国指定文化財等
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・・・国宝、重要文化財
国宝・重要文化財(美術工芸品)
主情報
名称
:
絹本著色兜率天曼荼羅図
ふりがな
:
けんぽんちゃくしょくとそつてんまんだらず
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員数
:
1幅
種別
:
絵画
国
:
日本
時代
:
鎌倉時代
年代
:
14世紀
西暦
:
作者
:
寸法・重量
:
縦45.0㎝ 横27.0㎝
品質・形状
:
絹本著色 掛幅装 画絹一副一鋪
ト書
:
画賛・奥書・銘文等
:
伝来・その他参考となるべき事項
:
指定番号(登録番号)
:
2087
枝番
:
国宝・重文区分
:
重要文化財
重文指定年月日
:
2017.09.15(平成29.09.15)
国宝指定年月日
:
追加年月日
:
所在都道府県
:
岐阜県
所在地
:
保管施設の名称
:
所有者名
:
宗教法人誓願寺
管理団体・管理責任者名
:
解説文:
詳細解説
兜率天とは弥勒の浄土のこと。現存
する絵画作例は多くはないが、本図は
その中にあって浄土を正面からとらえ
た構図をとる古例である。小品ながら、
細部まで緻密かつ堅実な描写を示し、
赤系・緑系の着彩を中心に、各所に銀
泥を多用する点に特徴がある。
関連情報
(情報の有無)
附指定
なし
一つ書
なし
添付ファイル
なし
解説文
兜率天とは弥勒の浄土のこと。現存 する絵画作例は多くはないが、本図は その中にあって浄土を正面からとらえ た構図をとる古例である。小品ながら、 細部まで緻密かつ堅実な描写を示し、 赤系・緑系の着彩を中心に、各所に銀 泥を多用する点に特徴がある。
詳細解説▶
詳細解説
兜率天曼荼羅図は『仏説観弥勒菩薩上生兜率天経』(以下『弥勒上生経』という。)に説かれる弥勒菩薩の浄土(兜率天宮)の様子を描くもので、中世に遡る遺例は希少で、その図様も定型がなく多様な展開を示す。 現存作例は鎌倉時代以降の制作で、既指定には京都・興聖寺本(鎌倉前期)、大阪・延命寺本(鎌倉後期)がある。いずれも比較的大型で、広大な苑池を伴う各院の中に主殿や廻廊を配した天宮の様子を斜め俯瞰構図で描く。対して、これらに続く時期の制作になる諸作例は阿弥陀浄土図のように兜率天を正面向き左右対称に捉えて描くものが多い。岐阜・誓願寺本もその一例で、画面中央の弥勒菩薩を中心に、周囲に諸菩薩、天人、天女を配し、背景には宝樹と宝池を隔てて宮殿が描かれ、虚空には兜率四十九院を表す七つに分かれた涌雲が描かれる。手前には香炉台の周囲で天人・天女が礼拝・供養し、さらに三つに分かれた舞台で天女による歌舞音曲が催され、宝池でも竜頭鷁首の舟の中で幼い童子らが楽器を奏でる。これらの描写は小画面ながらも『弥勒上生経』の記載に忠実だが、弥勒菩薩の描写は『弥勒上生経』の記載と異なり、密教儀軌の『慈氏念誦法』に依る。彩色は赤系・緑系・群青系の色彩が映え、截金や金泥線も堅実で、画相部には微妙な朱暈が、着衣には段暈や彩色文様が施され、菩薩の頭光、州浜、虚空などの銀泥多用が特徴である。制作は一四世紀、鎌倉末期から南北朝時代への移行期と考えられる。 本図は小画面ながら、遺品の少ない兜率天曼荼羅図のなかでは保存状態の良好な一幅として貴重であり、我が国中世の弥勒信仰の展開を検討するうえでも参照すべき作例といえる。