国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
史跡名勝天然記念物
主情報
名称
:
櫻井氏庭園
ふりがな
:
さくらいしていえん
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種別1
:
名勝
種別2
:
時代
:
江戸
年代
:
西暦
:
面積
:
3514.55 m
2
その他参考となるべき事項
:
告示番号
:
特別区分
:
指定年月日
:
2017.10.13(平成29.10.13)
特別指定年月日
:
追加年月日
:
指定基準
:
一.公園、庭園
所在都道府県
:
島根県
所在地(市区町村)
:
島根県仁多郡奥出雲町
保管施設の名称
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所有者種別
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
江戸時代の松江藩鉄(てっ)師(し)頭(とう)取(どり)を務めた櫻井氏の住宅に18世紀以降に造られた庭園。松江藩七代藩主松平治(はる)郷(さと)の来駕(らいが)の際に設えられたと伝わる岩盤斜面を流れ落ちる瀑布の意匠に顕著な特徴を有する。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
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解説文
江戸時代の松江藩鉄(てっ)師(し)頭(とう)取(どり)を務めた櫻井氏の住宅に18世紀以降に造られた庭園。松江藩七代藩主松平治(はる)郷(さと)の来駕(らいが)の際に設えられたと伝わる岩盤斜面を流れ落ちる瀑布の意匠に顕著な特徴を有する。
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詳細解説
櫻井氏庭園は江戸時代の松江藩鉄(てっ)師(し)頭(とう)取(どり)の住宅に造られた庭園である。櫻井氏は江戸時代前期より「可(か)部(べ)屋(や)」の屋号で製鉄業を営み、松江藩の鉄師頭取を務めた。櫻井氏の住宅は広島県と境を接する島根県仁(に)多(た)郡(ぐん)奥(おく)出(いず)雲(も)町(ちょう)の上(かみ)阿(あ)井(い)内(うち)谷(だに)地内に位置する。屋敷地は猿(さる)政(まさ)山(やま)(標高1,267m)の北麓にあたり、斐(ひ)伊(い)川(かわ)の支流である内(うち)谷(だに)川(がわ)を南に見下ろす標高414mの微高地である。 櫻井氏庭園の造営時期を直接記した文書等は今のところ確認されていないが、享和2年(1802)のものと考えられる『壬戌年家相圖』には現在同様主屋の東側に園池が描かれている。園池の形状は現在とは少し異なり、また庭園のその他の部分の様子は描かれていないが、その翌年の享和3年(1803)に松江藩七代藩主松平治(はる)郷(さと)(不(ふ)昧(まい))(1751~1818)が当地を訪れ、岩盤を流れ落ちる瀑布を「岩(がん)浪(ろう)」と名付けて書を残していることから、19世紀の初めには現在の庭園の骨格となる部分は造られていたと考えられる。また、その後の『安政二年家相圖』(1855)には、庭園の様子が詳細に描き込まれており、現況と比べると園池の形や岩盤の様子は当時からほとんど変化していないことがわかる。その後で庭園に手が加えられたのは明治11年(1878)で、櫻井氏の住宅に2年にわたり滞在していた文人画家田(た)能(の)村(むら)直(ちょく)入(にゅう)(1814~1907)が茶亭掬(きく)掃(そう)亭(てい)を建て、ほぼ現在の姿になった。 庭園は主屋(重要文化財)東端に位置する「上の間」からの観賞を主とする。上の間から見て右手方向にある御成門から左に向かって飛石が打たれ、上の間の前で弧を描きながら縁先へとつながる。飛石の向こうには上の間の前で折れ曲がる逆L字形の園池があり、屈曲部分の左側が滝になっている。約16mの高さから岩盤の斜面を流れ落ちる滝は、水量も多く、見る者を圧倒する。前述したように、松江藩主松平治郷はこの滝を「岩浪」と命名し、書を残した。滝の水は庭園の近くを流れる内谷川を溯ったところから引いており、取水地点から滝口までの距離はおよそ500mに及ぶ。植栽はクロマツ、イロハモミジ等の高木類を園池の周囲に、サツキツツジ等の低木類を滝の周辺に配している。園池には、上の間から見て手前に木橋が、奥に土橋が、それぞれ縦方向架かる。土橋を渡り切った左手、園池の最奥部正面には、茅葺屋根の掬掃亭が水面にせり出して建つ。また掬掃亭の背後、土橋の先には江戸時代に建てられた土蔵(重要文化財)が残る。 櫻井氏の住宅については、江戸時代に造られた鉄師頭取の住宅で、当時の姿をよく伝える建造物であることから、「櫻井家住宅」として重要文化財に指定されている。また、たたら製鉄の痕跡を色濃く残す奥出雲の景観は、重要文化的景観「奥出雲たたら製鉄及び棚田の文化的景観」に選定されており、櫻井氏の住宅及び庭園等を含む区域が、重要な構成要素となっている。 現在庭園の維持管理については、継続的に手入れがなされており、保存状態はよい。また、滝の水源を含む基本的な水系も造営当初のものが踏襲されており、周辺環境も良好な状態が保たれている。 以上のように、櫻井氏庭園は、江戸時代の松江藩鉄師頭取の住宅に造られた庭園で、その意匠は独特で優れ、保存状態もよい。芸術上及び観賞上の価値、日本庭園史における学術上の価値は高く、名勝に指定し保護を図るものである。