国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
木造菩薩坐像
ふりがな
:
もくぞうぼさつざぞう
解説表示▶
員数
:
1躯
種別
:
彫刻
国
:
時代
:
奈良
年代
:
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
品質・形状
:
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
3574
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2010.06.29(平成22.06.29)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
高知県
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
養花院
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
桜材(か)を代用材とする檀像として造られたとみられる菩薩像。その作風および形式は唐から請来された檀像である山口・神福寺十一面観音像に通じる。天衣遊離部まで共木で刻み出すなど巧緻な彫刻技術をみせ、8世紀木彫像の名品として注目される。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
桜材(か)を代用材とする檀像として造られたとみられる菩薩像。その作風および形式は唐から請来された檀像である山口・神福寺十一面観音像に通じる。天衣遊離部まで共木で刻み出すなど巧緻な彫刻技術をみせ、8世紀木彫像の名品として注目される。
詳細解説▶
詳細解説
螺髻を結い、左足を垂下させて坐る姿の菩薩像で、縦一尺あまりの桜かとみられる材より本躰のすべておよび台座蓮肉が掘り出される。天衣遊離部も本躰と共木で彫出し、現状後補となる冠繪【かんぞ】遊離部・垂下部や右手先等も本来は同様だったろう。胸飾や臂釧、腕釧、髻正面の飾りには細かく文様が刻出される。その巧緻な彫技に加えて坐高二〇センチメートルという大きさは本像が十一面観音関係経典に説く、白檀を用いて一搩【ちゃく】手半あるいは一尺三寸の大きさで瓔珞荘厳まで共木で刻出せよという十一面観音の造像規定に準じて造られたいわゆる檀像彫刻であることを示している。現状は肉身部、衣部とも金泥彩とするが、当初は素地仕上げであった可能性が高い。 本像とほぼ同規格になり、作風および形式にも共通性が認められる作例として、盛唐後期に製作された請来檀像とみられる山口・神福寺十一面観音像(重要文化財)が挙げられる。すなわち同像とは髪に毛筋を刻まず正面中央で振り分け、もみあげを長く表す点、冠繒の正面肩下がりでS字翻転して垂下する流れ、裙折返の下端を水平に表し、ベルトで結んだその上端が波打つ形、背面天衣に二本の水平な衣文を表すことなどが共通し、胴長の体型も坐像・立像の別があるが通じるといえる。ただし神福寺像と比較すると、表面を後補の仕上げが覆っていることを考慮しても彫り口の細かさや強靭さにおいてなお及ばず、躰をめぐる瓔珞を共木で彫り表さないこと等も併せ考えて、本像は日本において請来檀像に学んで造られた作例とみるべきであろう。 また本像は神福寺像と作風・形式において密接な関連を有する奈良・唐招提寺木彫群(重要文化財)との間にも、胸飾後部につく帯の網代【あじろ】文が十一面観音像や伝衆宝王菩薩像の腰ベルトに用いられていること、胸飾や臂・腕釧の紐、連珠の意匠が伝衆宝王菩薩像の天冠台や臂釧に用いられていることなどの共通点が指摘できる。唐招提寺木彫群は鑑真来朝に伴いもたらされた唐代の様風を濃厚に示す像群であり、本像についても製作年代は鑑真来朝よりさほど隔たらぬ時期が想定される。 その尊名は、十一面経典に説く造像作法に準じた造法からすれば観音である可能性がまず考えられ、本像と同じく左脚を垂下して坐る奈良時代の観音像として滋賀・石山寺本尊像(重要文化財、再興像が現存)や奈良・龍蓋寺像(重要文化財、現状は坐り方を改変)の存在が想起される。ただし虚空蔵菩薩や、三尊像の脇侍である可能性もなしとはせず、今にわかにこれを決し難い。 本像は唐招提寺系の作風ならびに形式を示す奈良時代檀像の優品であり、さらに台座にかかる天衣の変化に富んだ構成が京都・宝菩提院菩薩像(国宝)に継承されるという点で、奈良時代後期から平安時代早期への木彫像の表現の展開を考えるうえでも見逃すことのできない一作といえる。