国指定文化財等
データベース
・・・国宝、重要文化財
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財
主情報
名称
:
津軽・南部の刺し子技術
ふりがな
:
つがるなんぶのさしこぎじゅつ
津軽地方のこぎん刺し
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種別1
:
民俗技術
種別2
:
衣食住
その他参考となるべき事項
:
公開日:通年
選択番号
:
642
選択年月日
:
2026.03.24(令和8.03.24)
追加年月日
:
選択基準1
:
(三)地域的特色を示すもの
選択基準2
:
選択基準3
:
所在都道府県、地域
:
青森県
所在地
:
保護団体名
:
特定せず
津軽地方のこぎん刺し
解説文:
詳細解説
津軽・南部の刺し子技術は、青森県に伝承されてきた「刺し子」と呼ばれる衣類の縫製技術である。寒冷な気候のため、衣類の保温や補強を目的として、重ねた麻布を木綿糸で細かく刺し縫いする技術で、津軽地方では「こぎん刺し」、南部地方では「菱刺し」と呼ばれ、いずれも装飾性に富んだ菱形の糸目模様を刺し連ね、丈夫な布に仕立てる。
こぎん刺しは、青森県西部の弘前市を中心とする旧津軽藩領に伝承される刺し子技術で、麻布の奇数の経糸を拾い、「モドコ」と呼ばれる縦菱形の単位模様を基本形とする。一方、菱刺しは、青森県東部の八戸市を中心とする旧南部藩領に伝承される刺し子技術で、麻布の偶数の経糸を拾い、「カタコ」と呼ばれる横菱形の単位模様を刺し連ねる。
関連情報
(情報の有無)
添付ファイル
なし
写真一覧
津軽地方のこぎん刺し
南部地方の菱刺し
写真一覧
津軽地方のこぎん刺し
写真一覧
南部地方の菱刺し
解説文
津軽・南部の刺し子技術は、青森県に伝承されてきた「刺し子」と呼ばれる衣類の縫製技術である。寒冷な気候のため、衣類の保温や補強を目的として、重ねた麻布を木綿糸で細かく刺し縫いする技術で、津軽地方では「こぎん刺し」、南部地方では「菱刺し」と呼ばれ、いずれも装飾性に富んだ菱形の糸目模様を刺し連ね、丈夫な布に仕立てる。 こぎん刺しは、青森県西部の弘前市を中心とする旧津軽藩領に伝承される刺し子技術で、麻布の奇数の経糸を拾い、「モドコ」と呼ばれる縦菱形の単位模様を基本形とする。一方、菱刺しは、青森県東部の八戸市を中心とする旧南部藩領に伝承される刺し子技術で、麻布の偶数の経糸を拾い、「カタコ」と呼ばれる横菱形の単位模様を刺し連ねる。
詳細解説▶
詳細解説
津軽・南部の刺し子技術は、青森県に伝承されてきた「刺し子」と呼ばれる衣類の縫製技術である。刺し子は、基布に木綿の撚り糸で細かく刺し縫い、補強や補修、保温の機能と装飾性を兼ね備える。その技術は、単純なぐし縫いや綴り縫いから、次第にその縫い目が模様化し、様々な模様刺しが生まれ、青森県をはじめ、東北地方を中心に分布している。東北地方の北部は寒冷な気候のため、綿花の栽培が困難で、近世には衣類の素材について規制もあり、普段着や野良着などには経糸と緯糸の目の粗い麻布が用いられていた。麻布に木綿糸で刺し縫いを施す刺し子技術は、当地方の女性たちの工夫によって、独特な模様が装飾的に発展し、青森県の刺し子は、津軽地方では「こぎん刺し」、南部地方では「菱刺し」と呼ばれて伝承されている。 こぎん刺しは、青森県西部の弘前市を中心とする旧津軽藩領に伝承される刺し子技術で、麻布の奇数の経糸を拾い、縦長の菱形模様を基本形とする。「こぎん」の名は元禄8年(1695)の『弘前藩庁日記』が初見で、天明8年(1788)の『奥民図彙』にも「サシコギヌ、布を糸にてさまざまな模様に刺すなり」と見え、サシコギヌが語源ともいわれる。 一方、菱刺しは、青森県東部の八戸市を中心とする旧南部藩領に伝承される刺し子技術で、麻布の偶数の経糸を拾い、横長の菱形模様を作る。菱刺しの成立もまた、近世に遡るといわれ、こぎん刺しと菱刺しは、八甲田山脈を境にそれぞれ発展した技術であるが、いずれも針先が丸いとじ針を用いて麻布の経糸を規則的に数えて拾いながら、菱形を基調とする模様を刺し連ねることで多彩な図柄を表し、堅牢で華やかな布に仕立てられる。 こぎん刺しと菱刺しの基本的な技術は、おおむね共通している。まず、糸を準備することから始まる。糸は、6本から8本の木綿糸の撚り糸で、とじ針の針穴に通して用いる。次に、模様の図案を基に、基布となる麻布に目印をつけ、刺し始めの工程に入る。布に印をつけた目の裏側からとじ針で刺して貫き、糸は玉止めを施さず、数センチメートル残しておく。そして麻布の経糸の本数を数えながら、緯糸の布目の段に沿って表と裏から交互にとじ針で刺していく。この時、糸の太さや流れが一定になるように、撚り戻しや引き加減に注意を払う。そして、段の目的の目に到達すると、次の緯糸の段へと移る。次の段では、模様の一番端の目の裏側から針を刺し、前の段とは逆方向に刺し進め、段が変わるごとにこの往復を繰り返す。基布に模様を刺し終えると、裏側の糸にくぐらせるなどして留め、余分な糸をハサミで切り、糸の始末を行う。 こぎん刺しと菱刺しの違いは、単位模様や色彩構成にもみられる。こぎん刺しでは「モドコ」と呼ばれる単位模様が約40種類あり、藍染の濃紺色の麻布に白色の木綿糸を刺すことを基本とする。これに対し、菱刺しの単位模様は 「カタコ」と呼ばれ、約400種類あり、色糸を用いて多色展開した点も対照的である。 また、津軽地方のこぎん刺しは、主に裏地のない単衣の着物の肩や背、前身頃上部に施される。その技術にも地域差があり、東こぎん、西こぎん、三縞こぎんと呼ばれる系統に分類される。東こぎんは、弘前市の東の地域に伝承される技術で、前身頃から後ろ身頃にかけて同じ模様が施される。西こぎんは、弘前市の西の地域に伝承され、肩の部分に黒糸と白糸とを交互に細かく刺し、縦縞模様を施すことから縞こぎんとも呼ばれる。また、三縞こぎんは、五所川原市を中心に伝承される技術で、3本の太い横縞模様に特徴がある。 本件は、当地の各家庭で伝承されてきた技術で、今日では主に弘前市や八戸市内において、女性を中心とするサークル活動や愛好家のあいだで伝承され、衣類に限らず、布製の小物や装飾品などにも施されている。 なお、刺し子については、津軽・南部地方で作られ、使われてきた刺し子の仕事着や着物の収集を重要有形民俗文化財に指定している。本件は、この無形の民俗文化財の伝承を民俗技術として保護するものである。