国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
日明貿易船旗〈万暦十二年十月吉日/(麻布)〉
ふりがな
:
にちみんぼうえきせんき〈ばんれきじゅうにねんじゅうがつきちじつ/(あさぬの)〉
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員数
:
1旒
種別
:
歴史資料
国
:
日本
時代
:
安土桃山
年代
:
万暦12(天正12)
西暦
:
1584
作者
:
寸法・重量
:
縦160.4cm×横94.0cm
品質・形状
:
麻布
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
大明国泉州府/晋江縣有商船/隻候来年六月/到此港口看旗/号比対一同斎/来買売/余事無紀/萬暦十二年十月吉日/知鉦人王禄(花押)/船主蔡福(花押)/立字人李進(花押)
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
160
枝番
:
1
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2010.06.29(平成22.06.29)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
山口県
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
個人
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
高須家の家紋を描く。明商人3名の銘文には、「来年6月、赤間関に来航する。旗印を照合して合致すれば、入港して貿易する」とある。日明貿易の実態を物的に示す比類ない資料である。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
高須家の家紋を描く。明商人3名の銘文には、「来年6月、赤間関に来航する。旗印を照合して合致すれば、入港して貿易する」とある。日明貿易の実態を物的に示す比類ない資料である。
詳細解説▶
詳細解説
萩藩士高洲(高須)家に伝来した資料群である。高須氏は備後国の在庁官人から国人領主に転化した杉原氏の庶流で、南北朝時代に御調郡高須社(広島県尾道市)の地頭職を獲得した。応仁・文明の乱後、備後国に政治的影響力をもつ但馬守護山名氏の被官として活動した。やがて備後国に勢力を拡大した大内氏に帰属し、大内氏の滅亡後は、戦国大名として台頭してきた安芸毛利氏に帰属した。慶長5年(1600)の関ヶ原合戦の敗戦をうけ、毛利氏が長門国萩(山口県萩市)に移封され、高須氏も萩城下に移住した。 高洲家に伝来した資料群は、日明貿易船旗、および南北朝~明治時代の古文書類からなる。今回の指定対象は、日明貿易船旗1旒、および南北朝~江戸時代初期の古文書117通とした。 日明貿易船旗は、縦長の麻布2枚を左右に継ぎ、大型に仕立てたもので、上端は裏側に折り返して黒麻糸で袋状に縫い、左端は黒麻糸で鹿革製の乳13個を縫いつける。上部から中央部にかけて高須家の家紋である剣三巴紋を大きく墨描し、下部に船主蔡福・立字人李進・同知鉦人王禄の3名が連署で銘記し、万暦12年(1584)10月吉日の年紀がある。銘文の大意は、「泉州府晋江県の商船が来年6月に来航する。旗印を照合して一致すれば、入港して貿易する」とのものである。天正12年小春日(1584年10月)付の蔡福・季(李)進・王禄あて高須元兼覚書案によれば、同年10月に船主蔡福の泉州船2隻が赤間関(山口県下関市)に来航しているので、船旗銘の内容は、翌年6月に再来航するさいの入港許可の方法をめぐり、赤間関代官高須元兼と約諾したものであることがわかる。 16世紀後半は、明の貿易商人が東アジアおよび東南アジア各地に積極的に渡航した時期である。明の貿易商人は、海禁対象国である日本に来航し、海賊行為をはたらくこともあった。こうした貿易商人は、研究史上で「後期倭寇」と呼称される。室町幕府が崩壊し、統一政権樹立前の当該期にあって、中央政権が外国の貿易船を管理できる状況ではなく、西日本各地の戦国大名が独自の対応策を講じた。本船旗は、毛利氏領国西端の海上交通の要衝である赤間関において、明から来航する貿易船を管理する入港許可証として機能したものである。日明両国の公的貿易(いわゆる勘合貿易)の途絶後の民間貿易の実態を物的に示す比類ない好資料であるとともに、西日本の戦国大名毛利氏が東アジアの経済変動に的確に対応したことを示す資料であり、対外関係史研究等に重要である。 高洲家文書117通の形態別の内訳は、一紙物86通、巻子装31通(5巻)である。その発給主体別の内訳は、毛利氏発給文書61通、山名氏発給文書21通、高須氏および木梨氏(杉原氏庶流)発給文書14通、大内氏発給文書4通、足利氏発給文書5通、その他12通である。 これらの古文書からは、高須氏が室町時代の中国地方の政治情勢の変化に対応し、山名氏から大内氏へ、さらに大内氏から毛利氏へと帰属した過程を知りうる。とりわけ天正年間に毛利氏の赤間関代官として活動した高須元兼の受給文書群は、赤間関代官が関料徴収、関船管理、町人支配、日明貿易管理を管掌したこと、および毛利氏の公私にわたる唐物(硝石、唐糸等)の需要に対応したことを具体的に示すもので、交通史、流通・貿易史、都市史研究等に重要である。 以上のように、萩藩士高洲家に伝来した日明貿易船旗および高洲家文書は、毛利氏領国下の赤間関代官の都市・交通支配、貿易管理等のありかたを知るうえで重要な資料であるので、一括して指定することとした。