国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
ンタナーラのサキシマスオウノキ群落
ふりがな
:
んたなーらのさきしますおうのきぐんらく
ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(下流側の群落)
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種別1
:
天然記念物
種別2
:
時代
:
年代
:
西暦
:
面積
:
183737.72 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
29
特別区分
:
指定年月日
:
2016.03.01(平成28.03.01)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
所在都道府県
:
沖縄県
所在地(市区町村)
:
沖縄県石垣市
保管施設の名称
:
所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(下流側の群落)
解説文:
詳細解説
サキシマスオウノキはアオイ科サキシマスオウノキ属の常緑高木(じょうりょくこうぼく)である。インド洋,太平洋岸の熱帯・亜熱帯地域に広く分布し,日本では奄美大島を北限とし,沖縄島,先島諸島(さきしましょとう)に分布している。果実は外殻(がいかく)につやがあり硬く,内部に空隙(くうげき)の多い構造で水によく浮き,散布様式は潮流散布型(ちょうりゅうさんぷがた)と考えられる。このため,分布は潮汐(ちょうせき)が達する潮間帯(ちょうかんたい)湿地やマングローブ後背林として群落を形成しており,通常は沿岸地に分布する。
対象地域は,石垣島の中央北部に位置する桴海於茂登岳(ふかいおもとだけ)(標高477m)の東麓部(とうろくぶ)から出ているンタナーラ川と呼ばれる河川と, 桴海(ふかい)と宮良(みやら)をつなぐ於茂登(おもと)トンネルの南出口が交わる地域周辺である。サキシマスオウノキ群落は,海岸から9km以上離れ,標高が60~100m の地域に発達している。周辺の尾根筋や斜面のやや乾燥した地域にはケナガエサカキ-スダジイ群集,斜面下部や湿潤な谷部(たにぶ)にはオキナワウラジロガシ群集など山地性の自然林が発達している。サキシマスオウノキは河川沿いの不安定な崩壊地で,常に過湿な環境に群落を形成している。このような海岸から離れた渓流沿いに群落が発達している例は少なく,学術的価値の高いものとして貴重である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(下流側の群落)
ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(ンタナーラ川中流域)
ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(サキシマスオウノキ果実)
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ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(下流側の群落)
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ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(ンタナーラ川中流域)
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ンタナーラのサキシマスオウノキ群落(サキシマスオウノキ果実)
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解説文
サキシマスオウノキはアオイ科サキシマスオウノキ属の常緑高木(じょうりょくこうぼく)である。インド洋,太平洋岸の熱帯・亜熱帯地域に広く分布し,日本では奄美大島を北限とし,沖縄島,先島諸島(さきしましょとう)に分布している。果実は外殻(がいかく)につやがあり硬く,内部に空隙(くうげき)の多い構造で水によく浮き,散布様式は潮流散布型(ちょうりゅうさんぷがた)と考えられる。このため,分布は潮汐(ちょうせき)が達する潮間帯(ちょうかんたい)湿地やマングローブ後背林として群落を形成しており,通常は沿岸地に分布する。 対象地域は,石垣島の中央北部に位置する桴海於茂登岳(ふかいおもとだけ)(標高477m)の東麓部(とうろくぶ)から出ているンタナーラ川と呼ばれる河川と, 桴海(ふかい)と宮良(みやら)をつなぐ於茂登(おもと)トンネルの南出口が交わる地域周辺である。サキシマスオウノキ群落は,海岸から9km以上離れ,標高が60~100m の地域に発達している。周辺の尾根筋や斜面のやや乾燥した地域にはケナガエサカキ-スダジイ群集,斜面下部や湿潤な谷部(たにぶ)にはオキナワウラジロガシ群集など山地性の自然林が発達している。サキシマスオウノキは河川沿いの不安定な崩壊地で,常に過湿な環境に群落を形成している。このような海岸から離れた渓流沿いに群落が発達している例は少なく,学術的価値の高いものとして貴重である。
