると,葉状体が多層(たそう)で厚く堅くなることから,捻れたり,捲れ上がることで,非常に粗剛(そごう)で極めてざらつく特徴がある。このような通常の植物とは異なった特異な形態を示し,隔離分布を示す学術的価値が高い植物である。カワゴロモ属の中でも独特の特徴を持ち,北限にあたる良好な生育地として貴重である。
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詳細解説
オオヨドカワゴロモ(Hydrobryum koribanum Imamura ex Nakayama & Minamikawa)は昭和3年(1928)に確認されたものの、平成11年(1999)に新種記載(しんしゅきさい)されたカワゴケソウ科カワゴロモ属に属する植物で、大淀川水系(おおよどがわすいけい)の岩瀬川(いわせがわ)のみに生育している固有種(こゆうしゅ)である。カワゴケソウ科植物はすべて水生の被子植物(ひししょくぶつ)で、滝や早瀬(はやせ)の平たい川床の岩上に固着生活(こちゃくせいかつ)するという特異な生態を示している。そのため形態も特異で、根が葉状(ようじょう)に広がり、茎は消失、葉は退化して針状になり、光合成は根から変化した葉状体で行なっている。渇水期(かっすいき)になり、水位が下がり空中にさらされると、葉状体から花芽(はなめ)ができ、開花・結実する。ほとんどが急流の水中に生育し、流水中に適応した多様で特殊な形態に変化しており、被子植物であるが形態はコケ類・藻類(そうるい)のような植物である。 カワゴケソウ科植物は世界の熱帯から亜熱帯地方を中心に47属約270種が分布し、日本ではカワゴケソウ属とカワゴロモ属が分布している。カワゴケソウ属はアジア東部に約7種、カワゴロモ属はインド以東のアジア地域に約10種が知られている。日本での分布は、カワゴケソウ属が鹿児島県の6河川(支流を除く)に2種、カワゴロモ属は鹿児島県の7河川に3種、宮崎県の1河川に1種が知られている。日本周辺では中国南部・タイなどには分布するものの、台湾、フィリピン、韓国などには分布せず、隔離分布(かくりぶんぷ)している。 対象地域は小林市を流れる大淀川支流の一級河川、岩瀬川である。対象範囲は、国道268号線が岩瀬川を越える岩瀬橋の上流200mほどにある旧岩瀬橋付近を上流端として、下流にある岩瀬川とその支流の辻ノ堂川(つじのどうがわ)の合流点までの約3.8kmのうち、九州電力の堰堤(えんてい)周辺を除いた約3.5kmの範囲である。かつては高岡町(たかおかちょう)去川(さるかわ)の山下橋から岩瀬川・大淀川合流地点、野尻町(のじりちょう)岩瀬ダムから椎屋大橋(しいやおおはし)、岩瀬橋支流の辻ノ堂川の阿母ケ平(あぼがひら)温泉周辺にもオオヨドカワゴロモが自生していた。しかし、下流部でのダム建設による環境破壊等により消滅し、現在は対象範囲の間のみに自生している。 自生地周辺は入戸火砕流(いとかさいりゅう)の強溶結部(きょうようけつぶ)である溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)で構成されている。入戸火砕流は2.9万年前の巨大噴火活動で、姶良(あいら)カルデラから地上を放射状に流動して広がり、南九州一帯を広大に覆って堆積した。この種の岩石は南九州に広く分布し、河川の流域において、流水の開析作用(かいせきさよう)によって強溶結部の上面が河床に広く露出し、平坦な岩盤面を形成している。このような河床は日照にも恵まれ、平滑な岩肌に急流が流下し、本種を含むカワゴケソウ科植物の自生地となっている。 オオヨドカワゴロモは、水位が変動する日当たりの良い岩場の急流部、早瀬に生育し、多雨期には水没するが、渇水期になり水位が下がると空中に露出して開花・結実する。日本の同属の他種と比較すると、葉状体が多層で厚く堅くなっており、捻れたり、捲れ上がることから、非常に粗剛(そごう)で極めてざらつく特徴がある。本種はカワゴロモ属の北限の生育地になっている。対象範囲では集中して生育する地点が4地点確認されている。特に旧岩瀬橋から岩瀬橋間の160mは最大の群生地となっており、観察にも適した場所である。年によって水位に変動はあるが、最も水位が下がる1月下旬頃の水面から深さ約50cmまでの岩にパッチ状に広がっている。対象範囲は、川の水流の変動も少なく、最近の観察においても安定して発生が見られる。 オオヨドカワゴロモは環境省及び宮崎県のレッドデータブックに「絶滅危惧ⅠA(CR)」として掲載される希少植物である。宮崎植物研究会は1995年から自生地の清掃活動を実施しており、活動には地元住民も多数参加し、観察を兼ねた恒例の行事として保護活動が浸透している。 このように通常の植物とは異なった特異な形態を示し、隔離分布を示す学術的価値が高い植物である。カワゴロモ属の中でも独特の特徴をもった植物であり、北限にあたる良好な生育地として貴重であることから、天然記念物に指定し保護を図るものである。