国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要文化的景観
主情報
名称
:
阿蘇の文化的景観
南小国町西部の草原及び森林景観
ふりがな
:
あそのぶんかてきけいかん
みなみおぐにまちせいぶのそうげんおよびしんりんけいかん
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種別1
:
重要文化的景観
種別2
:
面積
:
1282.2 ha
その他参考となるべき事項
:
選定番号
:
選定年月日
:
2017.10.13(平成29.10.13)
追加年月日
:
選定基準
:
所在都道府県
:
熊本県
所在地(市区町村)
:
熊本県阿蘇郡南小国町
解説文:
詳細解説
阿蘇カルデラの北側に位置する小国(おぐに)郷(ごう)は,小規模な起伏を繰り返しつつ北へ傾斜する緩斜面の小平野上に位置する。小国郷南部の南小国町では,古くから各集落が草地を維持しながら,小河川沿いの谷筋を林地及び耕作地として一体的に利用してきた。阿蘇地方の典型的な草地及び林地景観である。
関連情報
(情報の有無)
指定等後に行った措置
なし
添付ファイル
なし
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解説文
阿蘇カルデラの北側に位置する小国(おぐに)郷(ごう)は,小規模な起伏を繰り返しつつ北へ傾斜する緩斜面の小平野上に位置する。小国郷南部の南小国町では,古くから各集落が草地を維持しながら,小河川沿いの谷筋を林地及び耕作地として一体的に利用してきた。阿蘇地方の典型的な草地及び林地景観である。
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詳細解説
九州の内陸ほぼ中央に位置する阿蘇火山は、南北約25km、東西約18km、面積約380k㎡のカルデラ地形を有する。カルデラ地形は、約27万年前から約9万年前に流出した計4回の火砕流噴火によって形成された中央火口丘・カルデラ床・外輪山からなり、中央火口丘に位置する中岳は我が国を代表する活火山である。 南小国町は小国郷の南半分を占め、東部のくじゅう山系涌(わい)蓋(た)山麓(さんろく)から連なる標高400m以上の斜面地に位置する。筑後川源流域にあたるため、北外輪山から流れ出た湯田川、中原川、馬場川、志賀瀬川、満願寺川、田(た)の原(はる)川等の中小河川が町域を北流する。 カルデラ内部よりも降灰が少なく、古くから草地利用による畜産のほか、河川沿いを中心に畑作が行われてきた。現在は、谷底の居住地周辺に狭い耕作地が広がり、斜面上は林地、谷が深いため居住地から離れた尾根筋高台に草地が広がる傾向があり、大規模な草地は涌蓋山周辺と阿蘇外輪山から延びる台地上に残る。 阿蘇の草地は、千年以上にわたり、牛馬の放牧及び飼料用の草を得る場、耕作地に施す緑肥及びたい肥を供給する場、時には居住地の家屋の屋根及び生活用具の材料を供給する場等として継続的に利用されてきた。このような草地を軸として、地形に沿って垂直方向に変化する土地利用及び景観は、阿蘇地域の自然風土に適応した生活又は生業によって歴史的に形成されてきたものである。 江戸時代には、井手の開削、灌漑整備によって畑から水田への転換が行われた。また、筑後川下流の日田から木材の買い付けが行われた地域であり、戦後の拡大造林によって、さらに草地や雑木林からスギ林への転換が進み、林地は小国杉を中心とした林業景観が広がる。小国杉の起源は江戸時代に遡ると言われており、現在の植林は主にアヤスギ及びヤブクグリの2品種の疎植造林からなる。アヤスギは淡紅色、ヤブククグリは淡ピンク色、ともに挿し木で生育する樹種であり、強度及び艶があるため優秀な木材となる。 中原(なかばる)川(がわ)沿いには、かつて阿蘇一円から牛馬を伴って畜産農家が参拝に訪れたという馬頭観音を祀る神社が残っており、往時の馬の供養と結び付いた景観を知ることができる。また、馬場川沿いの赤馬場には江戸時代後期に建設された井手が5km以上残っており、現在も集落総出で管理している。 九重山を熱源とする小規模な温泉が中小河川沿いに多数分布する景観も南小国町の特徴であるが、田の原川沿いの渓谷に約30軒の旅館が並ぶのが黒川温泉である。昭和36年(1961)に湯治場として開業してから地域が一体となって、街並みの色彩統一、雑木の植栽、乱立看板等の撤去を実施し、自然景観及び和風旅館を尊重した景観保全による地域づくりを進めていることで著名である。 近年の草地は、地域の牧野組合が中心となり、秋に草を刈って防火帯を作る「輪地切り」及び早春に枯れた草を焼き払う「野焼き」によって維持されているが、担い手の確保が課題となっている。平成17年(2005)からは、自然再生法に基づいて関係行政機関、地域住民、牧野組合員、NPO、専門家等によって「阿蘇草原再生協議会」が組織され、国立公園管理団体である「(公財)阿蘇グリーンストック」とともに、草地を維持再生する募金活動及びボランティア活動が継続的に行われている。 阿蘇の文化的景観は、広大な阿蘇のカルデラ地形に沿った土地利用を継続的に行ってきたために形成された草地・林地・居住地・耕作地が一体となった文化的景観である。特にその中心となる阿蘇地方の採草・放牧に関連する景観は千年以上継続するものであり、我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないものであることから、重要文化的景観に選定して保護を図るものである。 今回は南小国町域のうち、保護措置の整った北外輪山西部の典型的な草地及び林地を選定する。