国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要文化的景観
主情報
名称
:
平戸島の文化的景観
ふりがな
:
ひらどしまのぶんかてきけいかん
平戸島の文化的景観(集落)
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種別1
:
重要文化的景観
種別2
:
面積
:
1455.2 ha
その他参考となるべき事項
:
選定番号
:
選定年月日
:
2010.02.22(平成22.02.22)
追加年月日
:
2010.08.05(平成22.08.05)
選定基準
:
(一)水田・畑地などの農耕に関する景観地,(五)ため池・水路・港などの水の利用に関する景観地,(八)垣根・屋敷林などの居住に関する景観地
所在都道府県
:
長崎県
所在地(市区町村)
:
長崎県平戸市
平戸島の文化的景観(集落)
解説文:
詳細解説
かくれキリシタンの伝統を引き継ぎつつ、島嶼の制約された条件の下で継続的に行われた開墾及び生産活動によって形成された棚田群や牧野、人々の居住地によって構成される独特の文化的景観である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
平戸島の文化的景観(集落)
平戸島の文化的景観(防風林に囲まれた集落)
平戸島の文化的景観(棚田)
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平戸島の文化的景観(集落)
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平戸島の文化的景観(防風林に囲まれた集落)
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平戸島の文化的景観(棚田)
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解説文
かくれキリシタンの伝統を引き継ぎつつ、島嶼の制約された条件の下で継続的に行われた開墾及び生産活動によって形成された棚田群や牧野、人々の居住地によって構成される独特の文化的景観である。
詳細解説▶
詳細解説
平戸市は長崎県の北西端に位置し、平戸島・生月島・大島・度島・高島の有人島の他、九州本土北西部に位置する田平地区及びその周辺の島々によって構成される。島嶼が点在する複雑な地形、地質及び豊かな植物相により、平戸市の約2割が西海国立公園として保護されている。現在、市域面積235.63k㎡におよそ4万人が居住するが、人口は昭和30年代と比較して3万人以上も減少し、離島における過疎化問題は極めて深刻な状況にある。 平戸島の沖積低地は小規模であるため、広域水田等の景観はあまり発達していない。しかし、火山性山地及び溶岩台地を開析した小河川沿いの谷部には、安満岳を取り囲むように防風石垣や石塀を備える、主師、春日、高越、獅子、根獅子、飯良、宝亀、田崎・神鳥・迎紐差及び山田の各集落と、その生業の場である棚田が展開する。これらの集落の多くは、16世紀半ばから17世紀初頭にかけて書かれたイエズス会宣教師の書簡において、教会や慈悲の組についての記述とともにその名を確認することができる。また、戦国~江戸時代初期のキリシタン信仰に起源を持ち弾圧時代に潜伏した信仰組織は現在もかくれキリシタンとしての営みを続け、伝統的家屋の中に御神体である納戸神を祀るほか、聖なる山や聖水の島、殉教地を伴う独特の様相を現在に留めている。 棚田群は、大きなものでは海岸から標高約200mの地点まで連続している。これらの棚田は、安山岩や玄武岩の分布とほぼ一致して築造され、石積みには地元産の礫岩が使用されている。しかし、石積み技術は様々な様式を示しており、地元農家の手によるものの他に、生月の専門的な石工集団の手によると思われるものが含まれる。この集団による活動は20世紀の中頃まで続き、いわゆる出稼ぎであるものの、その技術力は高く評価され、遠く山口県の日本海側においても痕跡を確認することができる。 また、江戸期における本地区の様子は、寛永21年(1644)安満岳図(天明7年写)、寛政11年(1799)春日牧垣図に描かれており、水田や川、木戸をはじめ、馬垣の様子を把握することができる。絵の特徴から、馬垣には木柵と石垣があったことが解るが、特に後者は現在も平戸島の放牧地において広く使用されている。明暦2年(1656)の田畑清帳を基に享和3年(1803)に作成された抜書をみると、春日地区の水田面積は江戸初期から現在まで大きくは変化しておらず、また耕地や宅地形状及び道の分布も、慶応2年(1866)、明治5年(1872)の図にほぼ一致する。生月島は、江戸時代中期以降は捕鯨の一大拠点として平戸藩の財政を支える重要な役割を担うようになり、最盛期には3000人を越える人々が捕鯨産業に係わっていた。しかし、地形的制約から農地が限られ、また鯨油の抽出工程においても多量の燃料(薪)が必要であったため、食料及び燃料の供給を平戸島の豊富な森林資源や農地に求めた可能性が高い。江戸中期から近代にかけ、平戸島と生月島は捕鯨を中心として一つの経済圏を成していたと考えられる。 以上のように、「平戸島の文化的景観」は、かくれキリシタンの伝統を引き継ぎつつ、島嶼の制約された条件の下で継続的に行われた開墾や伝統的な生活及び固有の生業等を通じて形成された棚田や人々の居住地によって構成される独特の文化的景観である。居住地を構成する民家や防風石垣、寺社仏閣、生業を示す棚田、聖地としての意味を留める安満岳や中江ノ島等の諸要素は、一体性を持って連続し、様々な無形の習俗に支えられた文化的景観を形成している。近年の激しい過疎化においても、各集落は伝統的な社会組織に基づいて継承され、かろうじて生業を維持してきたが、現在は住民の高齢化という課題に直面している。こうした状況を踏まえ、文化的景観保存計画によって保存管理、整備活用、運営体制の枠組みが示される地域のうち、急斜面地に展開する春日、獅子、根獅子、宝亀、田崎・神鳥・迎紐差の棚田及び防風石垣を持つ集落、信仰の対象となる安満岳及び中江ノ島を重要文化的景観として選定し、早急な保存・活用を図るものである。