国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要文化的景観
主情報
名称
:
小値賀諸島の文化的景観
ふりがな
:
おぢかしょとうのぶんかてきけいかん
小値賀島の集落
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種別1
:
重要文化的景観
種別2
:
面積
:
1124.3 ha
その他参考となるべき事項
:
選定番号
:
選定年月日
:
2011.02.07(平成23.02.07)
追加年月日
:
2011.09.21(平成23.09.21)
選定基準
:
所在都道府県
:
長崎県
所在地(市区町村)
:
長崎県北松浦郡小値賀町
小値賀島の集落
解説文:
詳細解説
「小値賀諸島の文化的景観」は、多様な地形的特徴を示す島嶼間の移動や近隣諸国との流通・往来に基づいて発展した港や居住地等によって形成される独特の文化的景観である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
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小値賀島の集落
大島
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解説文
「小値賀諸島の文化的景観」は、多様な地形的特徴を示す島嶼間の移動や近隣諸国との流通・往来に基づいて発展した港や居住地等によって形成される独特の文化的景観である。
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詳細解説
五島列島は南から、福(ふく)江(え)島(じま)、久(ひさ)賀(か)島(じま)、奈(な)留(る)島(しま)、若(わか)松(まつ)島(じま)、中(なか)通(どおり)島(じま)、小(お)値(ぢ)賀(か)島(じま)、宇(う)久(く)島(じま)の七島を中心に140余りの島々より成る広大な群島である。そのうち北部地域に位置する小値賀諸島は大小17の島(とう)嶼(しよ)群で形成される。火山活動によって形成された複雑な地形とともに、各種の亜熱帯性植物や野生生物が根付く独特の風土を有している。小値賀町を構成する島々は、地質的特徴から豊かな農地を持つ小値賀島や大島と、深い森林が発達した野崎島や美(び)良(りよう)島(じま)等とに分類され、島によって林地や水田、畑地等の異なる土地利用が集中することによって顕著な特徴を示すようになった。偏った土地利用のため、各島は単独では生業・生活を成り立たせることができず、古くより島嶼間を移動しつつ農業や放牧を営む独特の生活様式を維持してきた。 文字資料における小値賀島笛吹の初見は明徳元年(1390)であるが、この地域は遣唐使船の通過地点として古代においてすでに流通・往来における重要な拠点であったと考えられる。室町時代には日明貿易に基づく中世の港湾都市として栄え、江戸時代になると平戸藩が、異教徒や異国船の監視を目的とした押役所や遠見番所を設置した。近世における笛吹の集落は、農村地帯の笛吹在と漁業者・各種職人・商業者等が混在する笛吹浦・町部の2地区に大きく別れて形成され、壱岐より移住した小田家が鯨組を組織し、新田開発をはじめとした数多くの事業展開を行うことによって経済的に成長した。明治以後も経済活動は活発で、石築波止の築堤などの港湾整備、ヨード製造工場や鮑集所の設立、九十九銀行創立への資本参加、魚市場や長崎県漁業組合連合会の設立など、商人らが活発な活動を展開した。小値賀の海産物を扱うために各地の商人が笛吹地区に営業拠点を持ったため、讃岐屋・薩摩屋・大阪屋等の屋号の家が現在も残る。 流通・往来を基調として栄えた地域の歴史は、笛吹地区の居住景観に影響を与えている。この集落は、中世の港湾を中心に発展し、現在は漁村でありながら比較的大きな商業地区を持っている。また、激しい海風を避けるために築造された防風の石垣が市街地内に残り、これらは独特の景観構成要素となっている。高台に役所や漁業資本家の大邸宅を配し、丘陵地形を下るに従って寺社や密集する漁師集落へと展開した構造は近世より継承されたもので、現在の景観に影響を与えている。 また、島嶼間を移動する生活は、参詣や墓参の営みとして現在まで継承されており、中でも大島と宇(う)々(う)島(じま)の間の移動生活は独特である。大島は小値賀町内の離島において若年層の定住が顕著であり、住民間の相互扶助意識が強い。大島における土地利用のほとんどが農地として開拓される一方で、薪炭林や茅場は宇々島において管理され、住民は二つの島を小型の伝馬船で移動しつつ生活・生業を営んだ。この際に使用された石の波止場や石敷きの船揚場が現在も宇々島に残っている。 このように、「小値賀諸島の文化的景観」は、多様な地形的特徴を示す島嶼間の移動や近隣諸国との流通・往来に基づいて発展した港や居住地等によって形成される独特の文化的景観である。しかし、近年においては高齢化と過疎化の進行により島を捨て移住する人々が増えるとともに、島々を船で移動する暮らしが失われつつある。こうした現状から、文化的景観保存調査を通じて価値が明らかとなり、文化的景観保存計画によって保護の考え方が示された笛吹地区及び大島、宇々島を重要文化的景観として選定し、保存・活用を図ろうとするものである。