国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
重要無形民俗文化財
主情報
名称
:
神津島のかつお釣り行事
ふりがな
:
こうづしまのかつおつりぎょうじ
かつお釣り(練り廻し)
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種別1
:
風俗慣習
種別2
:
生産・生業
その他参考となるべき事項
:
公開日:毎年8月2日(※指定当時・お出掛けの際は該当する市町村教育委員会などにご確認ください)
※この行事は、「神津島のかつお釣り行事」として平成3年2月2日に記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に選択されている。
指定証書番号
:
1
指定年月日
:
1999.12.21(平成11.12.21)
追加年月日
:
指定基準1
:
(一)由来、内容等において我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なもの
指定基準2
:
指定基準3
:
所在都道府県、地域
:
東京都
所在地
:
保護団体名
:
物忌奈命神社かつお釣り保存会
かつお釣り(練り廻し)
解説文:
詳細解説
神津島のかつお釣り行事は、島の暮らしを支えてきた鰹漁を背景に、物忌奈命神社の例大祭に奉納される行事で、漁師の若衆が境内を漁場にみたてて鰹の一本釣りの所作を演じ、その年の豊漁を祈願するものである。青竹で作られた舟形や擬似の魚を用いて、出船、鰹釣り、帰港など一連の鰹漁や入札の模様が模擬的に再現される。伊豆諸島から伊豆半島沿岸部では、正月の乗り初めに予祝儀礼で魚釣りを模倣する儀礼が行われてきた。この行事は、こうした儀礼が物忌奈命神社の例大祭に取り込まれたものといわれており、全国的にも貴重な行事である。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
かつお釣り(練り廻し)
かつお釣り(入札)
かつお釣り(島娘)
写真一覧
かつお釣り(練り廻し)
写真一覧
かつお釣り(入札)
写真一覧
かつお釣り(島娘)
解説文
神津島のかつお釣り行事は、島の暮らしを支えてきた鰹漁を背景に、物忌奈命神社の例大祭に奉納される行事で、漁師の若衆が境内を漁場にみたてて鰹の一本釣りの所作を演じ、その年の豊漁を祈願するものである。青竹で作られた舟形や擬似の魚を用いて、出船、鰹釣り、帰港など一連の鰹漁や入札の模様が模擬的に再現される。伊豆諸島から伊豆半島沿岸部では、正月の乗り初めに予祝儀礼で魚釣りを模倣する儀礼が行われてきた。この行事は、こうした儀礼が物忌奈命神社の例大祭に取り込まれたものといわれており、全国的にも貴重な行事である。(※解説は指定当時のものをもとにしています)
詳細解説▶
詳細解説
神津島は、伊豆諸島のほぼ中間に位置し、東京から約170㎞の海上に浮かぶ一島一村の火山島である。島では江戸時代から明治前半にかけて鰹の一本釣りが盛んに行われ、かつお節に加工されて江戸へ運ばれていた。このかつお節は他島のものに比べ高値で取り引きされていたことが『伊豆海島風土記』(天明2年〈1782〉頃)などから知られている。 この行事は、島の暮らしを支えてきた鰹漁を背景として、神津島村の鎮守である物忌奈命神社の例大祭に奉納される行事で、漁師の若衆たちが神社の境内を漁場にみたてて鰹の一本釣りの所作を演じ、その年の豊漁を祈願するものである。青竹で作られた舟形や擬似の魚を用いて、出船、鰹釣り、帰港など一連の鰹漁や入札の模様が模擬的に再現される。 物忌奈命神社の例大祭は、7月31日に宵宮、8月1・2日に本祭りが行われる。かつお釣り行事は、2日午後、神社境内の南側半分を漁場にみたてて行われる。行事の準備や漁の演技は、島の船主組合と3つの網組に属する漁師たちが主体となって行う。行事に用いられる舟は、全長約4㍍ほどで、先端の葉だけを残して枝を払った青竹2本で舟の輪郭を作り、内側に短く切った竹を横に渡して仕切をした比較的簡単なものである。船尾にはやはり青竹製の舵が取り付けられる。舟は3隻作られ、鉢巻、法被に素足の若衆が1隻につき7、8人乗り込む。各舟には、セノリと呼ばれる大船頭(表船頭)が1人、乗子あるいは水夫などと称される船員が5、6人、トモトリと呼ばれる舵取りが1人ずつ乗り、それぞれに役割分担が決められている。 かつお釣り行事は、まず若衆が乗り込んだ3隻の舟が神社の門をくぐって境内へ勇壮に登場することから始まる。舟は境内を3周とり舵(左回り)に駆け巡って拝殿の前に集合する。そこで神職からお祓いを受け、各舟の大船頭に網に入った菓子やお捻りが撒き餌として手渡される。3隻とも撒き餌を受け取ると、先頭を行く船の大船頭が出船の合図となるかけ声をかけると、乗子たちは漁場へ向かって豪快に舟を進ませる。船団は再び境内を3周左回りに巡った後、3方に分かれて止まり、乗子の1人が餌を撒き始める。境内にある木々の上からも、舟からの撒き餌に合わせて餌がばら撒かれる。見物人は菓子やお捻りを拾おうと競って舟の周囲に群がり、子どもたちは歓声を上げながら3隻の舟の間を走り回る。舟に駆け寄る大勢の人たちは、いわしなどの餌に集まるかつおの大群であるといわれ、これをめがけて乗子の若衆たちは作り物のかつおを結びつけた釣竿をかまえ、かつおを釣り込む所作を演じる。 かつおは、かつては木や藁などを主材料として作られていたが、現在はスポンジと布で作られていて実物様に彩色もされている。 かつお釣りが終わると、3隻の舟は再び船団を組んで港へと帰る。各舟は大漁旗をかかげて境内を1周駆けまわった後、港へ入ったかのように銀杏の木の前に勢揃いする。そして、入札となる。横一列に並んだ船団の前には黒板と木机が用意され、仲買人たちが手鐘を振り鳴らしながら現れて入札が始まる。威勢のよい文句が飛び交い、漁師は釣り上げたかつおをできるだけ高値で売ろうと仲買人たちに競り合いをさせるなど駆け引きの演技が行われる。黒板には「○億○千万」などと景気のよい金額が次々書き込まれていく。 競り合いの末、落札者が決まると、島娘に扮した若衆が登場し、かつおを山盛りに入れた桶を頭上にのせて、境内の北側にある御丁屋の方へ運び出す。舟は最後に境内をもう1周して御丁屋へと退き、行事は終了となる。その後、境内ではオキアガリといって大漁を祝う宴が開かれる。 伊豆諸島から伊豆半島沿岸部では、正月の乗り初めに予祝儀礼として魚釣りを模倣する儀礼が行われてきた。神津島では、正月2日に行われる乗り初めのときに、餅や蜜柑、菓子などを集まった村の人たちに撒き、薪を魚にみたててかつおの一本釣りの真似をする儀礼が現在も続けられている。神津島のかつお釣り行事は、こうした儀礼が物忌奈命神社の例大祭に取り込まれたものといわれており、全国的にも貴重な行事である。 かつおの一本釣り漁に従事した漁師たちが自らの生活と密着させながら伝承してきたものであり、わが国の基盤的な生活文化の特色を有するとともに、わが国の漁撈民俗を考えるうえでも重要である。(※解説は指定当時のものをもとにしています)