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詳細解説
指定対象は、山麓部(さんろくぶ)に発達するスダジイやオキナワウラジロガシの自然林とともに、渓流沿い(けいりゅうぞい)に発達したサキシマスオウノキ群落である。 サキシマスオウノキ(Heritiera littoralis Dryand.)はアオイ科、サキシマスオウノキ属の樹高(じゅこう)25m に達する常緑高木(じょうりょくこうぼく)である。この仲間は世界的にインド洋、太平洋岸の熱帯・亜熱帯地域に広く分布しているが、日本ではサキシマスオウノキのみが分布している。日本での分布は奄美大島龍郷町(たつごうちょう)西原(にしはら)を北限として、それ以南の南西諸島の海岸湿地に生育し、板根がよく発達することで知られる。果実は偏平な広(こう)楕円形(だえんけい)あるいは舟底状流線型(ふなぞこじょうりゅうせんけい)で、長径3~6cm、外殻(がいかく)はつやがあって硬く、内部に空隙(くうげき)の多い構造で水によく浮き、種子も直径が3.0~3.8cmと大型である。果実の形状から散布様式は潮流散布(ちょうりゅうさんぷ)に頼ると考えられる。このため、潮汐(ちょうせき)が達する潮間帯(ちょうかんたい)湿地に多く分布し、マングローブ後背林(こうはいりん)として群落を形成しており、通常は沿岸地に生育する。材は耐久性が強く広く利用され、海上の建築用として橋梁材、板材、船の腕木や舵の支持材などを作るのに用いられていた。 対象地域は、石垣島の中央北部に位置する桴海(ふかい)於(お)茂(も)登(と)岳(だけ)(標高477m)の東麓部(とうろくぶ)から出ているンタナーラ川と呼ばれる河川と、県道87号線上の桴(ふ)海(かい)と宮良(みやら)をつなぐ於茂登(おもと)トンネルの南出口が交わる地域周辺である。ンタナーラ川は桴海於茂登岳山系を源としほぼ東進し、南に向きを変え、底原ダムを経由して宮良(みやら)川(がわ)へ合流している。宮良川は石垣島中央部から南へ向かって宮良湾に流れ込む島内最大の河川である。ンタナーラのサキシマスオウノキ群落は、海岸から9km以上離れ、標高が60~100mの地域に発達している。対象範囲はおよそ東西に流れるンタナーラ川に沿った、道路部分を除く南北約200m、東西約900mの範囲で、面積は約18.4haとなる。 対象範囲周辺は桴海於茂登岳山系の山麓部にあたり山地性の自然林がよく発達する。尾根筋や斜面のやや乾燥した地域には山地部を代表するシイ林であるケナガエサカキ-スダジイ群集、斜面下部や湿潤な谷部(たにぶ)にはオキナワウラジロガシ群集、崩壊地(ほうかいち)や改変地(かいへんち)にはヒリュウシダ-ヒカゲヘゴ(モリヘゴ)群集等が見られる。これらは、この地域を代表する典型的でよく発達した自然林である。サキシマスオウノキは河川沿いの小渓流(しょうけいりゅう)流域(りゅういき)の不安定な崩壊地で、湧水(ゆうすい)が地表流(ちひょうりゅう)となって流下するような、常に過湿な環境に群落を形成している。対象範囲内にはこのような群落が5箇所で見られる。それぞれの地点で、大径木(たいけいぼく)から若木、稚樹(ちじゅ)まで見られ、更新していることがうかがわれる。 この渓流地に成立するサキシマスオウノキ群落は天野(あまの)鉄夫(てつお)と前津(まえつ)栄信(えいしん)によって発見・調査され、1981年に発表された。海外では、ジャワ島の南西約300kmにあるクリスマス島で、標高30~70mの台地にサキシマスオウノキ群落が発達していることが1984年に報告されている。その後、西表島(いりおもてじま)ユツン川周辺でも発見されているが、他にはほとんど確認されていない。これらの群落がどのような経緯で発達したかは不明である。人による植栽の可能性も考えられるが、5地点にのうちには岩場のような場所に生育するものもあり、すべて植栽されたとは考えにくい。サキシマスオウノキと同様に潮流散布型種子を持つオキナワキョウチクトウも点々と生育しており、自然分散による成立の可能性も考えられるが詳細は不明である。 対象範囲内には、環境省による第4次レッドリスト(2012)植物Ⅰ(維管束植物)に掲載されている植物9種が確認されている。CR(絶滅危惧IA類)としてホウビカズラ(ヒカゲノカズラ科)、EN(絶滅危惧IB類)としてオオモクセイ(モクセイ科)、クサミズキ(クロタキカズラ科)、VU(絶滅危惧II類)がツルラン、カクチョウラン、バイケイラン(いずれもラン科)、NT(準絶滅危惧)がマツバラン(マツバラン科)、シマオオタニワタリ(チャセンシダ科)、リュウキュウツワブキ(キク科)である。また、沖縄県絶滅危惧II類であるセイシカ、サキシマツツジ(ツツジ科)も見られ、良好な生育環境であることがうかがわれる。 このように、通常は潮汐が達する潮間帯湿地やマングローブ後背林として群落を形成するサキシマスオウノキ群落が、海岸から離れた渓流沿いに発達していることは非常に希少なものであり、周辺の斜面や尾根筋にも山地性の良好な森林が発達しており、学術的価値が高い。よって、天然記念物として指定し、保護を図るものである。