国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
紙本著色遊行上人絵伝
ふりがな
:
しほんちゃくしょくゆぎょうしょうにんえでん
解説表示▶
員数
:
20巻
種別
:
絵画
国
:
時代
:
南北朝時代
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
縦33.6~33.8センチ 長466.3~1050.8センチ
品質・形状
:
紙本著色 巻子装
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
2133
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2024.08.27(令和6.08.27)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
京都府
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
14世紀初頭に成立した遊行上人絵伝は、時宗の開祖一遍智真と二祖他阿真教の伝記を描いた絵巻物である。原本は失われ、複数伝わる模本がその様相を伝える。
本作の画風は、「平治物語絵詞」(国宝、東京国立博物館ほか蔵)や「天狗草子」(重文、東京国立博物館ほか蔵)など、有力な絵所で制作された鎌倉時代の作例に近似することが指摘されており、原本の様式的特徴をよく留めているとみられる。わずかに引いた位置に視点を設定する画面構成や、人物の動作がやや抑制的である点は「本願寺聖人親鸞伝絵」(重文、定専坊蔵)や「弘法大師行状絵巻」(重文、教王護国寺蔵)などの南北朝期成立の作例に通じ、成立時期を14世紀半ばから後半に置いても矛盾はない。人物の描写や空間の構成に緩慢さを示す箇所もあるが、画面構成は堅実で、衣服の文様や画中画の描き込みは入念である。なかでも巻第一、巻第八は全体を通して緊張感のある描写がなされており、各伝本を通じて見ても出色の出来を示す。すなわち本作は、原本の様相を考究する上で欠かせない作例であるばかりでなく、南北朝期のやまと絵様式を考える上でも注目すべき作である。
本作が伝来した四条道場金蓮寺には、巻8のみの1巻と詞書のみの10巻の遊行上人絵伝も伝わる。いずれも伝本研究に有効な作であるため、附として一体的な保護を図る。
関連情報
(情報の有無)
附指定
一つ書
なし
添付ファイル
解説文
14世紀初頭に成立した遊行上人絵伝は、時宗の開祖一遍智真と二祖他阿真教の伝記を描いた絵巻物である。原本は失われ、複数伝わる模本がその様相を伝える。 本作の画風は、「平治物語絵詞」(国宝、東京国立博物館ほか蔵)や「天狗草子」(重文、東京国立博物館ほか蔵)など、有力な絵所で制作された鎌倉時代の作例に近似することが指摘されており、原本の様式的特徴をよく留めているとみられる。わずかに引いた位置に視点を設定する画面構成や、人物の動作がやや抑制的である点は「本願寺聖人親鸞伝絵」(重文、定専坊蔵)や「弘法大師行状絵巻」(重文、教王護国寺蔵)などの南北朝期成立の作例に通じ、成立時期を14世紀半ばから後半に置いても矛盾はない。人物の描写や空間の構成に緩慢さを示す箇所もあるが、画面構成は堅実で、衣服の文様や画中画の描き込みは入念である。なかでも巻第一、巻第八は全体を通して緊張感のある描写がなされており、各伝本を通じて見ても出色の出来を示す。すなわち本作は、原本の様相を考究する上で欠かせない作例であるばかりでなく、南北朝期のやまと絵様式を考える上でも注目すべき作である。 本作が伝来した四条道場金蓮寺には、巻8のみの1巻と詞書のみの10巻の遊行上人絵伝も伝わる。いずれも伝本研究に有効な作であるため、附として一体的な保護を図る。
詳細解説▶
詳細解説
遊行上人絵伝は、時宗の開祖一遍智真(1239~89)と二祖他阿真教(1237~1319)の行状を描いた全10巻の絵巻物である。奥書から、真教の弟子・宗俊が嘉元元年(1303)から徳治2年(1307)の間に編纂したことが知られるが、この宗俊による原本は伝存せず、転写本が複数伝わる。本作は各巻を上下に分けた20巻で構成される。内容に各伝本との大きな異同はなく、内容をほぼ完備する貴重な作である。 詞書は複数の筆跡に分かれる。絵も複数の絵師の手になり、巻第1~第9は、各段で巧拙の差があるものの、同一の工房様式を示す。中でも巻第1・第8は各伝本を通じて見ても出色の出来を示し、精緻で緊張感のある描写がなされる。その様式的特徴は、「平治物語絵詞」(国宝、東京国立博物館ほか蔵)や「北野天神縁起(弘安本)」(重要文化財、北野天満宮ほか蔵)、「天狗草子」(重要文化財、東京国立博物館ほか蔵)など、鎌倉時代の有力な絵所で制作されたとみられる諸作例と通じるもので、本作は鎌倉時代に成立した原本の様相をよく伝えていると考えられる。なお、巻第10は、巻第9までと画風を異にするが、様式的・作期的に大きな懸隔があるものではない。 また本作には、わずかに引いた位置に視点を設定して画面を構成し、人物の動作がやや抑制的であるという特徴が認められる。こうした特徴は、各伝本のうち、京都・金光寺本(重要文化財)や広島・常称寺本など、南北朝期の諸作例に通じる。鎌倉時代の様式的特徴を継承していることを勘案するならば、本作の制作時期も南北朝時代、14世紀半ばから後半とみなすことができ、原本から遠くない距離にある転写本と位置付けられる。 以上のように、本作は、鎌倉時代の様式的特徴をよく留めた優品であり、原本の様相を考究する上で極めて重要な位置を占める。加えて、筆致も優れ、南北朝期のやまと絵様式を考究する上でも注目すべき作例でり、絵画史上高く評価されるものである。 なお、本作が伝来した金蓮寺には巻第8のみの1巻と、遊行上人絵伝の詞書10巻も伝わる。いずれも伝本の関係を考察する上で有効な作であるため、附として一体的な保護を図る。
関連情報
附指定
紙本著色遊行上人絵伝(巻第八)
遊行上人絵伝詞書
関連情報
添付ファイル
紙本著色遊行上人絵伝20巻および(附)紙本著色遊行上人絵伝(巻第8)1巻 詞書翻刻
(附)遊行上人絵伝詞書10巻 翻刻
関連情報
附指定
附名称
:
紙本著色遊行上人絵伝(巻第八)
附員数
:
1巻
附ト書
:
関連情報
附指定
附名称
:
遊行上人絵伝詞書
附員数
:
10巻
附ト書
: