国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
重要文化的景観
主情報
名称
:
利根川・渡良瀬川合流域の水場景観
ふりがな
:
とねがわ・わたらせがわごうりゅういきのみずばけいかん
全景(南から)
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種別1
:
重要文化的景観
種別2
:
面積
:
その他参考となるべき事項
:
選定番号
:
選定年月日
:
2011.09.21(平成23.09.21)
追加年月日
:
選定基準
:
所在都道府県
:
群馬県
所在地(市区町村)
:
群馬県邑楽郡板倉町
全景(南から)
解説文:
詳細解説
群馬県の最東端に位置する板倉町には、利根川と渡良瀬川との合流点に形成された低湿地「水(みず)場(ば)」が展開している。そのため当地は古くから洪水多発地帯であり、豊かな土壌・生態系が育まれる一方、生活を営むために様々な工夫が行われてきた。当地における人々の居住は縄文期から確認されるが、広大に展開する沖積低地における集落形成や開墾は、中世末期から近世にかけて実施された築堤や河川の瀬替えによって実現した。近代には大規模な治水事業が行われ、現在に通じる水利システムが完成された。こうした治水事業によって開墾された低地では、主に水田耕作が行われている。水田の中には、河川や沼に面した湿地に溝状の堀を掘り、その掘削土を客土(揚げ土)し掘り上げ田を造成した、川(かわ)田(た)と呼ばれる農地も営まれている。また、自然堤防上を中心に形成されている居住地では、屋敷地の一画に土盛りをし、その上に水(み)塚(つか)と呼ばれる避難用建物が築造されている。屋敷地の北西にはエノキ・ムクノキなど自然堤防の環境に適応した郷土種や、水防にも有効なタケ類が植栽されており、防風屋敷林として機能している。
このように、利根川・渡良瀬川合流域に形成された水場景観は、大河川の合流域で形成された低地における、水と共生する生活・生業上の様々な工夫によって育まれた、価値の高い文化的景観である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
写真一覧
全景(南から)
川田での耕作
屋敷林に囲まれた居住地
盛土上に築かれた水塚
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川田での耕作
写真一覧
屋敷林に囲まれた居住地
写真一覧
盛土上に築かれた水塚
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解説文
群馬県の最東端に位置する板倉町には、利根川と渡良瀬川との合流点に形成された低湿地「水(みず)場(ば)」が展開している。そのため当地は古くから洪水多発地帯であり、豊かな土壌・生態系が育まれる一方、生活を営むために様々な工夫が行われてきた。当地における人々の居住は縄文期から確認されるが、広大に展開する沖積低地における集落形成や開墾は、中世末期から近世にかけて実施された築堤や河川の瀬替えによって実現した。近代には大規模な治水事業が行われ、現在に通じる水利システムが完成された。こうした治水事業によって開墾された低地では、主に水田耕作が行われている。水田の中には、河川や沼に面した湿地に溝状の堀を掘り、その掘削土を客土(揚げ土)し掘り上げ田を造成した、川(かわ)田(た)と呼ばれる農地も営まれている。また、自然堤防上を中心に形成されている居住地では、屋敷地の一画に土盛りをし、その上に水(み)塚(つか)と呼ばれる避難用建物が築造されている。屋敷地の北西にはエノキ・ムクノキなど自然堤防の環境に適応した郷土種や、水防にも有効なタケ類が植栽されており、防風屋敷林として機能している。 このように、利根川・渡良瀬川合流域に形成された水場景観は、大河川の合流域で形成された低地における、水と共生する生活・生業上の様々な工夫によって育まれた、価値の高い文化的景観である。
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詳細解説
群馬県の最東端に位置する板倉町には、利根川と渡良瀬川との合流点に形成された沖積地が展開しており、「水場」と称されている。河川区域や旧河道、町内に点在する池沼群では、ヨシ・マコモなどの抽水植物群落や、ベニイトトンボなどの水棲動物、さらにはオオタカなどの猛禽類など多様な生態系が確認されている。特に谷田川では、後述する川田の畦を抑えるためにアカメヤナギが挿し木で植栽され、かつては薪炭材としても利用された。現在もアカメヤナギのほかジャヤナギ・オノエヤナギ・タチヤナギなどヤナギ類が卓越しており、特徴的な植生を形成している。 当地は古くから洪水多発地帯であり、生活を営むために様々な工夫が行われてきた。人々の居住は縄文期から確認されるが、広大に展開する沖積低地における集落形成や開墾は、中世末期から近世にかけて実施された築堤や河川の瀬替えによって実現した。さらに、近代には大規模な治水事業が行われ、現在に通じる水利システムが完成され、主に水田耕作が行われてきた。水田の中には、河川や沼に面した湿地に溝状の堀を掘り、その掘削土を客土(揚げ土)し掘り上げ田を造成した、川田と呼ばれる農地も営まれている。また、自然堤防上を中心に形成されている居住地では、屋敷地の一画に土盛りをし、その上に水(み)塚(つか)と呼ばれる避難用建物が築造されている。屋敷地の北西にはエノキ・ムクノキなど自然堤防の環境に適応した郷土種や、水防にも有効なタケ類が植栽されており、防風屋敷林として機能している。 このように、利根川・渡良瀬川合流域に形成された水場景観は、大河川の合流域で形成された低地における、水と共生する生活・生業上の様々な工夫によって育まれた、価値の高い文化的景観である。しかしながら、近年は生活様式の変化等により伝統的な居住形態や営農形態が徐々に変容し、地域共同体も弱体化しつつある。そのため、当該地域における生活・生業を維持し当該文化的景観を保存・活用するため、板倉町は文化的景観保存調査を実施し文化的景観保存計画を策定した。調査では景観単位として、川田など治水によって開かれた農地、水塚などを伴う自然堤防上に築かれた居住地、排水機場など当該地域の水利技術を示す河川・水路が析出された。また、保存計画では重要な構成要素として川田、水塚、排水機場など70件の不動産が特定されている。これらに基づき、今次選定申出が行われた当該文化的景観について、重要文化的景観に選定し、その保存・活用を図るものである。