国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
紙本著色地獄草紙断簡(火象地獄)
ふりがな
:
しほんちゃくしょくじごくぞうしだんかん(かぞうじごく)
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員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
日本
時代
:
平安
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
2023
枝番
:
00
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2006.06.09(平成18.06.09)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
東京都
所在地
:
東京都世田谷区上野毛3-9-25
保管施設の名称
:
公益財団法人五島美術館
所有者名
:
東急株式会社
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
仏法に背いた僧侶が堕ちる地獄を描いた一図。もと益田鈍翁所蔵の七図からなる益田家甲本の名で呼ばれた絵巻の断簡である。国宝に指定されている東京国立博物館本、奈良国立博物館本の地獄草紙の絵巻と並ぶ貴重な作品で、優れた筆致で描かれる。さらには国宝本餓鬼草紙や病草紙などとともに六道絵の一環をなしていたとも想像されている。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
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解説文
仏法に背いた僧侶が堕ちる地獄を描いた一図。もと益田鈍翁所蔵の七図からなる益田家甲本の名で呼ばれた絵巻の断簡である。国宝に指定されている東京国立博物館本、奈良国立博物館本の地獄草紙の絵巻と並ぶ貴重な作品で、優れた筆致で描かれる。さらには国宝本餓鬼草紙や病草紙などとともに六道絵の一環をなしていたとも想像されている。
詳細解説▶
詳細解説
詞一段、絵一段からなる。詞書は、火象地獄は生前僧侶でありながら、淫欲を行い、寺院や仏像を傷つけたものが、口や目から火を噴く象に責めさいなまれる地獄であることを述べ、これに続く絵一紙に、火象がいずれも裸の沙門を苦しめる様が描かれる。もと益田孝(鈍翁)の所蔵になるいわゆる益田家甲本地蔵草紙の断簡である。益田家甲本は七段からなる絵巻であったが、戦後各段ごとに分離されて各所の所蔵となった。七段いずれも法に背いた沙門の堕ちる地獄を描いているため、「沙門地獄草紙」とも称されてきた。内容は『仏名経」に編入された「宝達菩薩問答報応沙門経」の説く沙門地獄と一致する点の多いことが知られる。「地獄草紙」としては、すでに国宝に指定されている東京国立博物館本(旧安住院本)、奈良国立博物館本(旧原家本)の二本が著名である。本図を含む旧益田家甲本諸図も、料紙の寸法や詞書の書風とともに、基本的画風においても共通性が強いといえよう。さらにこれらの「地獄草紙」は、国宝および重要文化財に指定されている「餓鬼草紙」「病草紙」「辟邪絵」の諸本とともに、互いに筆致に差違はあるものの通じるものも多く、その関連性が注目される。詞書の書風においても、総じて平安時代末から鎌倉初期にかけての一一八〇年代の成立と推定する見解も出されており、これら諸本は、記録にあらわれる後白河院の意になる蓮華王院宝蔵中の六道絵にあたるものと推定する説もある。本図を含むこれらがただちにその六道絵にあたるかについてはなお慎重を要するものの、画風からみて平安時代末期から鎌倉時代初期の制作になるものであり、まとまって制作された背景を想定することは認められるであろう。本図は断簡ではあるものの、以上のような複数の国宝本をはじめとする諸本と並ぶ貴重な遺品であるとともに、僧の苦悶の姿や表情、動感のある充実した画面構成を卓抜した筆致で表す点で他本とは異なる優れたものさえ見られる。加えて、九世紀に宮中から始まり一〇世紀初めにかけて全国に広まった南都の僧による仏名悔過が沙門地獄を説く『仏名経』を典拠とし、その修法の際には「地獄変御屏風」が使用されていることから、沙門地獄である本図はこのような古く遡る伝統に根ざしている可能性もある。このような点でも本図は絵画史上貴重な作品といえる。